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Tuesday, November 3, 2026

[ITmedia PC USER] ミュンヘン市はなぜ再びオープンソースソフトウェアへ回帰するのか? 脱Microsoftを巡る欧州の最新事情

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 チェコのプラハで10月上旬に開催された「Open Source Summit Europe」の話題を、ZDNETが報じている。

 同ステージに登壇したドイツのミュンヘン市でCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)のローラ・ドルンハイム氏によれば、10年前に政治的事情からLinuxデスクトップ環境であるLiMuxを捨てWindowsへと移行した同市が、今再びオープンソースソフトウェア(OSS)へと回帰しつつあるという。

 10年前のOSSからWindowsへの移行話は本連載でも過去に何度か取り上げているが、「またか」という感想を抱くと同時に、10年間の効果検証を経て行政のITシステムはどうあるべきかという根本的な問いに対する回答を得るのに、またとない機会だとも思う。まずは前回から現在に至るタイムラインを簡単に整理する。

ドイツのミュンヘン市中心部にあるマリエン広場

ミュンヘン市とOSSを巡る一連の騒動のタイムライン

 ミュンヘン市とOSSにまつわる一連の事象は、2000年代初頭までさかのぼる。そもそもの発端は2004年のWindows NT 4.0のサポート終了を契機に、同市議会がベンダーロックイン回避を理由にLinuxへの移行を決議したことにある。

 この中で採用されたデスクトップOSが「LiMux」で、当初はDebianをベースに、後にUbuntuをベースに“フォーク”した独自ディストリビューションとして展開された。各種資料によれば、2006年から展開が開始され、最終的に2013年までにLiMuxとOpenOffice/LibreOfficeの組み合わせで約1万5000台の端末にインストールされたという。

 風向きが変化し始めたのは、市のOSSプロジェクトを長年推進してきたクリスチャン・ウーデ氏(SPD:社会民主党)が2014年に市長を退任してからで、後任市長のディーター・ライター氏が公然と自身のIT環境に不満を表明し、LiMuxを批判する発言をするようになる。

 こうした中、Microsoftのドイツ本社が2016年にミュンヘン市へと移転し、同年には市の委託によってAccentureが外部監査を行い450ページに及ぶ報告書を提出している。

 報告書の詳細については後ほどフォローするが、その中で触れられていた「業務効率向上のためWindowsクライアントの選択肢も復活させるべき」という部分に着目する形で、冒頭で紹介したWindows 10+Microsoft Office導入プロジェクトが進むことになる。

 最終的な移行トリガーとなったのは、2017年に成立したSPDとCSU(キリスト教社会同盟)との大連立で、主にCSU側の主導で最大1億ユーロ規模といわれる予算が投じられ、全クライアントPCのMicrosoft製品への回帰が可決されたことによる。

 この情勢は2020年に再び変化する。市議会選挙により“緑の党”が第1党になり、こちらが新たにSPDとの連立政権となった。

 この連立協定書には「Public Money, Public Code.(公金で開発されたコードは公有で)」というIT戦略が盛り込まれていたことが知られているが、興味深いのはドイツ語で書かれた協定書が、なぜかこのフレーズだけ英語で書かれていた点だ。そして、このタイミングから表題にあるミュンヘン市のOSS回帰が進み始めることになる。

「Mit Mut, Visionen und Zuversicht: Ganz Munchen im Blick(勇気、ビジョン、そして自信をもって:ミュンヘンの全てに焦点を当てて)」と題された連立協定書に盛り込まれたドイツ語のIT戦略の説明の中に、なぜか突然「Public Money, Public Code.」という英語のフレーズが出現する。ミュンヘン市のみならず、欧州全体に向けたメッセージが込められた結果という

 一方で、連立協定書の宣言にもかかわらず、Microsoft Officeの導入はその後も進み続ける。2017年の契約により、2023年の配置完了までプロジェクトが進行していたからだ。

 ただし、「Public Money, Public Code.」を主体としたOSSプロジェクトも同時並行で進んでおり、市の予算で開発したソフトウェアはOSSとして公開が行われ、他都市での活用も進むなど、宣言通りの形での展開を実現している。

 そして冒頭に名前の挙がったドルンハイム氏が2022年にミュンヘン市のCDOに就任する。ZDNETの記事でも触れられているが、同氏はデスクトップOSを一連のプロジェクトの争点にしないことを明言しており、より具体的にはLinuxに戻して現場を混乱させる行為は否定している。

 同時にインフラやバックエンド、独自開発のツールも含め、こうしたものはOSSを積極採用していく方針を打ち立てている。2024年には「OSPO(Open Source Program Office)」を設立し、ページトップの表題としても掲げられている「Use, Improve, Publish.(利用する、改善する、自ら開発して公開する)」の3本柱を制度化した。

ミュンヘン市のOSPOのページ

 同市では「Open Source Sabbatical」という制度があるが、これは市庁の内外の開発者がOSSプロジェクトに専念できるよう報酬や資金を提供するプログラムで、OSPOの推進につながるものだ。

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