防災インフラを眠らせるな!"平常時は稼ぎ、非常時は守る"社会資本への転換を、防災庁新設でも残る「財源確保」の課題 | 政治・経済・投資 | 東洋経済オンライン

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財源不足と人手不足が防災インフラの維持を悩ませている。そこで注目されるのが、水辺空間を収益化し、日常時は地域経済の活性化、非常時は命を守る「流域治水経営」という発想だ。果たして日本でも可能なのか。先進事例を取り上げ、可能性と課題を探った。
2026年7月、防災庁設置法が公布された。防災庁は、政府全体の防災・災害対応の司令塔として、事前防災、大規模災害対応、被災者支援などを担う新組織である。この夏も地震や局所的な豪雨など大規模な災害が起こる中、対策強化に期待が寄せられている。
だが、司令塔ができれば課題が解決するわけではない。未だに防災インフラの維持管理を支える「ヒト不足」と「カネ不足」は深刻だ。特に「カネ不足」については、支出を抑える施策は進んできたものの、新たな財源を生み出す発想は依然として弱い。
そもそも防災インフラは「守り」に特化した施設として考えられてきた。しかし、本コラムでは発想を転換し、防災インフラで「稼ぐ」仕組みについて考えたい。
着目すべきは、災害が発生した「非常時」ではなく、「平常時」だ。特に焦点を当てるのが、河川敷や遊水地といった治水インフラである。地震対策などの防災インフラと比較し、治水インフラには、水を流し・ため・逃がすために確保された「広大な空間」が多い。災害時には地域を守る一方、平常時には多くの人を呼び込むことで、収益化できる余地が大きいからだ。
現在でも各地の河川敷や遊水地、水辺公園では、災害時には治水機能を担う一方、平常時には花火大会やスポーツイベント、環境学習、農地利用などが行われている。
だが、ここに本質的な課題がある。既存の水辺活用は多くの場合、「水と親しむ」「人を呼ぶ」「にぎわいをつくる」段階にとどまっている。どこでどの事業がどのくらいの収益を生み、そこからどれだけを施設の維持管理に充てられるのか――この「収益化」と「維持管理への還元」の設計が弱いのである。
海外では、水辺空間が維持管理費を自ら稼ぐ
海外には、より進んだモデルがある。代表例がアメリカ・ニューヨークの“Hudson River Park”だ。マンハッタン西側約4マイルにわたる水辺公園で、公共の利益を目的に設立された法人“Hudson River Park Trust”が設計、運営、維持管理を担っている。
この公園では、リース、占用契約、利用許可、スポンサーシップなどを組み合わせ、それらで得た収入を公園の維持管理に充てている。公園内にある企業は3000人以上を雇用し、公園の維持運営収入の大部分を生み出している。27年度予算では、リース、占用許可収入、駐車場・利用料収入、スポンサー収入などを含む年間収入が約4400万ドル(日本円で約70億円)規模に相当する。
これは単なる水辺のにぎわいづくりではない。水辺の商業価値・観光価値・不動産価値を、公共空間の維持管理に還元する「水辺インフラの経営」である。日本の河川・遊水地・調整池でも、同じ発想を地域条件に合わせて導入できれば、インフラ財源を確保できる可能性がある。
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やまぐち たかゆきTakayuki Yamaguchi
東京科学大学(旧:東京工業大学)卒業、同大学院修了。修士(工学)。土木技官として東京都に入庁後、道路、橋梁、下水道管、宅地造成等のインフラエンジニアリング(計画・設計・調達・施工管理)に従事。2014年からは(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に出向し、競技会場の誘致渉外、施設計画・設計、発注調達戦略策定等を担当。日本総合研究所に入社後は、予防保全やメンテナンスサイクルといったインフラ維持管理に関するコンサルティングを提供するとともに、成果連動型民間委託や包括的民間委託といった新しい仕組みの検討も行う。2021年からは未来社会価値研究所にも参画(兼務)し、政策提言等の情報発信も積極的に行っている。著者ホームページはhttps://www.jri.co.jp/staff/detail/yamaguchitakayuki/
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