【石野純也のモバイル通信SE】「日常に向き合う」 Xperia 10 VIIIと10万円スマホの現在地
10月8日に登場するXperia 10 VIII。ミッドレンジモデルのXperiaだが、昨年からその立ち位置が徐々に変わっている
ソニーは、10月8日にミッドレンジモデルの「Xperia 10 VIII」を発売する。ソニー自身で展開するオープンマーケットモデル(SIMフリーモデル)に加え、ドコモやKDDI、ソフトバンクでの販売も行なう。価格は、ソニーストアのオープン版が99,900円。100円ながら、10万円を下回った格好だ。
ご多分にもれず、Xperia 10 VIIIも前年に発売された「Xperia 10 VII」から値上げされている。Xperia 10 VIIは、オープン版が74,800円だったため、25,000円程度、価格が上がっている。ディスプレイやスピーカーは刷新したものの、チップセットやカメラ構成などのスペックは変わっていない。
理由は複数あるというが、やはり為替やメモリ高騰の影響が大きいようだ。ソニーのイメージングコミュニケーション事業部門 ビジネスマネジメント部 統括部長の湯原真司氏は、「あらゆるコストダウンをして10万円以内に抑えたのが実情」だと語る。では、ソニーは値上げ必至の中、Xperia 10シリーズにどのような付加価値を加えたのか。
ソニーの湯原氏は、価格を説明。コストダウンを図ったというが、それでも価格は10万円に近づいてしまった
Xperiaというと、カメラや映像、音楽などのエンターテイメント機能が充実したスマホというイメージが強いが、前モデルであるXperia 10 VIIの主なユーザー層は、日常的な使い勝手や操作感、安心などを求める層が多かったという。こだわりのハイスペック機を持つというより、情報検索や決済、コミュニケーションなど、日常的な機能を重視している割合が強く出ていた。
湯原氏も、「Xperiaはオーディオビジュアルやクリエーションのイメージが強いかもしれないが、日常の使いやすさにとことん向き合うのが10シリーズの価値だと思っている」と語る。
ハイエンドのXperiaが持つイメージとは裏腹に、Xperia 10 VIIのユーザーは、情報検索や決済、コミュニケーションなどの普段使いを重視しているという
こうしたユーザー層の違いを受け、Xperia 10 VIIIには、新たに「Point & Payメニュー」という新機能を搭載した。これはいわゆるランチャーアプリで、ポイントアプリやコード決済アプリをまとめられるのが特徴。コンビニなどのレジ前で複数のアプリを出し、ポイント付与から決済までを素早く操作できることを想定した機能だ。
Point & Payメニューというランチャーを搭載。専用窓が開き、登録したアプリだけを次々と切り替えていける(端末に決済アプリが入っていなかったので、写真は別のアプリを設定した)
湯原氏によると、この機能をテストするため、「社内でコンビニのレジを模したものを作り、こんなに変わるという時間的なシミュレーションも行なった」という。テストは、実際のコンビニに協力を得て実施したという。アプリが動くかどうかの単純なテストではなく、リアルな利用シーンに基づいてテストを重ねているというわけだ。
誤解を恐れず言えば、日本ならではの生活体験を反映させた機能の作り込みは、FCNTやシャープのモノ作りをほうふつとさせる。使い勝手が二の次になっていたわけではないが、Xperiaはグローバル展開していることもあり(展開する国や地域はだいぶ減ってしまったが……)、日本に特化したユースケースへの対応や発信が弱かった印象もある。
社内に検証用コンビニ環境を作り、実際の使い勝手をテストしたという。いい意味で、ソニーっぽくない印象も受けた
ミッドレンジモデルにどう付加価値をつけていくかを考えたとき、コストパフォーマンスで勝負する中国勢にはない作り込みに勝機を見出したと見ていいだろう。Xperia 10 VIIで搭載した「即撮りボタン」も、発想はこれに近い。フラッグシップモデルのように半押しはできないが、日常使いに便利なスクリーンショットが取得でき、使い勝手で他のミッドレンジモデルと差別化を図っている。
ミドルクラスの高級ポジション 10万円以下を守る判断は吉と出るか?
コンパクトさや軽さを売りにしていたXperia 10シリーズだが、昨年モデルからその位置づけを徐々に変化させていると言えそうだ。
一方で、Xperia 10シリーズには、23年を最後にラインナップから姿を消した「Xperia 5」シリーズの受け皿という役割もある。Xperia 10 VIIでこれまでより大型の1/1.56インチセンサーをカメラに採用したのも、そのためだ。Xperia 10 VIIIでも、そのカメラ仕様は踏襲している。
Xperia 5シリーズからの買い替えも増えている
その結果、湯原氏によると「Xperia 5シリーズからの買い替えが劇的に上がっている」という。10シリーズはミッドレンジとは言え、数年前と比べるとスペックが上がっているため、かつてXperiaシリーズを使っていたユーザーからも、操作性や使い勝手、カメラ性能などは高く評価された格好だ。
実際、ソニーが公開した調査ではXperia 10 VIの時には15.7%だったXperia 5シリーズからの乗り換えが、Xperia 10 VIIでは26%にまで拡大し、Xperia 10シリーズ同士の乗り換えに迫る数値になってきている。カメラなどの機能を強化した結果、ミッドレンジの後継機としてだけでなく、コンパクトハイエンドからの移行先としても選ばれるようになったというわけだ。
こうしたユーザー層の変化を受け、Xperia 10 VIIIでは、さらにハイエンドモデルに近い機能を取り入れた。その1つが、輝度を50%高めたというディスプレイ。照度センサーも刷新したが、これは「環境に合わせた自動調整を行なうもので、Xperia 1シリーズの技術を(10シリーズに)初めて応用した」(湯原氏)という。
右がXperia 10 VIII。輝度を上げただけでなく、照度センサーも刷新した
もう1つが、スピーカーだ。Xperia 10 VIIIでは、フロントスピーカーの片側(ボトム側)を刷新して、より左右から均一の音が出るようになった。これにより、音量は15%、低域の音圧は100%向上。さすがにフラッグシップモデルのXperia 1シリーズにはかなわないが、それに近い音を本体単体で楽しめるようになっている。カメラに続いてディスプレイや音作りについても、Xperia 5シリーズの受け皿になるよう進化させたというわけだ。
スピーカーユニットも刷新して、ハイエンドに近い音を出せるように改善した
もっとも、約10万円という価格はミッドレンジモデルの中ではやはり価格が頭1つ抜けている。このレンジで強いグーグルの「Pixel 10a」は、10月に値上がりしたが、それでも価格は92,800円。FCNTの「arrows Alpha 2」はよりミッドハイ寄りのスペックながら、9万円台半ばで販売されている。
率直に言って、Xperiaの価格競争力は弱い。一方、キャリアモデルであれば、残価設定型の端末購入プログラムで安くなるケースはある。キャリアと組み、こうした販売方法にどこまで頼れるかが売れ行きを左右するカギになりそうだ。
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