【小寺信良のくらしDX】青切符導入から半年、自転車の取り締まりと利用者の意識はどう変わった?
今年の4月1日から、改正道路交通法が施行された。すでにお忘れのかたも多いと思うので、ポイントをおさらいしておく。
主なポイントは2つ。
1つ目は16歳以上の自転車運転者に対して、「青切符」が導入されたことだ。従来は軽微な違反に対しては「指導警告」、一定以上の悪質な違反に対してはいきなり刑事手続の「赤切符」が交付されていた。青切符はその中間を埋めるもので、反則金はあるが、納付すれば刑事手続に移行せず、起訴されない。
主な反則行為は以下のようなものだ。
- ながらスマホ(手に持って通話・画面注視):12,000円
- 遮断中の踏切への進入:7,000円
- 信号無視、逆走、歩行者妨害、手を離した運転など:6,000円
- 一時不停止、傘さし運転、イヤホン使用、ブレーキ不良、ライト不良、通行禁止:5,000円
- 二人乗り、並進、歩道での徐行義務違反、不適切な右左折など:3,000円
【反則行為と反則金】
ながらスマホは過去死亡事故も起きており、特に反則金が高くなっている。ただしこれらはちょっとでも違反があれば青切符が交付されるわけではなく、危険性・迷惑性が高い悪質・危険な違反の場合に対象となるという運用だ。交通ルールが厳しくなったわけではなく、これまでも違反だったものに対して反則金が導入されたという格好だ。
2つ目は、車で自転車を追い抜く場合のルール追加だ。車で同じ方向の自転車を追い抜くとき、警察庁の目安では少なくとも1m程度間隔を空け、確保できない場合は時速20〜30km程度まで減速するとされている。
4月の施行当時は積極的に取り締まり等も行なわれたが、現在どうだろうか。少なくとも筆者の地元では、交差点などに警察官が立つようになったわけでもなく、施行前と変わらずといった状況になっている。改正自体を忘れてしまったという人がいてもおかしくないだろう。
データが示す、自転車利用の変化
改正道路交通法の施行後、自転車利用に関していくつかの調査が行なわれている。KiteRaによる7月の「自転車通勤に関する調査」は、週1回以上出社し、自転車、電動アシスト自転車、フル電動自転車、特定小型原動機付自転車、シェアサイクルのいずれかで通勤しているビジネスパーソン962名を対象としたものだ。地域を限定せずインターネットから広く回答を募ったものである。
これによれば、自転車(電動アシスト自転車を含む)通勤者のうち、19.6%が実際に事故やトラブルなど、何らかの困った状況になったと回答している。事故やトラブルにはなっていないが、不安を感じるという人は27.7%となっている。
約2割が事故やトラブルなどの困った状況になったと回答
もう一つ、NCDが9月に行なった「自転車利用者の意識・行動変化に関する実態調査」は、同社の月極駐輪場「ECOPOOL」の会員に回答を募ったものだ。青切符と通行に関する分析対象は149名である。
これによれば、行動が変わったと答えた人(77.2%)のうち、「車道を意識して走るようになった」が65.2%で最多、次いで「一時停止を意識するようになった」が59.1%となっている。車道を意識するのは通行区分の違反を避けるため、一時停止を意識するのは一時不停止を避けるためと思われる。
施行後は車道を走る人が大幅に増加
筆者宅の最寄り駅は朝の通勤時、特に月末に近づくと、かなりの自転車が駅周辺に殺到する。道路幅はそれなりに広いが、自転車が車道の1列に入りきれないため、歩道を走行する自転車列とで、合計2列になっている。
車道と歩道が区分された道路において、どちらを走行するかという問いに対しては、施行前と施行後では、車道の割合が増えた。ただ一方で「どちらかと言えば車道」、「どちらかと言えば歩道」と、決めかねる回答も多い。多くの人が極力車道を走行するよう気をつけている一方で、車道を走行することが困難、あるいは不安な状況もまたあるということである。
