NTT、神経線維の「痛み」信号をチップ上で再現
NTTは、神経細胞から伸びた神経線維の一部に痛みに相当する熱刺激を与え、そこで生じる電気的な神経信号の発生と伝播を捉える技術を開発した。痛みに関わる末梢神経の応答をチップ上で可視化・定量化し、細胞レベルで解析できる。これにより「痛みの個人差」を把握できるようにする。
開発した末梢神経モデルでは、神経線維だけを選択的に通す「マイクロ流路」を使い、神経線維が伸びる経路を固定。この経路上に、光を熱に変換するナノ材料を用いた発熱素子と、神経の電気信号を測る微小電極を配置した。発熱素子にレーザー光を当てることで、神経線維の約100μmの範囲を選んで加熱でき、1ミリ秒の短時間で熱刺激を与えられる。
ラット由来の感覚神経細胞を使った実験では、痛みを感じるような高温域に達すると神経信号の発生頻度が増加した。流路内の複数の電極で同じ信号を時間差で計測することで、局所的な熱刺激によって発生した神経信号が、神経線維に沿って伝わる様子も確認した。
1ミリ秒の熱刺激を繰り返すと、神経の応答が徐々に小さくなり、刺激から信号が生じるまでの時間も長くなった。一方、発生した信号が神経線維を伝わる速度はほとんど変わらなかった。NTTは、熱を受け取る温度受容体が繰り返し刺激によって反応しにくくなる「脱感作」と整合する結果としている。
ヒトiPS細胞由来の感覚神経にも適用し、熱刺激への応答を確認した。ラット由来の神経と比べると応答が弱く、熱刺激から発火頻度が上昇するまでに時間がかかったほか、短い熱刺激を繰り返した際の追従性も低かった。こうした違いには、今回使用したヒトiPS細胞由来の感覚神経の機能的な成熟度などが反映されているとみている。
今後は、より少数の神経線維や個々の神経細胞について、痛みへの感受性を精密に評価できるよう技術を高度化する。ヒトiPS細胞由来の感覚神経などと組み合わせ、痛みへの感受性や薬剤応答を細胞レベルで定量化し、治療効果の予測や個人に適した治療法の選択につなげることをめざす。研究成果は国際学術誌「Small」に掲載され、11月18日~25日の「NTT R&D FORUM 2026」でも展示する予定。
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