中国への高度な半導体製造装置の輸出を認めるとAI分野での優位性が失われると研究機関が警告
アメリカのAI・半導体政策研究機関であるテクノロジー&ステートクラフトセンターが、AIチップの製造に不可欠である高度な半導体露光装置の中国への輸出を認めた場合、今後5年から10年でアメリカの優位性が失われることになるという報告書を公開しています。また、すでに一部の高度な露光装置が「抜け穴」を使って輸出されていることから対策を提言しています。
DUV Immersion Lithography: The Foundation of the US AI Advantage - Center for Technology & Statecraft
https://techstatecraft.org/duv/
競争力のあるAIチップを製造しようと考えたとき、高度な半導体製造装置が必須です。テクノロジー&ステートクラフトセンターの報告書によると、中国は2030年代半ばになっても、こうした装置を大規模に製品化できる可能性は低いとみられているため、アメリカとその同盟国は優位性を保つことができます。
ところが、トランプ政権は「中国による高度なAIチップを製造可能な深紫外線液浸(DUVi)半導体露光装置の輸入」を認める方針を打ち出しています。これまでも、それほど高度ではないDUViは輸出が認められていましたが、同じようなペースで高度なDUViの輸出が行われた場合、今後5年から10年で、中国は十分な半導体製造能力を手に入れ、AIチップの分野でアメリカやその同盟国の持つ優位性が小さくなるか、あるいは消滅することになると、報告書は警告しています。
テクノロジー&ステートクラフトセンターは「単純な政策変更でこうした結果を防ぐことができる」と提言を行っています。
まずは「DUViの中国への輸出を禁止すること」です。左のグラフは中国がDUVi輸入を維持した場合で、アメリカのAIチップ生産量(青)に、赤で示された中国のAIチップ生産量(赤)がぐんぐん迫っていくことが予想されています。一方、右のグラフは中国のDUVi輸入を防いだ場合で、中国のAIチップ生産量はアメリカに届きません。
高性能なチップの製造に欠かせない極紫外線(EUV)露光装置や特に高度なDUViは規制し、一部の高度なDUViについてはライセンス方式として、それほど高度ではないDUVi、乾式DUVはライセンスなしで輸出可能としてきたのがこれまでの基準ですが、テクノロジー&ステートクラフトセンターは乾式DUVを除いて輸出禁止にすべきだと提唱しています。
なお、この「ライセンス方式」については実態としてはほぼ許可されていて、中国は2020年以降、NXT:1980iを中心としてDUViを合計300台規模でそろえたとみられます。
現状の露光装置の数であれば、中国がアメリカを脅かすことはありませんが、同様のペースでNXT:1980iや類似のDUViを揃えて、全面的にAIチップ生産を行った場合、数億基のH100相当品を生産可能だとテクノロジー&ステートクラフトセンターは指摘しています。
テクノロジー&ステートクラフトセンターは、中国によるDUVi入手の抜け穴を塞ぐため、オランダや日本の動きが消極的なのであれば「外国直接製品ルール(FDPR)」を用いて輸出制限をかけたり、輸出管理規則を利用してアメリカの工具が用いられているASMLの工場を停止させたりする対策を挙げています。
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