【お金の教室】キオクシア株価「一時61倍」の衝撃 日本株インデックス4指数の違いを比較する
半導体メーカーのキオクシアホールディングスは、2024年12月の上場から一時、株価が60倍を超える水準まで上昇し、時価総額でトヨタ自動車を抜いて国内首位となる場面がありました。個別株を持っていなくても、日本株インデックス投資をしていた人はこの成長の恩恵を受けています。
今回は、TOPIX・日経平均・読売333・JPX日経400という4つの日本株インデックスについて、キオクシアの組み入れ方の違いを手がかりに、それぞれの設計思想とパフォーマンスを比較します。
なぜ今、日本株インデックスなのか
日本株への注目が高まっています。昨年から日本株が海外市場と比べても大きく上昇していることに加え、キオクシアのような大型IPO(新規株式公開)銘柄も相次いで登場しています。日本株に投資をしたいという人は、国内・海外を問わず増えているのが現状です。ただし、日本株インデックスは1種類ではありません。「日本株を買う」といっても、どの指数を選ぶかによって中身は大きく変わってきます。
日本株インデックスは、大きく2つの考え方に分かれます。1つは市場全体をまるごと反映する指数で、TOPIX・日経平均・読売333が該当します。もう1つは、一定のルールで選ばれた「良い会社」に投資する指数で、JPX日経400がこちらに当たります。まずは「市場全体を持つ」のか「良い会社を選ぶ」のかで整理しておくと、以降の違いが理解しやすくなります。
TOPIXは、東京証券取引所プライム市場に上場する約1,600銘柄すべてに投資する指数です。時価総額加重(規模の大きい会社ほど構成比率が高くなる方式)を採用しており、市場全体をできるだけ忠実に反映します。日本株全体を持ちたいのであれば、まず基準となる指数と言えるでしょう。
日経平均株価は、日本を代表する225社に投資する指数です。225社の株価の平均で算出される株価平均型のため、株価水準の高い「値がさ株」の影響を受けやすいという特徴があります(構成比率の上限は1銘柄あたり最大10%)。値がさ株の代表例として、ファーストリテイリングやソフトバンクグループなどが挙げられます。歴史が長く知名度が高いため、ニュースで日本株の動向を伝える際によく使われますが、値がさ株に値動きが引っ張られやすい癖があることは知っておくとよいでしょう。
読売333は、比較的新しい指数です。333銘柄を原則として同じ比率(約0.3%)で保有する等ウェイト方式を採用しており、日経平均が抱える値がさ株偏重の課題に着目して設計されています。年3回の定期リバランス(比率を元に戻す調整)も特徴で、規模の大小に関わらず全銘柄を平等に持つという新しい発想の指数です。
JPX日経400は、ROE(自己資本利益率)などの指標を重視し、資本効率の高い企業を選抜する指数です。市場全体ではなく、一定の基準を満たした「優良企業」約400社に絞って投資するという考え方に基づいています。
4つの指数を整理すると、TOPIX・日経平均・読売333は市場全体型、JPX日経400は良い会社を選ぶ型に分類されます。どれが優れている・劣っているという話ではなく、単純に設計思想が異なるだけだという点を押さえておきましょう。
キオクシアで比較すると違いが見える
キオクシアは2024年12月に上場し、公開価格は1,455円でした。この記事のもとになった動画の収録時点(2026年6月29日時点)では、株価は一時61倍を超える水準まで上昇し、時価総額もトヨタ自動車を抜いて国内首位となる場面がありました(その後の株価水準は変動しており、記事執筆時点の水準とは異なります)。この急成長を、4つの指数がどのように取り込んでいったのかを見ていきます。
同じキオクシアであっても、指数ごとに組み入れ方はまったく異なります。TOPIXは上場後比較的早く採用しましたが、浮動株調整(発行済み株式のうち市場で取引可能な部分だけを評価する仕組み)により比率は0.4%と小さめです。JPX日経400は、良い会社を選ぶ基準として過去3年の実績を求めるため、上場から日が浅いキオクシアはまだ採用されていません。読売333は指数開始時点(2025年3月)から採用し、等ウェイトの原則に基づき0.5%程度を保有しています。日経平均への採用は2026年4月と最も遅く、しかし組み入れ比率は2.3%と4指数の中で最も高くなっています。同じ会社でも、指数の設計思想によって取り込み方がこれほど違うということが分かります。
「後から採用」でも意味があるのか
「もう61倍になっているのに、今さら指数に組み入れられても意味があるのか」という疑問を持つ人もいるでしょう。値上がりしてから組み入れるのでは遅いのではないか、という指摘です。しかし、これはインデックス投資の本質を見誤った見方だと考えられます。
市場では新しい成長企業が常に生まれる一方、かつての主力企業が衰退していくことも避けられません。インデックスは、この銘柄の入れ替わりを自動的に行なう仕組みです。IPO直後に大きく上昇する銘柄ばかりではなく、企業は継続的に成長を続けていくケースも多いため、値上がり後に組み入れられたとしても、その後の成長を捉えられる可能性は十分にあります。
この「自動で銘柄が入れ替わる」という点こそが、インデックス投資の最大の価値だといえるでしょう。
読売333は日本株を変えるか
読売333は、日経平均が抱える値がさ株偏重という課題に着目して設計された、比較的新しい指数です。株式の取引額と時価総額の大きい順に333社を選び、原則として同じ比率で投資するため、超大型株でなくても指数のパフォーマンスに影響を与えられるという特徴があります。また、年3回のリバランスにより、値上がりした銘柄は自動的に利益確定され、値下がりした銘柄は買い増しされる仕組みも備えています。
