[ITmedia News] “AIキャラチャット”に没頭した人の予後、スタンフォード大などが1年の追跡調査 依存強まる傾向に
著者
山下(Seamless)
[ITmedia]
Innovative Tech:
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米スタンフォード大学や米カーネギーメロン大学などに所属する研究者らが発表した論文「Living with AI Companions: Sustained AI Companionship Predicts Lower Well-Being Through Lower Human Interaction」は、いわゆる“AIキャラチャット”への長期的な没頭がユーザーの幸福度にどのような影響を与えるかを調査した研究報告だ。
近年、AIキャラチャットが日常的な話し相手や心の支えとして急速に普及している。AIキャラチャットは、AI技術を用いて、まるで人間のように自然に反応するバーチャルキャラクターとの会話を提供する。単に情報を調べたり作業を任せたりするだけの道具とは違い、ユーザーがAIとの間に感情的なつながりや物語性を見出し、疑似的な人間関係を楽しめるのが特徴だ。そのため1日何時間も利用し、依存する人も出てきている。
参考:週89時間利用も……「AIキャラチャット」依存の10代たち 「やめたい」と思っても抜け出せないワケ
こうしたAIキャラチャットとの関わりがユーザーの長期的な幸福度にどのような影響を与えるのかは、これまで十分に分かっていなかった。この課題に取り組むため、研究チームは人気のAIキャラチャットアプリ「Character.AI」のユーザーを1年間にわたって追跡調査した。
研究チームは、最初の調査で2024年9月から25年8月にかけて1182人のユーザーからデータを集め、その約12カ月後に439人を対象に追跡調査を行った。調査では、AIの利用頻度や依存度を示す関わりの強さ、AIを友人やパートナーとして扱う交友目的での利用、個人的な悩みや感情をAIに吐き出す自己開示の程度という3つの側面から分析。家族や友人、同僚らと対面で過ごす一日あたりの時間も尋ねている。
その結果、AIとの関係性は一時的なもので終わらず、長期にわたって継続・強化される傾向があることが明らかになった。調査開始の段階でAIと強く関わっていたユーザーは、1年後も引き続きAIに強く依存し、より深い自己開示を行う傾向が高かった。
このようなAIとの持続的で深い関わりが、一貫してユーザーの幸福度の低下を予測していた。研究チームがそのメカニズムを分析したところ、AIとの関わりが強くなるほど、現実の人間と対面で交流する時間が減少している傾向が見られた。
つまり、AIに時間や関心を注ぎ込むことで、家族や友人といった現実の人たちと過ごす時間が奪われる「ソーシャル・ディスプレイスメント」が起きており、この現実世界での人間関係の希薄化が、結果として幸福度を下げる要因だと示唆された。
AIとの関係を10種類に分類し、1年の追跡でどう順位が変動したかの図
これまでAIキャラチャットは、孤独感を和らげ心の支えになるとする意見がある一方で、逆に現実の孤立を深めるとする意見もあり、評価が分かれていた。今回の長期調査は、AIへの没頭が現実の人間関係を置き換えてしまうプロセスこそが問題であることが示唆された。
研究チームは、この現象が最初から会話を求めてAIキャラチャットをする人だけの話ではないと述べている。ChatGPTのような汎用チャットbotでも最初は調べ物や仕事の道具として使っていたものが、相談相手になっていくこともありうるからだ。
Source and Image Credits: Zhang, Yutong, et al. “Living with AI Companions: Sustained AI Companionship Predicts Lower Well-Being Through Lower Human Interaction.” arXiv preprint arXiv:2609.07243 (2026).
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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
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2014年から幅広い分野の研究論文をピックアップして解説しているメディア「Seamless」(シームレス)を主宰している。
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