資産運用の提案資料、AIで「10倍」に ブルーモ証券がアドバイザーAI
ブルーモ証券は、資産運用の提案業務を支援するアドバイザー向けAIエージェント「ウェルスアドバイザーAI」を発表した。顧客との面談内容などをもとに、資産配分や銘柄候補、数量、運用シミュレーションなどを含む提案資料の原案を作成する。
AIが顧客に直接投資を提案するサービスではなく、ブルーモ証券のウェルスアドバイザーが利用する業務支援ツールという位置づけ。AIが作成した原案をアドバイザーが検証・修正し、自らの判断として顧客に提案する。最終的な運用方針や契約は顧客自身が決める。
ウェルスアドバイザーAIは、面談内容の整理や論点の抽出、資産配分、銘柄候補と数量、運用シミュレーション、ストレステスト、提案資料の原案作成などを担う。
提案資料の作成には、顧客との面談記録や、アドバイザーが確認した顧客の同社口座情報を利用する。顧客の現状や課題を整理した上で必要な分析を行ない、グラフやチャートなどを含む説明資料を作成できる。
例えば、資産運用の提案では、顧客の資産状況やこれまでのやり取りを整理し、リスク水準やライフプランのシミュレーションなど、提案に必要な論点を提示する。資産配分や銘柄候補などの原案までAIが作成する一方、どのような提案をするかはアドバイザーが判断する。
ブルーモ証券代表取締役CEO 中村 仁氏
資料作成は「約10倍」に
AIを活用する狙いの1つが、ウェルスマネジメントにおけるアドバイザーの業務効率化。顧客ごとに資産状況や面談内容を整理し、運用方針を検討して個別の提案資料を作成するには時間がかかる。一人のアドバイザーが対応できる顧客数には限界があり、従来はこうした手厚いサービスを提供できる対象が、資産規模の大きな顧客に偏りやすかった。
同社によると、大手IFA法人から移籍したアドバイザーでは、AIを活用したことで顧客向け資料の作成数が移籍前の約10倍になった例がある。移籍前は月5件未満だったのに対し、ブルーモ証券では週平均約7件、月換算で約30件を作成したという。
AIが情報収集や分析、資料作成を担うことで、アドバイザーは顧客との対話や、実際に何を提案するかという判断に時間を使えるようになる。
ブルーモ証券ウェルスアドバイザーAI(デモ動画)
ウェルスマネジメントをより広い層へ
ブルーモ証券が狙うのは、AIによって人的なウェルスマネジメントをマス層まで広げることではない。
同社が背景として挙げるのが、一定規模の金融資産を持ちながら、十分な相談機会を得にくい層の存在。野村総合研究所の推計では、純金融資産5,000万円以上の世帯は2013年の415.9万世帯から、2023年には569.2万世帯へと36.9%増加している。
一方で、個別性の高いウェルスマネジメントは人的コストが大きく、資産規模が極めて大きな顧客でなければ手厚い対応を提供しにくいという課題がある。
ブルーモ証券は、AIによって一人のアドバイザーが対応できる範囲を広げることで、リタイア期前後の世代や、一定規模の資産を持ちながら従来は十分な個別対応を受けにくかった層にも、ウェルスマネジメントを提供しやすくする考え。
従来は5~10億以上の富裕層が主要顧客となっていたが、AIアドバイザーの導入により、資産数千万からでもウェルスマネジメントのサービス提供が可能にする。
AIによる「マス向けの投資相談」というよりも、人によるアドバイスの採算性をAIで改善し、これまでより幅広い資産層へサービスを広げる取り組みとなる。
作成された資料の一例
AIだけには任せない
一方、ブルーモ証券は資産運用に関する判断そのものをAIに置き換える考えではない。
ウェルスアドバイザーAIでは、生成AIにすべての計算を任せるのではなく、リスク・リターン計算や運用シミュレーションなど、結果の一貫性が必要な処理については、あらかじめ定義した計算モデルを利用する。
生成AIは大量の顧客情報の整理や分析などを担い、計算の前提やロジックは別途定義することで、出力のばらつきを抑える。
また、AIが作成した提案資料もそのまま顧客に提示せず、アドバイザーが内容を検証・修正する。顧客との対話なども踏まえて最終的な提案を判断するのは人間の役割とする。
今後は、次回の面談までに生じた口座の変化を検知してアドバイザーに知らせる通知機能や、口座データとの自動連携などを予定している。
ブルーモ証券は、AIにアドバイザーを置き換えるのではなく、提案準備をAIで効率化することで、人間が顧客との対話や判断に集中できる体制を構築する。AIによる業務効率化を、ウェルスマネジメントをより広い顧客層へ届けるための手段として活用していく。
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