VIVANT騒動がサンリオにも飛び火、中国の「新型軍国主義」批判と連動する危うさには冷静に対応せよ | 政治・経済・投資 | 東洋経済オンライン

本記事は2026/11/04 17:30まで無料会員登録でご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。
INDEX
【ポイント】
・中国で高まる『VIVANT』への批判、サンリオは謝罪へ
・中国側はこのフィクションが招きかねない危うさを指摘する
・そうであれば、抗日ドラマを量産する自国にも厳しい目を
TBS系で放映中のスパイサスペンスドラマ『VIVANT』は、シーズン2の終盤にして世界的な注目を集めるに至った。残念ながら、作り手側の意図せざるかたちで。
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最初に火をつけたのは10月24日に公開された、国営の中国中央テレビ(CCTV)によるショート動画だった。ドラマの中で敵役である中国側工作員が日本の情報機関員に残酷な拷問を行うシーンなどを紹介し、エンターテインメント作品を通じて視聴者の無意識の中に「中国脅威論」や対中敵視感情という「毒」を注ぎ込む世論工作であると批判した。
これに追随したのが『人民日報』傘下のタブロイド紙で愛国主義的な論調で知られる『環球時報』だ。25日を皮切りに『VIVANT』批判記事を連打しているが、筆者が前回本欄で書いたコラムも番組批判の文脈で使われている。
10月29日には、このドラマとのコラボグッズを展開していたサンリオがコラボ中止を発表し、謝罪に追い込まれた。『環球時報』は前日に本件に関するサンリオ批判の記事を掲載しており、これを受けた措置とみられる。まずサンリオの中国法人がSNSの微博(ウェイボー)で中止を表明し、日本の公式サイトにも同様の告知が掲載された。
サンリオの発表の数時間後には英フィナンシャル・タイムズが「ハローキティが日中間の対立に巻き込まれる」という見出しで詳報した。同じ29日午後、北京では中国外交部の定例記者会見でロイター通信の記者がサンリオの一件について質問した。郭嘉昆報道官は『VIVANT』について「このドラマは、日本国内に文化コンテンツを通じて中国をおとしめ、中傷し、反中感情をあおろうとする勢力が存在することを改めて露呈しており、国際社会および日本国内の有識者たちは警戒すべきだ」とコメントした。
一連の動きは欧米、アジアの幅広いメディアが報道しており、『VIVANT』というドラマは世界に知られるようになった。その直前にフランスのサッカー選手エムバペが毛沢東を「独裁者」と呼んだことを問題視され、複数の中国企業から契約を解除されたことも影響していただろう。結果として、『環球時報』はハローキティという高い認知度を持つキャラクターを入り口にして『VIVANT』問題への注目を集めることに成功した。
下敷きにある「新型軍国主義」論
ドラマは11月8日に最終回を迎えるだけに騒動も幕引きに向かうかと思いきや、11月1日には中国国防部が参戦。「歴史の黒白を反転させようとしているのは誰か」というショート動画を公開した。なお着地点が見えない本件からくむべき教訓は少なくない。今回の騒動を考えるときには、中国が昨年来、対日外交のツールとして組み立ててきた「新型軍国主義」論を念頭に置く必要がある。
この言葉は、昨年11月の高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁から間もなく、中国共産党系の『光明日報』に登場した。同年12月には外交部報道官も口にし、今年1月には『人民日報』が取り上げた。同じ時期に商務部(経済産業省に相当)がデュアルユース(軍民両用)品目の対日規制を打ち出し、言葉による批判は日本の防衛力整備への具体的な圧力へと転じていった。
理論化の到達点といえるのが、党の理論誌『求是』が今年6月に掲載した「日本の『新型軍国主義』の現実的脅威を認識せよ」という論文だ。この論文には注目すべき点が2つある。1つは、「新型軍国主義」の推進者を「右翼政治家・安保官僚・軍需資本」と規定し、一般の日本国民と区別していることだ。これは戦後の日中関係を支えた「二分論」、つまり軍国主義者(戦後は一部の保守政治家)と一般日本国民を分けたうえで後者との友好を唱える枠組みの継承である。
民間の経済活動は原則として国家間の関係とは切り離す。ただし何かあれば個別企業が容赦なく狙い撃ちされる。今回、サンリオはその境界線上で揺さぶられたといえる。
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にしむら ごうたGota Nishimura
1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。2024年10月に執行役員編集局長、2026年10月に論説委員長に就任。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。名古屋大学経済学修士。
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