一方で、リバランスの発生により売買回転率が高くなりやすく、それに伴う売買コストが発生する点、指数としての歴史がまだ浅い点には注意が必要です。期待はできるものの、投資信託の運用報告書などで実際の売買コストを確認しながら見極めていく必要があるでしょう。
パフォーマンス比較
過去5年(2021年6月末を100として指数化、読売333を除く3指数で比較)のパフォーマンスを見ると、TOPIXは+129%、日経平均は+163%、JPX日経400は+130%となりました。
リターン(年率)とリスク(年率の値動きの幅)を見ると、TOPIXはリターン18.0%・リスク19.4%・シャープレシオ0.93、日経平均はリターン21.4%・リスク22.7%・シャープレシオ0.94、JPX日経400はリターン18.1%・リスク19.5%・シャープレシオ0.93という結果です。日経平均は高リターンですが値動きも大きく、TOPIXとJPX日経400はほぼ同じ推移をたどっていることが分かります。
過去1年(2025年6月末を100として指数化、読売333を含む4指数で比較)では、TOPIXが+43%、日経平均が+74%、読売333が+45%、JPX日経400が+42%という結果でした。
リターン・リスクを見ると、TOPIXはリターン42.8%・リスク19.8%・シャープレシオ2.16、日経平均はリターン74.6%・リスク26.7%・シャープレシオ2.80、読売333はリターン45.3%・リスク17.7%・シャープレシオ2.56、JPX日経400はリターン42.6%・リスク20.0%・シャープレシオ2.13です。日経平均のリターンが突出して大きく、TOPIX・読売333・JPX日経400はいずれも近い水準にとどまっています。
過去1年・5年の比較から分かるのは、TOPIXとJPX日経400はいずれの期間でもほぼ同じ値動きをしているという点です。良い会社を選ぶという考え方のJPX日経400ですが、その効果は現時点で明確には見えていません。読売333も過去1年ではTOPIX・JPX日経400とほぼ同様のリターン・リスクとなっており、等ウェイト方式の効果が今後どう表れるかは注視が必要です。値動きに明確な差が出ているのはTOPIXと日経平均であり、他の2指数はTOPIXとほぼ同じ動きになっています。
NISAで買えるファンド
NISAで購入できる代表的なファンドを、純資産総額100億円以上・信託報酬(保有中にかかる手数料)が低いものという基準で見ていきます(読売333は純資産総額が基準に届いていないため参考として掲載)。
TOPIX連動では「SBI・iシェアーズ・TOPIXインデックスF」が信託報酬0.103%と最も低く、純資産総額では「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」が7,331億円と抜けています。日経平均連動は「ニッセイ日経平均インデックスF」「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」がいずれも信託報酬0.130%で、純資産総額も十分な規模です。
読売333連動は「SBI読売333インデックスF」が信託報酬0.120%と低めですが、純資産総額はいずれも100億円未満にとどまっており、様子見が必要な段階といえます。JPX日経400連動は「ニッセイJPX日経400インデックスF」「iFree JPX日経400インデックス」がいずれも信託報酬0.195%で、TOPIXや日経平均に比べるとやや割高な水準です。
インデックス投資は伸びる会社を自動で取り込んでくれる
日本株インデックスをどう選ぶか、今回の内容を整理すると次のとおりです。
- 日本株全体に投資するのであれば、基本はTOPIXでよいでしょう。
- 日経平均には値がさ株の影響を受けやすいという特徴がありますが、それ自体は一概に悪いことではなく、選択肢の一つとして考えられます。
- JPX日経400は、過去1年・5年ともTOPIXとほぼ同じ値動きであり、現時点ではTOPIXで代用可能と考えられます。
- 読売333は、TOPIXや日経平均と差別化できるかどうか、今後の値動きに注目したいところです。
「次のキオクシア」を自分で探し続けなくても、伸びる会社を自動で取り込んでくれるのがインデックス投資の強みです。日本株全体を持ちたいのであれば、まずはTOPIXを基本に考えるとよいでしょう。
塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル
近著「私が投資したNISA・iDeCoのお金、このままで大丈夫?」
出所:日本経済新聞、JPX、eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX・日経平均・読売333)月報、iFree JPX日経400インデックス、投信総合検索ライブラリー(いずれも2026年6月末〜7月上旬時点のデータを基に作成)。
本記事中の株価・時価総額・組み入れ比率等の数値は、動画収録時点(2026年6月29日または30日時点)のものです。キオクシアの株価はその後変動しており、記事をご覧になっている時点の実際の水準とは異なる場合があります。
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