「命を救う装備」があっても訓練ができない陸上自衛隊の深刻な実態、止血帯の不可解な特注仕様と調達への疑問 | 政治・経済・投資 | 東洋経済オンライン

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2023年6月14日、陸上自衛隊日野基本射撃場(岐阜県岐阜市)で89式小銃の射撃訓練中、自衛官候補生が隊員に向けて発砲し2名が死亡、1名が負傷する事件があった。
この事件では報じられていないが、負傷した1名の隊員は私物として携行していた止血帯(ターニケット)を使って太ももを縛って止血、一命を取り留めた。これは自衛官が止血帯で助かった初めての例となった。該当隊員は意識が高く、個人的に訓練や携行をしていたようだ。
命を救う止血帯が私物
自衛官にとって衛生が自分たちにとって切実な問題という意識が強くなったのは、手前みそだが、2015年に筆者が陸自の個人携行衛生品(ファースト・エイド・キット)の不備を指摘してからだ(「自衛官の『命の値段』は、米軍用犬以下なのか 実践の備えがないため派兵どころではない」)。一部隊員は自主的に救急品を自費で買い、外部の研修を受けるなどの動きが始まった。
この件は、防衛大臣会見で中谷元防衛大臣(当時)や岩田清文陸上幕僚長などの会見でも追及した。
一連の報道が、防衛省の「防衛省・自衛隊の第一線救護における適格な救命に関する検討会」の座長だった佐々木勝・都立広尾病院院長(当時)も影響され、月刊誌に防衛省の衛生体制の批判記事を書いて関係者に衝撃を与えた。
当時陸自のキットは止血帯、包帯各1個であり、旧軍の包帯1個と大差なかった。より充実させたPKO(国連平和維持活動)用も8アイテムでしかなかった。対してアメリカ陸軍の「IFAK II」は通常12アイテムで最大18品目(さらに止血帯ポーチ2個)であった。
当時陸幕衛生部は、これを「アメリカ陸軍に匹敵するレベル」と大臣や幕僚長に説明していた。またその前の君塚栄治陸上幕僚長の時代(2011~13年)には「現在の貧弱なキットでも国内は多く病院があるから問題がない」と説明した。だが現場で即座に止血や措置をしなければ死亡し、病院に送っても意味がない。
また有事には一般部隊用の個人携行衛生品にPKO用と同じアイテムを補充すると説明していた。だがこれはウソだった。個人携行衛生品で使用されるアイテムは輸入品であり、使用期限がある。これを隊員の数だけ民間の業者が備蓄などしていない。
そのような制度も存在しない。事実そのような依頼を受けた企業も存在しなかった。取材に対してこのような虚偽を述べるのは保身のためだろう。しかし、国民をだます犯罪的な行為だ。陸幕衛生には「組織防衛のためなら国民をだましても構わない」という文化が定着しているのだろう。これは文民統制上もたいへん問題だ。
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