[ITmedia ビジネスオンライン] GMO謝罪会見、なぜここまで炎上?【危機管理のプロが徹底解説】
無数のフラッシュが激しくたかれる中、壇上に立った“カリスマ経営者”の口からこぼれ落ちたのは、被害者への具体的な説明ではなく「命の砂時計」という自身の死生観と、AIの脅威を説く長大な理念でした──。
11月2日、不正アクセス被害を受けて開かれたGMOインターネットグループの緊急記者会見。3時間を超える長丁場の中、会場の空気はみるみる張り詰めていきました。スライドの不手際に対し社員を叱責し、隣の役員には「上着のボタンをしめてください」と促すトップの振る舞い。顧客が最も知りたい「なぜ被害を防げなかったのか」「補償はどうなるのか」という事実をよそに、AIの脅威や経営理念が熱を帯びて語られていく。
なぜ、被害者が最も知りたかった「原因と補償」の前に、経営者の独演会が延々と繰り広げられてしまったのか。周囲の誰も「その発言は今、止めるべきです」と進言できなかったのか。単なる炎上劇では片付けられない、企業が直面する「危機管理広報と組織防衛の死角」を、危機管理広報の専門家が解き明かします。
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「危機管理広報と組織防衛の死角」を、専門家が解き明かす(以下、ITmedia ビジネスオンライン編集部撮影)
「命の砂時計」発言や経営理論の熱弁 GMO会見が映した危機の構造
同社の記者会見では、熊谷正寿代表が顧客に謝罪し、グループ内のセキュリティ専門会社から以前に問題を指摘されていながら、それを十分に生かせなかったことを認めました。自身のSNS投稿についても、被害者への配慮が足りなかったとして頭を下げています。
一方で、会見中に何度も出てきた「命の砂時計」という言葉がXで話題になり、経営理念やAIの脅威について長く語ったことなどに批判が集まりました。会見中の社員への注意の仕方や会見運営の不手際を指摘する報道もあり、関心は会見の中身にとどまらず、経営者の振る舞いや企業風土にまで広がっています。
しかし筆者は「あの発言は失敗だった」「こうすればうまくいった」と採点することに、あまり意味を感じていません。渦中にいない人間が、落ち着いた場所から問題点を挙げるのは簡単です。当事者が置かれている状況と、外から見える景色は全く違います。
大事なのは、誰かを批判して終わることではなく、この事例から「自社でも起こり得ること」を見つけ、次の危機に備えることです。そう考えると、今回の会見には見逃せない論点がいくつもありました。
電源なし、動線混乱……会見は事前準備が重要
今回、特に気になったのは会見の運営そのものです。
取材に入った報道関係者から、会場の誘導や受付と現場の連携不足、3時間以上の会見にもかかわらず記者席の電源確保の不備、ムービー用雛壇設置の不備など基本的な部分が十分に整っていないと感じた、という話を多く聞きました。
筆者が会場の様子を全て確認したわけではないので、一つ一つの不手際について断定するつもりはありません。ただ、危機管理広報の視点から、こうした運営面が軽く見られがちだという点は、ぜひお伝えしておきたいと思います。
会見を準備する企業は、経営者の発言内容や想定問答に多くの時間をかけます。その一方で、受付、誘導、座席、撮影場所、質問の手順、資料の配り方といったことは「事務作業」として後回しにされることが少なくありません。
しかし、これらも立派な危機管理広報の一部です。
記者は限られた時間のなかで取材し、正確な情報を集め、記事やニュースに仕上げなければなりません。カメラの位置が決まらない、動線が分からない、質問の順番も見えない。そんな状態が続けば、取材に集中する前に余計なストレスがかかってしまいます。
これは「記者の機嫌を取れ」という意味ではありません。メディアが取材に集中できる環境を整えることは、社会に正確な情報を届けるための準備です。
謝罪会見は、企業が一方的に説明する場ではありません。報道機関の向こうにいる顧客や取引先、株主、従業員、そして社会と向き合う場です。入口で余計な摩擦が生まれれば、その分、対話はぎくしゃくします。
もちろん、運営が完璧でも厳しい質問は出ます。重大な問題を起こした企業に厳しく問うのは、報道機関の大切な役割でもあります。だからこそ、企業の側で取り除けるストレスは、前もって取り除いておくのが望ましいと考えます。
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