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Wednesday, November 4, 2026

[ITmedia News] ランサム攻撃で身代金を払う企業・払わない企業の違いとは? オランダ警察などが約700件の記録から分析

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著者 山下(Seamless) 山下(Seamless)

[ITmedia]

Innovative Tech:

2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 オランダ警察や英エディンバラ大学などに所属する研究者らが発表した論文「You Can’t Talk Your Way Out of Cyber Extortion: An Empirical Study of Ransomware Negotiations」は、ランサムウェア攻撃における犯行グループとの値引き交渉の実態と、身代金の支払いを決定づける要因を明らかにした研究報告だ。

 近年、ランサムウェアの平均支払額は上昇しており、2018年には6000ドルだったところ、25年には113万ドルへと増えている。攻撃手法自体は従来と大きく変わらないものの、標的の支払い能力を見極めて金額を吊り上げ、チャットで値引き交渉を行うビジネスモデルが確立されている。

 研究チームは、オランダ警察とインシデント対応(IR)企業が扱った461件の事件データと、公開された237件の交渉チャット記録を用い、接触から値引き、支払い、事後のトラブルに至る6段階のプロセスを検証した。

6段階のモデル

 結果は、461件のうち払ったのは25.8%。犯行グループが交渉窓口を提示した253件のうち、被害者が接触しなかった場合の支払率は7.6%にとどまるが、接触した被害者では66.7%、値引きまで至った事例では70.7%に上がっていた。

犯行グループが交渉窓口を開き、被害者が接触し、値引きに至るほど支払率は上がる

 被害者が攻撃前から完全に復旧できるバックアップを持っていた場合、身代金を支払う割合が少なくなる傾向が見られた。反対にバックアップを持たない被害者は、支払いに応じる可能性が高くなった。これには、一部しか戻せないバックアップしか持っていない被害者や、犯行グループにバックアップを壊された被害者も含まれる。

 つまり、完全に復旧できるバックアップの有無が、交渉や金額よりも支払いの有無を大きく左右していた。

 一方で、窃取したデータの公開を盾にする二重恐喝は、被害者が支払いに応じる確率を高めていなかった。データ流出に伴う法的責任や信用の失墜は身代金を払っても免れず、犯行グループが約束通りデータを消去する保証もないためと考えられる。

 サイバー保険についても、加入しているから払うという関係は見つからなかった。反対に、保険に加入している組織は犯行グループからの割引幅が小さくなる傾向が確認された。

 交渉の駆け引きでは、やり取りが10通以下なら値引きも支払いもゼロだが、100通を超えると86%で値引きが出て、中央値で66%の減額になる。しかしそこまで粘っても支払率は45%ほどで、交渉が長引くほどむしろ支払率が下がっていた。

 専門のIR企業が介入した場合、割引を引き出せる確率は高まった。しかし、割引幅の大きさ自体は、最終的に支払うかどうかには影響を与えていなかった。つまり、専門家の介入や交渉の長さは、支払わざるを得ない状況で金額を下げることには有効だが、支払うか否かの判断そのものを変える要因にはなっていなかった。

交渉の5段階ごとに、バックアップや保険、IR企業の介入などの要因がどのように影響したかを示した表

 身代金を支払った119件の事後調査では、犯行グループから復号鍵が届かなかったケースは2.5%(3件)、一部不具合や遅延があったケースは6.7%(8件)、支払い後に追加の金銭を要求されたケースは7.6%(9件)であった。

 再攻撃は461件中17件あり、犯行グループ側にも、将来の被害者から集金し続けるために、支払えば問題なく解決できるという一定の信用を維持する動機が働いていることがうかがえる。確認された再攻撃の原因も、被害者側の不十分なウイルス駆除やネットワーク分離の不備といった復旧・管理上の問題によるものだと研究チームはみている。

Source and Image Credits: Meurs, T., Cartwright, E., Cartwright, A., Houba, H., & Woods, D. W. (2026). You Can’t Talk Your Way Out of Cyber Extortion: An Empirical Study of Ransomware Negotiations. In Proceedings of the 2026 ACM SIGSAC Conference on Computer and Communications Security (CCS ’26). ACM. https://doi.org/10.1145/3830454.3832611

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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。

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2014年から幅広い分野の研究論文をピックアップして解説しているメディア「Seamless」(シームレス)を主宰している。

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