AIモデル内部でプログラムを実行できる「Qwenputer」が登場、「AIの中にCPUを作る」という異色の試み
AIモデルの内部に32bitのRISC-V CPUを組み込み、外部ツールを使わずに計算やプログラムの実行を可能にした実験的なAIモデル「Qwenputer」が公開されました。Qwenputerは既存のAIモデル「Qwen3.5-4B」をベースに開発されており、ニューラルネットワークの内部でCPUやメモリの機能を再現しています。
Qwenputer: a fully functioning, deterministic RISC-V CPU inside Qwen3.5 - Divyansh Agrawal
https://divagr.com/blog/qwenputer
divagr1925/Qwen3.5-4B-Qwenputer · Hugging Face
https://huggingface.co/divagr1925/Qwen3.5-4B-Qwenputer
divagr18/qwenputer: A computer, compiled into the weights of a language model. An exact CPU inside Qwen3.5-4B, with Gated DeltaNet state as RAM.
https://github.com/divagr18/qwenputer
Qwenputerは、開発者のDivyansh Agrawal氏が2026年10月22日に発表したAIモデルです。AlibabaのQwen3.5-4Bをベースとしており、AIモデルにCPUの機能を追加することで、通常のAIモデルでは間違えやすい複雑な計算を正確に実行できるようにしています。
通常、大規模言語モデル(LLM)は入力された文章に対して次に続く単語や文字を予測する仕組みで回答を生成しています。このため、大きな数字の掛け算など、正確な計算が必要な場面では間違った答えを出すことがあります。これを解決する一般的な方法が、AIにPythonなどの外部ツールを呼び出させ、計算結果を取得させるという仕組みです。
一方、Qwenputerは外部の計算ツールを利用するのではなく、AIモデルそのものにCPUの機能を組み込んでいるのが特徴。CPUにはオープンな命令セットアーキテクチャであるRISC-Vを採用しており、32bitの「RV32IM」に加えて一部の拡張命令などを実装しています。これにより、四則演算だけでなく、C言語やMicroPythonで書かれたプログラムをAIモデルの内部で実行できます。
しかし、CPUを動作させるためには計算途中のデータやプログラムを保存するメモリも必要です。そこでAgrawal氏はQwen3.5に採用されている「Gated DeltaNet」という仕組みに着目しました。
Gated DeltaNetはAIが文章を処理する際に内部状態を保持・更新する仕組みで、設定を工夫することで指定した場所にデータを書き込んだり、保存したデータを正確に読み出したりできます。Agrawal氏はこの仕組みをRAMとして利用し、計算や条件分岐などを実行する回路をニューラルネットワークで再現することで、AIモデルの内部にCPUを構築しました。
以下の図はメモリへのデータの書き込み(a)、読み出し(b)、CPUとしての利用(c)を示したものです。Agrawal氏はCPUの回路を設計し、その動作に必要な数値をコンパイラで計算して、ニューラルネットワークの重みとして直接組み込んでいます。また、ベースとなるQwen3.5-4Bの重みは変更していません。
Qwenputerで計算を行う際には、AIが通常のツール呼び出しに似た形式で命令を生成します。しかし、実際に外部のプログラムが呼び出されるわけではなく、追加されたニューラルネットワークの層が命令を処理し、結果をAIに返します。Agrawal氏によると、CPUはRISC-Vの公式テストを通過しており、約1800万命令を連続実行した際にもエラーは発生しなかったとのことです。
実際に計算能力を比較したところ、大きな整数の掛け算を解くテストでは、通常のQwen3.5-4B(灰色)の正答率が55%だったのに対し、Qwenputer(紫)は97.5%を記録しました。また、大きな整数の割り算では72.5%から97.5%に向上し、複数の掛け算と割り算を組み合わせたテストでは90%から100%に向上しています。
さらに、長い整数を使った四則演算のテスト「NUPA」では、通常のQwen3.5-4Bの正答率が48.6%だったのに対して、Qwenputerは100%を達成しました。加えて、通常のQwen3.5-4BにPythonツールを利用させた場合と比較しても、Qwenputerは5種類すべてのテストで同等以上の正答率を記録しました。
Agrawal氏は、CPUだけでなく、AIモデルの内部にファイルを保存する仕組みも実験的に実装しています。これはGated DeltaNetの内部状態にテキストを記録するもので、最大512ファイル、合計約5万3000トークンを保存できます。会話の終了時に内部状態を保存し、次の会話で読み込むことで、以前の会話で記録した情報を引き継ぐことも可能です。
このファイル保存機能を使った検証では、過去の会話から変更された情報を正しく回答できた割合が90%に達したと報告されています。一方、過去の会話をそのまま入力した場合の正答率は30%でした。
なお、Qwenputerにはいくつかの制約もあります。CPUの機能を追加したことでモデルの容量は18.8GBとなり、通常のQwen3.5-4Bのおよそ2倍に増加しました。また、CPUの命令を実行するたびに複数のトークンを生成する必要があるため、通常のCPUならミリ秒単位で終わる計算に数秒かかる場合があります。動作には専用のドライバーも必要で、一般的なAIモデルと同じ方法で読み込むだけでは利用できません。
QwenputerのモデルとソースコードはHugging FaceやGitHubで公開されており、24GBのメモリを搭載したGPU1基で実行可能とされています。Agrawal氏は今後、AIが自らPythonコードを作成してモデル内部のMicroPythonで実行できる仕組みや、CPUの処理速度の向上に取り組む方針を示しています。
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