通常の氷の約10倍の圧縮強度を持つ「スーパーアイス」が開発される
氷に植物由来の材料を加えて強度を高める試みは以前からあり、1940年代には木材パルプを氷に混ぜた「パイクリート」が開発されました。今回の研究チームは単に繊維を混ぜるだけでなく、補強材と氷が分子レベルで結び付くように工夫することでさらに強度を高められると考えました。
研究チームはまず、植物の細胞壁を構成するセルロースの微細な結晶「セルロースナノクリスタル(CNC)」を水に混ぜ、一方向から凍らせました。CNCを混ぜることで水が凍る際にCNCが細かな網目状の構造を作り、その中に氷が閉じ込められます。
さらに、この網目と氷を強く結び付けるため、研究チームは氷に結合する魚の不凍タンパク質「AFPIII」と、セルロースに結合するタンパク質の一部分「CBM3a」をつなぎ合わせました。こうして作った融合タンパク質「CBM3a-AFPIII」をCNCの網目と氷をつなぐ接着剤のように働かせる狙いです。
以下はBioPykreteの構造を表した模式図。左側は黄色のCNCの網目が青色の氷を囲む様子を示しており、右側は氷とCNCが結び付く部分を分子レベルで拡大したもので、融合タンパク質の青色の部分がCNCに結合する仕組み、紫色の部分が氷に結合する仕組みを表しています。
研究チームはCNCを2%含む水にCBM3a-AFPIIIを加え、底から冷やして凍らせた後、通常の氷や融合タンパク質を含まない複合材料なども含め、各条件で5個ずつ直径2cm・高さ1cmの円柱状の試料を用意しました。そして、試料を金属板で挟んで氷が成長した方向に圧縮し、かかる力と変形の大きさを測定して比較しました。以下が試験に用いられた試料です。

圧縮試験の結果、BioPykreteの圧縮強度は通常の氷の約10倍になったと研究チームは報告しています。2種類のタンパク質をつなぎ合わせずに加えた複合材料と比べても、圧縮強度は約2倍だったとのこと。
また、壊れ方にも違いがありました。通常の氷は亀裂が広がると急に砕けてしまいますが、BioPykreteは徐々に変形します。さらに、圧縮試験から求めた「壊れるまでに吸収するエネルギー」は、同じ体積で比べると通常の氷の約70倍でした。
研究チームは、CNCの網目が亀裂の広がりを妨げ、氷が一気に砕けるのを防ぐと説明しています。亀裂が広がるにはCNCの網目を氷から引き離したり、網目自体を変形させたりする必要があるとのこと。さらに、融合タンパク質がCNCと氷の結び付きを強めるため、より大きな力に耐えられると研究チームは考えています。以下の写真は、BioPykreteを凍結乾燥させて氷を取り除き、残ったCNCの網目を電子顕微鏡で観察したもの。

研究チームは、一般的なコンクリートと同程度の圧縮強度を持つBioPykreteを、北極や南極で使う建材の候補と考えています。ただし、今回の研究は小さな試料を使って性能を確かめた段階のものであり、実際に建材として使えるかどうかを判断するには長期的な耐久性のほか、凍結と解凍を繰り返した場合の劣化や力がかかり続けた場合の変形などを調べる必要があります。
研究チームは、氷を凍らせる速度や手順を調整し、氷とセルロースをつなぐタンパク質の組み合わせを改良することで、さらに強度の高い材料を作れる可能性があると述べています。
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