The Daily Newsstand · Free, Always
Friday, October 23, 2026

「18歳です」は通用しない? SNSの「AI年齢推定」 は子どもを本当に守れるのか

Translate

EU子ども法案(EU KIDS Act)

16歳未満のSNS利用を禁じたオーストラリアを筆頭に、子どものSNS利用を年齢で制限する動きが世界へ広がっています。EU(欧州連合)の欧州委員会も2026年9月、「EU子ども法案(EU KIDS Act)」を発表しました。EU全域で13歳未満のSNS利用を禁止し、自分のアカウントを作れる最低年齢を15歳とする内容です。

これに対し日本は、一律禁止には慎重です。総務省の有識者会議は2026年6月の報告書案で、SNSが青少年のコミュニケーション手段になっていること、サービスごとにリスクが異なることなどから、一律の年齢制限は「望ましくない」としました。こども家庭庁の有識者会議も7月の中間報告書で、年齢制限の是非は議論を続けるとしたうえで、まずはSNS事業者に年齢確認を義務付けるよう提言しています。

禁止にするにしても、年齢に応じた保護をかけるにしても、前提になるのは「利用者の本当の年齢」がわかることです。しかし現在、XやInstagramなど主要なSNSでは、アカウント作成時の年齢確認は利用者が自分で入力する生年月日に任されています。「18歳です」と入力すれば、それが通ってしまうのが実情です。

こうした自己申告の弱点を補うため、海外のSNSでは、利用者の行動やアカウントの情報から年齢層を推し量る「年齢推定」の導入が進んでいます。

Instagramを運営する米Metaは2025年4月、成人の誕生日で登録されていても、10代の可能性が高いアカウントをAIで見つけ出し、10代向けの保護設定「ティーンアカウント」に切り替えるテストを米国で始めました。同年9月には、英国、カナダ、オーストラリアにも対象を広げています。

日本ではティーンアカウント自体は2025年1月から導入されていますが、AIによる年齢推定を使った自動切り替え機能については、現時点で国内展開は確認されていません。

推定の手がかりには、やりとりしたコンテンツの種類やプロフィールの情報、アカウントを作成した時期などが使われていると報じられています。Metaは、精度を高める取り組みを続けるとしたうえで、誤って10代と判定された場合に備えて、利用者が設定を変更できる手段も用意しています。

10代だと検知された場合はティーンアカウントに設定される(出所:Meta)

では、ティーンアカウントに切り替わると何が変わるのでしょうか。

ティーンアカウントは、13~17歳の利用者を守るための設定で、日本でも25年1月から提供されています。フォローしている相手やすでにつながっている相手からしかメッセージを受け取れない、夜10時から朝7時までは通知が止まる「スリープモード」が適用される、といった保護機能が自動的にオンになります。16歳未満の利用者が保護の度合いを下げるには、保護者の承認が必要です。

2026年5月からは、13歳以上向けの映画のレーティングを参考にしたコンテンツ基準も日本で順次適用されています。強い言葉づかいや危険なスタントなどの投稿は、フォローしている相手がシェアしたものでも表示されません。年齢にふさわしくない投稿を繰り返すアカウントとは、フォローもDMもできなくなります。この制限は双方向で、そうしたアカウントの側からも10代に近づけません。保護者は、さらに厳しい「コンテンツを制限」設定を選ぶこともできます。

つまり、AIによる年齢推定は「入口」の対策で、10代と判定された先には、こうした何重もの保護が用意されているわけです。

一方、Discordは、Instagramとは逆の発想で年齢を判定しています。まず全員を10代として扱い、その中から大人を見分ける方式です。

Discordは2026年3月から、全世界のすべての利用者に10代向けの設定を初期状態で適用し始めました。センシティブな画像はぼかして表示され、ぼかしを外せるのは成人と確認された利用者だけです。年齢制限のあるサーバーやチャンネルにも成人しか入れず、知らない相手からのDMは別の受信箱に振り分けられます。

大人かどうかは、独自の年齢推定モデルで判定します。アカウントの利用期間やデバイス、アクティビティのデータ、コミュニティ全体の傾向などをもとに、利用者が成人かどうかを裏側で判断する仕組みです。推定で判断がつかない場合は、顔写真による年齢推定か、身分証の提出を求められます。

Discordは10代向け設定をデフォルトに設定(出所:Discord)

