「キラル化学」、パスツールが始まり 生命分子の謎、19世紀半ばから―そあいさん「由緒正しいテーマ」・ノーベル賞
ノーベル化学賞に決まった東京理科大の※合憲三(※石ヘンに夾)名誉教授(76)は、生物を構成するアミノ酸や糖などがなぜ一方の「鏡像異性体」だけなのかという謎の解明に取り組んできた。授賞理由となった「不斉自己触媒反応の発見」もその一環で、この分野は「キラル化学」と呼ばれる。受賞が決まった7日の記者会見で、そあいさんはフランスの化学者で、細菌学者ルイ・パスツールが19世紀半ばに行った実験が始まりだと語った。
パリのパスツール研究所を訪れた際は、パスツールが研究に使った可能性がある水晶のサンプルが小箱に入っているのを見て、「個人的にひっそりと感動した」という。
右手と左手のように、鏡に映すと同じに見えるが、重ね合わせることができない性質を「キラリティー」と呼ぶ。19世紀前半に、水晶に光を通すと、光の波の振動面が右回りと左回りの場合があることが分かり、その原因は水晶の結晶構造の違いにあるとみられた。
この「旋光性」の違いは、ショ糖やワインの中に析出する酒石などにもある。パスツールは1848年、酒石酸アンモニウムナトリウムの溶液で旋光性を測定する実験を行い、その違いが分子自体のキラリティーにあることを発見した。その後、「なぜ生物は片方の鏡像異性体の分子だけを作るのか」という研究テーマに取り組み、太陽光の向きや磁場の影響などを調べたが、解明できなかったという。
そあいさんもこの「由緒正しいテーマ」に取り組み、片方の鏡像異性体分子だけが自身を触媒として圧倒的に増え続ける不斉自己触媒反応があり得ることを示した。自己増殖は生物の特徴であり、「長く続くために非常に都合の良いシステムになる」という。
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