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Thursday, October 29, 2026

[ITmedia News] ギターの「形」は誰のもの? ヤマハにも警告、Fenderが“ストラト著作権”で仕掛けた知財攻勢

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著者 山崎潤一郎 山崎潤一郎

[ITmedia]

 エレキギターのボディー形状を巡る知的財産権の問題で、楽器業界に激震が走った。ドイツの地方裁判所が「フェンダー・ストラトキャスター」(ストラト)のボディーデザインに対する著作権保護を認める判決を下したのだ。

 Fenderと言えば、米国のギター老舗ブランド。特にストラトは、1954年の発売以来同社を代表するエレキギターとして、ジミ・ヘンドリクス、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックなどレジェンドたちの愛機として、ロックのアイコンと化している。

最新のエリック・クラプトンモデル。クラプトン本人の愛用器と同じ設備・工程で製作されている。85万8000円なり。筆者は1996年製の同モデルを所有

 それと同時に以降のエレキギターの在り方に大きな影響を与えた。特にそのボディーデザインをまねた多くのコピーモデルが他社から販売されている。筆者も46年前に、フェルナンデスという日本メーカーのストラトのコピーモデルを購入し今でも大切に保管している。

 今回、デュッセルドルフ地方裁判所は、中国メーカーであるYiwu Philharmonic Musical Instrumentsが、通販サイトの「AliExpress」を通じてドイツ向けに販売していたコピーモデルについて、ストラトのボディーデザインは、単なる機能的形状を超えて、独自の創造性を持つ「応用美術の著作物」であると認めた。つまり、著作権で保護されるべき形状というわけだ。

 Fenderはこの判決を足掛かりに知財攻勢を強めており、中国メーカーのようなデッドコピー(完全模倣品)だけでなく、有名メーカーが独自設計してきたストラトに似たモデルにまで対象を広げ、日本ではヤマハに警告書を送付したという。おそらく、「PACIFICA」というシリーズを対象としている模様だ。

ヤマハのPACIFICAシリーズ。ストラトと似ていると言えば似ているが、ボディーラインのカーブが細部で違っておりストラトとは異なるギターであることは一目瞭然

 仮にヤマハのPACIFICAが対象となるなら、ストラトのように、ダブルカッタウェイ(ネック付け根の三日月状のえぐれ)形状全てが対象になるのか、という釈然としない思いも湧き上がる。ただ、これは程度問題で、ダブルカッタウェイ形状が全てNGというわけではない。ストラト独自の創作性のある形状・表現をどの程度まで模倣したか、が今後の争点となるようだ。

 ただしドイツの判決が、そのまま日本で効力を持つことはなく、あくまでも、EU向けの輸出製品について現実的なリスクを抱える可能性がある、ということは覚えておきたい。

ブランドの価値の向上に力を入れるFender

 近年Fenderはブランドの価値の向上に力を入れており、今回の法的措置もその一環とみられる。直近では2026年1月13日、子会社である米PreSonusの音楽制作ソフト「Studio One」を「Fender Studio Pro」へ名称変更している。ソフトの機能に大きな変更はなく、これもブランド戦略の一環であろう。

 音質の良さに定評がありプロ筋から高い評価を受けていたソフトだけに、この名称変更は賛否両論で、Studio Oneというブランド名がなくなることに寂しさを訴える声もきこえてきた。ギターブランドとして有名なFenderだが、音楽ソフトの分野でも一定の存在感を高めようとしているのだろう。

Studio Oneの初期バージョンユーザーだった筆者だが、仕事では「Pro Tools」、趣味の制作では「Logic Pro」を使うようになり、バージョンアップを怠っているうちに縁遠くなった

 これは余談だが、1985年から1990年代後半にかけて存在した米Opcode Systemsが開発したMacintosh用の「Studio Vision」(1990年発売)というプロ向けの音楽ソフトがあった。1998年、米GibsonはOpcode Systemsを買収したのだが、その後GibsonはStudio Visionの開発を終了させてしまった。

 世界中のユーザーが怨嗟の声をあげてGibsonを非難したのは言うまでもない。Gibsonはその後、ローランドが保持していた「Cakewalk」というソフトも買収しており、そちらも同様の運命をたどっている(現在はホワイトナイトが現れブランドが復活している)。楽器メーカーが不慣れなソフトウェアビジネスに手を出して、結果的に有力な製品ラインをつぶしてしまう、という構図が立て続けに起きたわけだ。

 今回のFenderによるStudio Oneの改名が同じ運命をたどるとは思えないし、思いたくもない。ただ、楽器メーカーによる音楽ソフト買収の歴史として「いつか来た道」は勘弁してもらいたいものだ。

 ちなみに、Gibsonにより活動の場を失ったOpcodeのエンジニアの一部はその後、米Appleの「Mac OS X」におけるCore Audio/MIDI開発チームに合流したという話もある。

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