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Tuesday, October 27, 2026

[ITmedia News] 「若手はAI使うな」は“老害”なのか? 新人教育で「AI禁止」した企業の1年後

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著者 吉川大貴 吉川大貴

[ITmedia]

 「新人にはAIを使ってほしくない。入社後は議事録作りやメール作成、スライド資料作りを通して仕事の文脈を理解するもの。最初からAIに頼って楽をしては身に付かない」──これは、記者が参加した集まりで、とある40代男性の会社員・Mさんがこぼした愚痴だ。Mさんは最近、若手・新入社員の育成を受け持っているが、AIを使う新人が多く、実力がつかないことを危惧しているという。

イメージ画像(Adobe Stock)

 Mさんの場合、最も悩ましいのは新人にどこまでAIを使わせ、どこまで禁止するか。「若手層の中には『AIの活用を求められる』と聞いて入社してきた人もおり、人事も同様の方針。その中で禁止を命じるのは、客観的に見れば“老害”と見られても仕方ないのでは」とMさんは苦笑いする。

 AIが急速に普及する昨今、同様の悩みを抱えている人は多いだろう。実際にAI禁止施策を採用する企業も少なくない。不動産向けSaaSを手掛けるいえらぶGROUPもその一社だ。同社の和田健太郎執行役員によれば、いえらぶGROUPも25年ごろ、ITエンジニアの教育でMさんと類似のつまずきを抱えており、新人にAI禁止を命じるに至った。

 和田執行役員によれば当時の試みは一定の成果を挙げたという。だが現在は、新人のAI利用を全面禁止はしない形に移行した。奏功したはずのAI禁止をやめた理由とは──同社の判断から、AI時代における社員教育の最適解を探る。

初めて手掛けた機能に指摘830件 AI禁止の背景

 そもそもいえらぶGROUPは、なぜ新人エンジニアにAI利用禁止を命じるに至ったのか。話は25年末ごろにさかのぼる。同社はエンジニア全員にAI開発ツールを配るなどAI活用を進めており、完全未経験で入社した新人エンジニアにも使わせていた。

 しかし、新人が初めて手掛けた大きな機能のレビューで、指摘が830件に達する事態が起きる。システムの設計ルールを無視した書き方、確認用に書いた不要な処理がそのまま残っている、動作チェックの仕組みが1つも作られていないといった問題があった。原因を尋ねると、新人は「AIがそう実装してくれたので、正しいと思っていました」と答えたという。

 出力が正しいかどうかを自分で判断できないまま使わせるのは危うい。そう判断した和田執行役員は、「自分の頭で考える筋トレタイム」と称し、新人のAI利用を禁止する期間を設けた。

 禁止期間中、新人に取り組ませたのは、開発の公式ドキュメントを読むこと、社内の既存のプログラムを読んで共通する書き方のパターンを見つけること、そして実装に入る前に「どう作るか」を言葉にして整理することだ。

 並行して、人の手によるフィードバックを段階的に行う方式に切り替えた。いきなり完成品を作らせるのではなく、まず設計の骨組みだけを提出させて全体の方向性が社内のやり方と合っているかを確認する。次に、処理の流れを日本語のメモ書きで提出させる。その後、見た目を無視して中身の処理だけを作らせ、最後に画面のデザインを整えさせる──という4段階だ。

 そして本人の質問が「どうすればいいですか」から「どちらがいいと思いますか」に変わったところで、AIの解禁を判断することにしたという。

 3カ月後、新人が手掛けた機能は合格レベルに達した。設計ルールが守られ、動作チェックの仕組みも入った。和田執行役員も「自分が書いたものについて質疑応答ができるようになった」と感じたといい、AIの利用も解禁した。

 新人エンジニアは26年10月現在、商品開発本部の役職者として活躍しているという。和田執行役員も「AIの出力や他人のコードを書く側から見る側に回った。禁止前の約1年半で、彼が他のメンバーのコードにレビューコメントを付けたのは7件だった。今では(AIのレビュー支援を使ったものも含め)月に100件を超えるコメントを付け、主に若手のコードを承認する立場になっている。AIの提案に対しても『AIの案はここが違う。こういう意図で作った』と自分の判断を説明できるようになった」と評価する。

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