ファンダメンタルズに目を背ける日米当局の過度な介入では長期金利上昇は止まらない、市場シグナルを歪める大きな代償 | 政治・経済・投資 | 東洋経済オンライン

「私が胴元だ」発言の翌日9月9日に、テキサス州ダラスで「共和党全国大会」に登壇したベッセント米財務長官(写真:Getty Images)
-
佐々木 融 ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト
INDEX
30年ほど前に筆者が日本銀行で為替介入の担当者をしていた頃、上司に「アメリカの財務省やFRB(米連邦準備制度理事会)が日本の為替介入をあまり好ましく思わない理由の1つは、米国債市場が歪められるから」だと教えられたことがある。アメリカの当局は、市場の動きを細かく分析し、読み取れる変化を基に政策を決める。だから、介入で日本の当局が多額の米国債を買ったり(円売り介入の場合)、売ったり(円買い介入の場合)するのを好ましく思わないというのだ。
ウォーシュFRB議長は今年8月のジャクソンホールでの講演で次のように発言した。「政策を正しく行うためには、金融市場と中央銀行の間の関係性を正しく築く必要がある。FRBは、(中略)米国債の価格と取引高、ドルの価値、(中略)幅広いコモディティーの価格などからの、可能な限りフィルタリングされていない明確な市場シグナルを必要としている」。この発言を聞く限りFRBのスタンスは30年前と変わっていないようだ。
米国債のような大きな市場の動きは歪められない
専門家が日本や世界のマーケットの現状と先行きを鋭く分析。【水曜日更新】
しかし、本来市場の申し子であったはずのベッセント財務長官は、政治的な圧力からか、アメリカの当局者が大切にしていた価値観を失っているように見える。ベッセント氏は米長期金利が上昇を続ける中、8月19日に満期10年超の米国債のバイバックを倍増させるとアナウンスした。米長期金利が一時低下したもののすぐに反転上昇すると、財務省一般勘定(TGA)の資金を活用した買い入れ額増加を示唆し、市場の動きを無理やり抑え込もうとしたが、逆にその後、米長期金利は大きく上昇した。対症療法で米国債のような大きな市場の動きを歪められないことは、ベッセント氏自身が最もわかっていたはずだ。長期金利上昇という市場のシグナルを無視して無理やり抑え込むのではなく、背景にあるファンダメンタルズに目を向けるべきだった。
この記事は有料会員限定です
残り 1359文字
各タグのフォローボタンをクリックしフォローすると、関連する新着記事をメールで受け取ることができます
411 記事
関連記事
本文の内容に基づいた記事をピックアップしています
佐々木 融 ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト
フォローすると、最新記事をメールでお知らせします。
ささき とおるTohru Sasaki
2023年から現職。日本銀行で調査統計局などを経て国際局(当時)為替課で為替市場介入を担当し、ニューヨークでアメリカ金融市場分析も行った。2003年からJPモルガン・チェース銀行でFXストラテジストや市場調査本部長を務め、金融市場を調査・分析してきた。著書に『インフレ・円安・バラマキ・国富流出』(日経プレミアシリーズ)など。
KioskNews shows a cleaned-up reading view extracted from the publisher’s page — the original always lives on their site, not ours.
