[ITmedia ビジネスオンライン] 「PC市場の成長ストップ」で苦戦のインテル 「半導体の崖」突破できるか、社長が語る変革への道筋
「インテル入ってる」――このキャッチコピーとともに、PC向けチップで一時代を築いた米Intel。かつて“半導体の巨人”といわれた同社は、危機にひんしていた。自前主義が重荷になり、台頭する他のCPUメーカーとの戦いに疲弊し、大量のリストラや赤字決算が続いた。
しかし、AIブームを追い風に、復活の兆しが見え始めている。先端半導体製造プロセスを用いた量産にこぎ着け、半導体の需要をつかむ準備が整った。期待を受け、右肩下がりだったIntelの株価は、2025年6月から2026年6月にかけて約6倍に上昇した。
しかし、AIの進化に見合う半導体を作り続けるのは簡単ではない。工程は複雑になり、工場で使う電力と水の量も膨らむ一方だ。そこでIntelは、日立製作所と組んで次世代の半導体工場づくりに乗り出した。新たな取り組みについて、Intel日本法人のインテルと日立製作所が語った。
米カリフォルニア州サンタクララにあるIntelの本社(写真:ゲッティイメージズ)
本記事は、日立製作所が主催したイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」(2026年9月3~4日開催)の講演セッションから「フィジカルAIで切り拓く、インテルと日立が描く次世代ファブの未来」を取材したもの。
「半世紀たつと技術が古くなる」 Intel最大の経営課題は「変革」
「半世紀たつと、これまで誇っていた製造技術がやや古くなったり、主戦場としてきたPC市場の成長が止まったりする。今、われわれの最大の経営課題はトランスフォーメーション(変革)だ」――インテルの大野誠社長は、Intelが置かれている状況についてこう述べる。
Intelは、変革を着実に進めている。2025年にリップブー・タン氏がCEOに就任して以降、経営陣を刷新。約450人いたVP(副社長級)を約200人に減らした。
技術面でも進歩をみせている。半導体の回路の細かさを示す世代(プロセス技術の進化の度合い)で、現在の最先端とされる「2ナノ」(1ナノは10億分の1メートル)級の加工技術「Intel 18A」を開発。同技術を採用したCPUを、2025年末から量産している。
チップの回路を細かくするほど、性能と電力効率が高まる。どちらもAI処理に求められる要素であり、大野社長は「事業転換期にありながら、未曽有のAI急成長期の流れに乗って投資を拡大していく」と語る。
AIの進化は「ムーアの法則」の5倍速? 目の前に「半導体の崖」
Intelが投資を進める背景には、半導体の需要が急増している状況がある。2025年に開催されたある学会で、大野社長は「2030年に半導体市場は1兆ドルを超える」と話したことがあるという。しかし2026年時点で「実際には今年超えてしまった」と苦笑する。
半導体市場がこれほど急成長しているのは、ひとえにAIブームのたまものだ。AIの進化と高度な処理を支えるため、高性能な半導体チップが求められている。
これまで、AIの進化速度は「ムーアの法則」(半導体の集積度が約2年で2倍になるという経験則)に沿うとされてきた。しかし生成AIの登場により、AIの進化速度は同法則の約5倍に加速したともいわれる。大野社長は、半導体がAIの進化に追い付けなくなる状況を「半導体の崖」と呼び、電力、コスト、人材、地政学リスクがボトルネックになると述べる。
AIの使い方にも変化が現れている。生成AIサービスの多くは、データセンターにある大規模なGPU(画像処理半導体)基盤で計算処理をするクラウドサービス型だ。しかし、高性能なGPUは高価な上、運用コストも大きい。AIエージェントのように高度かつ多段階の推論処理が必要な用途が増えている中、クラウド側のGPUだけで処理を賄うのは限界がある。
そこで、PCや産業機械などエッジ側でAI処理の一部を担う方法が登場した。軽微な処理はエッジ側に搭載した半導体チップに、高度な処理はクラウドのGPUに振り分ける仕組みだ。AIでロボットや産業機械を動かすフィジカルAIの登場により、注目を集めている。
Intelも、クラウドとエッジを使い分けるエージェント型AI「Intel SuperClaw」を公開している。社内のメールや資料はエッジ側で処理して機微な情報を外部に出さず、高度な推論はクラウドのAIに任せる。大野氏は、エッジで処理することで利用コストを抑えられると語る。
この「エッジ側での処理」を担う半導体チップが、Intelが得意とするCPUや、AI処理に長けた「NPU」(Neural Processing Unit)などだ。こうした用途がIntel製品の需要を支えるとみられる。
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