[ITmedia News] GMO熊谷代表、涙の謝罪会見でも“熊谷節”さく裂──「31年間、もうけるという言葉は使ったことがない」
著者
林裕也
[ITmedia]
GMOインターネットグループの熊谷正寿代表は11月2日、傘下のGMOインターネットが提供するFX自動売買用VPS「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスに関する説明会で、攻撃者に身代金を支払わない理由などを語った。AIの進化に最初に適応したのは犯罪者だとして、「永久に支払わない」方針を改めて示した。
説明会の第2部で話すGMOインターネットグループの熊谷正寿代表(出典:説明会のライブ配信、以下同)
「一歩たりとも犯罪者にお金を払うことはしない」
説明会は3部構成で、第1部では熊谷氏らが謝罪した上で、GMOインターネットの山下浩史副社長らが被害の経緯を説明した。「熊谷節」が飛び出したのは、熊谷氏が「本件を通じて得た知見についてのご説明」と題して話した第2部だ。
なお、第2部で熊谷氏が語ったのは業界全体の変化についての知見で、のちの第3部の質疑応答では、今回の情報漏えいとAIによるサイバー攻撃の増加は別の問題だと説明している。
熊谷氏は、AIの発展によるサイバー攻撃の変化や、今回の不正アクセスを受けた反省を語った。まずは31年間インターネット産業に関わってきた歩みに触れ、全ての目標は「お客さまの笑顔」で、利益は目的ではなく結果だと言い続けてきたと振り返った。「私は31年間一度たりとも、もうかる、もうけるという言葉を使ったことはありません」と言い切った。認証局事業に参入した23年前からの思いに話が及ぶと、涙ぐみながら「多くの方の笑顔に資する安心で安全なインターネットになってもらいたい」と語った。
インターネット業界の変化のスピードを「日進月歩ならぬ秒進分歩」と表現した
熊谷氏は続けてAIの進化の速さの話に移り、情報漏えいのニュースが毎日流れる原因は「AIの発展」にあると述べた。2022年11月30日に米OpenAIがChatGPTを公開してから、インターネット業界の変化のスピードは二次曲線を経て「垂直」になったと説明し、「日進月歩ならぬ秒進分歩」と表現した。
特にこの半年の変化が激しい理由には、「AIがAIを開発している」ことを挙げた。24時間動き、コマンド1つで複製できるAIと比べ、「もはやスピードの障害になっているのは人間という時代が訪れた」と語った。
このスピードに真っ先に合わせたのは犯罪者だと熊谷氏は指摘し、犯罪者がAIを使って「皆さんの生活を、企業を、社会を脅かしているんです」と訴えた。だからこそ「一歩たりとも犯罪者にお金を払うことはしない」と語気を強め、「彼らの最大の目的はお金です。助長するようなことはしません」と言い切った。
「今のこの社会的な混乱は、まだプロローグでしかない」
犯罪者がAIを使っている例として、熊谷氏は韓国の金融機関を狙ったサイバー攻撃を挙げ、犯人が使ったAIツール「ARTEX」を紹介した。複数のAIを切り替え、あるAIが回答を拒んでも次のAIで攻撃先の弱点を探し続けるツールで、「ちょっと知識があれば高校生でも、下手すると中学生でも」犯罪者になれるという。その上で、「今のこの社会的な混乱は、まだプロローグでしかない」と危機感を示した。
「この産業を多くの方の笑顔のツールにしてから死ぬつもりです」
説明の締めに熊谷氏が挙げたのは、今回の反省だ。業界には10年以上前から、侵入を防ぐことはできないが、いち早く食い止めて回復する「レジリエンス」という考え方があり、自らがレジリエンスに変わるのが遅れていたことが「最大の問題点」だったという。「セキュリティ企業からレジリエンス企業」に変わらなければならないと述べた。
熊谷氏は、犯罪者の攻撃を「以前は拳銃、今は機関銃」と例え、社会がこのスピードに合わせられなければ「インターネットが使えなくなってしまいます」と強調した。記者に向けては「皆さんの武器のペンは、この事実をお書きいただき」と語りかけ、人や企業、国家がこのスピードに合わせられるよう変化を促してほしいと語気を強めた。
自身の失敗の話をすり替えるつもりは「1ミリもありません」と断った上で、63歳の今、人生の半分をインターネットに捧げてきたと語った。「このインターネットを人々の、日本の、世界の宝物として、きれいにしてから死んでいきたいと思います」と心境を明かし、最後は「僕は命かけて、この産業を多くの方の笑顔のツールにしてから死ぬつもりです」と結んだ。
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