他にも、子どもに人気のゲーム「Roblox(ロブロックス)」が2026年1月から、日本を含む世界でチャットを使う前に顔による年齢推定を求めています。

Robloxはチャット可能な相手を年齢層によって制限している(出所:Roblox)

ChatGPTも同月から、利用状況をもとに18歳未満かどうかを推定し、未成年向けの保護を自動で適用する「年齢予測」を世界で順次導入しています。

ChatGPTは利用する時間帯や利用パターンなどで年齢を予測(出所:OpenAI)

年齢推定の大きな利点は、多くの利用者が身分証を出さずに済むことです。身分証には、年齢だけでなく氏名や住所、顔写真、番号など、悪用されれば本人になりすませる情報が含まれています。

2026年9月には、カーシェアリングサービス「タイムズカー」が不正アクセスを受け、退会者を含む約660万件のアカウント情報が第三者に取得されました。このうち約160万件では、運転免許証や学生証などの本人確認書類の画像まで漏えいしています。海外でも、Discordが2025年10月、年齢確認のために提出された身分証の画像約7万件が、委託先から流出した可能性があると発表しました。

年齢を確かめるたびに身分証を預けていれば、それだけ漏えいに巻き込まれる可能性も高まります。利用状況から年齢を推定する方法なら、そもそも身分証を渡さずに済むため、こうしたリスクを避けられます。

一方で、課題もあります。一つは誤判定です。オーストラリア政府の委託で行なわれた年齢確認技術の試験「Age Assurance Technology Trial(年齢確認技術試験)」では、年齢推定は全体として高い精度を示し、「実施は可能」と結論づけられました。ただし、判定の境目となる年齢の前後では誤判定が起きやすく、たとえば16歳を境目にした場合、本当は16歳の人の8.5%が「16歳未満」と判定されたと報じられています。

誤って判定された場合、多くのサービスでは顔写真や身分証で年齢を証明すれば元に戻せます。しかし、それでは結局、身分証を出すリスクを負うことになります。

また、年齢推定には限界もあります。18歳になったばかりの高校3年生と17歳の高校生とでは、SNSの使い方に大きな違いはないでしょう。行動データだけで、その境目を正確に見分けるのは難しいはずです。そこで、SNS事業者がそれぞれ年齢を推定するのではなく、スマホの契約時やアプリストアの段階で年齢を確かめる仕組みが必要だという声も挙がっています。

年齢を偽ると、「守る仕組み」も外れてしまう

子どもが年齢を偽る理由の多くは、「制限されない環境で思う存分使いたい」「いいねを集めて人気者になりたい」といったものでしょう。しかし、年齢を偽ることで外れるのは、不便な制限だけではありません。

子どもが成人として登録すると、知らない相手からのメッセージの制限や、刺激の強い投稿の非表示が働きません。保護者の見守り機能も使えなくなります。日本でも2026年8月から、Instagramのペアレンタルコントロールを使っている保護者には、子どもが深刻な悩みに関わる言葉を短期間に繰り返し検索した場合に通知が届く仕組みが提供されています。こうした機能は、子どもが正しい年齢で登録していることが前提です。

Instagramは保護者へアラートを通知する(出所:Meta)

また、年齢を偽っていた子どもは、トラブルに巻き込まれても「ルールを破っていたことがばれる」と考え、保護者に相談しにくくなります。年齢を偽ることのいちばんのリスクは、困ったときに助けを求めにくくなることです。

お子さんには年齢制限は子どもを縛るためではなく、守るためにあるということをしっかり伝え、正しい年齢で登録するよう促しておきましょう。

それでも、子どもは必ず「抜け道」を探すものです。

最近は、Instagramのティーンアカウントで保護者の許可なしにライブ配信ができなくなった子どもが、TikTokで年齢を偽ってアカウントを作るケースも耳にします。TikTokでライブ配信ができるのは18歳以上です。実際の年齢と大きく異なっていることもあるでしょう。親子の話し合いは、こうした抜け道を防ぐことにも繋がります。

日本では、こども家庭庁の有識者会議が年内に最終報告書をまとめる予定で、SNS事業者への年齢確認の義務付けなど、具体的なルールづくりが進んでいます。SNS側の仕組み、国のルール、そして家庭での対話。それぞれが役割を果たし、力を合わせていけば、子どもたちがSNSと上手に付き合える未来がつくれそうです。

View the original on Impress Watch →

KioskNews shows a cleaned-up reading view extracted from the publisher’s page — the original always lives on their site, not ours.