歌詞の「感情表現」が時間の経過とともに減少し非道徳的な歌詞が増えていることが判明
この研究で、歌詞の感情表現の幅と社会的な話題への言及が時間の経過と共に減少していることが判明しました。アーティストごとの曲を見ても、全てのアーティストの曲を見ても、全体的に肯定的な言葉と否定的な言葉の両方が減少し、家族や友人への言及も薄れているそうです。また、不安に関連する表現が増加し、悲しみに関連する表現が減少していたことも分かりました。
一般的には、人間は年齢を重ねるにつれて感情表現が豊かになり、意味のある人間関係を重視するようになるため、アーティストも高齢になると表現の幅が広がって人間関係に関する歌詞を使うようになると予想されたそうですが、実際は反対のことが起きていました。研究者らは、歌詞が文化的な要因に影響されている可能性が高いと推測しています。
230組のアーティストのうち、最も多くの曲が含まれていたのはウィリー・ネルソンで、歌詞のある曲が最も少なかったのはマイルス・デイヴィスでした。マーヴィン・ゲイやスプリームスのようなクラシックソウルや初期のロックのアーティストは肯定的な感情や社会的な言及の項目で上位にランクインする傾向がありましたが、ナイン・インチ・ネイルズやセックス・ピストルズのようなカウンターカルチャー的なジャンルのアーティストは下位に位置することが多くありました。否定的な感情や悲しみに関連するカテゴリーでは、ハンク・ウィリアムズやパッツィー・クラインのようなカントリーやブルースのアーティストが特に多くを占めていたそうです。
ロンドン大学クイーン・メアリー校が実施した別の研究では、1960年から2010年までにリリースされた7131人のソロアーティストと4294の音楽グループによる37万7812曲と、1960年から2023年までにリリースされた5580曲が調査されました。研究チームはテキスト予測に特化したAIモデルを利用し、10種類の道徳的特性に基づいて歌詞を分類しました。
この研究では、歌詞から思いやりや純粋さといった道徳的美徳の表現が減少した一方で、堕落、危害、浮気、反逆といった道徳に反する歌詞は著しく増加していることが分かりました。具体的には、思いやりに関する表現は24%減少し、堕落に関する歌詞は52%、危害に関する歌詞は49%、浮気に関する歌詞は48%、反逆に関する歌詞は40%増加したそうです。
また、歴史的な事件と関連付けたところ、1955年から始まったベトナム戦争時代に比べて、2001年以降の対テロ戦争時代の方が堕落、危害、浮気、反逆に関する歌詞が著しく多かったことも分かっています。歌詞の中には、非道徳的な思想を憂い、悲しみ、嫌悪感、怒りといった否定的な感情を示すものも多くありました。
筆頭著者であるロンドン大学クイーン・メアリー校の研究者、ヴィヨサ・プレニキ氏は「音楽は、社会が自らの物語を語る手段の一つです。数十年にわたる楽曲の歌詞を分析することで、感情表現や道徳的な物語が時代とともにどのように変化していくのかが見えてきます」と述べました。
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