1億1500万年前の化石から「恐竜の血液」らしき痕跡が見つかる、博物館の化石にも驚くべき証拠が隠れている可能性
微細構造が赤血球ではないとすれば、化石化する前の骨に定着した真菌やその他の微生物の残骸である可能性があります。しかし、その場合に見られる糸状構造や胞子、バイオフィルムといったものは発見されず、化石を取り囲む堆積物には同様の構造が確認されませんでした。この結果は、微細構造が外部からの汚染によって入り込んだ可能性が非常に低いことを示しています。
また、高性能な液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて微細構造の成分を調べたところ、赤血球中で酸素分子と結合するヘモグロビンの主成分であるヘムBが多量に含まれていることが判明。植物や微生物由来の化合物が含まれていた周囲の堆積物とは、主成分が大きく異なっていました。
さらに研究チームは、化石のどの部分にどの元素が関連しているかを調べるために元素マッピングを実施しました。その結果、赤血球のような微細構造はヘムの構成要素である鉄・炭素・窒素と相関関係にあり、主にリン・カルシウム・フッ素・炭素で構成されている骨とは異なることもわかりました。
グライス氏は、「顕微鏡で見ると血液細胞のように見えるものは興味深いですが、形態だけではその生物学的起源を立証するには不十分です。私たちの研究手法は、顕微鏡観察と構造に関連する化学的証拠を組み合わせたものです。独立した複数の証拠が一致することは、『これは赤血球のように見える』と言うよりもはるかに強力です」と述べています。
今回分析されたアラタサウルス・ムセウナキオナルイの化石は、酸素濃度の低い環境に急速に埋没したために死体の腐敗が遅れたとみられます。その結果、マンガンの鉱物化作用が微細な血液細胞を安定させたり、複製したりするのに役立った可能性があるとのこと。グライス氏は、血液細胞が1億1500万年にわたって変化せず保存されたと考えるよりも、「元の生物構造が周囲の地球化学的環境と相互作用した」と考えるべきだと説明しています。
今後の研究では光学・化学・分子生物学的手法を用いて、別の種類や異なる地質環境の化石についても調査を行い、同様の赤血球らしき細胞化石が見つかるかどうかを検証する必要があります。グライス氏は、「私が特に興奮しているのは、すでに博物館や大学のコレクションに収蔵されている何千もの化石が再調査される可能性があるという点です。数十年前に解剖学的研究のために採取された標本には、当時誰も探そうと思わなかった分子的・鉱物的・同位体的・顕微鏡的な情報が含まれている可能性があるのです」と述べました。
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