それでも車道か歩道か決めかねる人も多い
筆者も週に1~2回は車を運転するが、車道に自転車専用レーンがない道路で自転車を追い抜くことも多い。自転車に対して1m程度の間隔を空ける車は、以前からそうした運転をしているというケースも多く、体感では6~7割ぐらいのドライバーが実施しているかなという印象がある。もちろん地域差はあるだろう。
一方その距離が取れない場合は速度を落として追い抜くことになるが、これを実施しているドライバーは案外少ない。むしろ追い越さないように減速し、対向車線から車がいなくなるのを待って、間隔を空けて追い抜くケースが多いようだ。それもまた安全策ではあるが、いつまでも自転車を追い抜かない車に対して、イライラする後続ドライバーも少なくないだろう。
KiteRaの調査では、自転車(電動アシスト自転車を含む)通勤者のうち、制度導入後の通勤中に青切符を切られたという人は9.1%、指導警告を受けたという人は3.8%となっている。この二つを合わせた12.9%のうち、青切符は約7割となる。違反者に対して青切符が切られやすくなったのか、あるいは軽微な違反は指導警告しなくなったのかは、この調査だけではわからない。
9.1%が青切符経験者
改正道路交通法への対応状況
当然ながら改正道路交通法の目的は、自転車にまつわる事故を減らすことである。しかし自転車を利用するビジネスパーソンにとっては大事な通勤手段であり、改正道路交通法は「厳格に守らないと反則金を払う羽目になる厄介な制度」と映るだろう。これに対して、会社としてはどのように対応しているのだろうか。
「青切符制度の導入を受けて、勤務先で通勤時の自転車使用に関する注意喚起やルールの見直しはありましたか」という質問に対して、54.2%が「特に何もなかった」と回答している。18.7%が「注意喚起があった」、11.1%が「ルール(規程)の見直しがあった」、6.9%が「両方あった」となり、実際に規程の見直しがあったのは、11.1%と6.9%を合わせた18.0%にとどまる。
青切符制度に対する会社の対応は鈍い
また「あなたの勤務先に『自転車通勤規程』はありますか」という問いに対しては、「ある」の平均は24.4%となった。社員数が増えれば規程ありも増えるが、100名以下となるとおよそ1割にとどまる。
そもそも自転車による通勤規程がない
「自転車通勤に関する規程に、盛り込んでほしいと思う内容」としては、「自転車損害賠償責任保険(賠償保険)への加入義務」が最多となっている。自転車損害賠償責任保険の加入は法律では義務付けられておらず、各自治体の条例によって義務化されているところもある。ただそれも全国統一というわけではなく、加入義務となっている都府県は35。それ以外は努力義務か、条例がない。
一番盛り込んでほしいのは、「自転車損害賠償責任保険(賠償保険)への加入義務」
自治体で義務化されてなくても、おそらく中高で自転車通学が行なわれる地域では、学校のルールとして子供の自転車損害賠償責任保険への加入が求められるだろう。おそらく大学でも同様のはずだ。こうしたことを会社でもやってほしい、ということである。
そもそも改正道路交通法施行後、実際に自転車事故は減少したのだろうか。10月20日に警視庁発表としてFNNが報じたところによれば、この半年間の都内での自転車関連事故は6,353件で、前の年の同じ時期より748件減少したとしている。警視庁は青切符制度の導入が影響したというが、実際には自転車側に過失がない事故も含まれているはずで、全部が青切符制度導入の成果とは言い切れない。またこれは東京都内だけのデータであり、全国規模のデータが集まるのはおそらく来年(27年)の4~5月ごろになるだろう。
一般市民が懸念するのは、青切符制度が導入されたことによって、より簡単に青切符が切られるようになったのではないか? つまり、これまでは指導警告で済まされていたものが、より反則金を取られやすくなったのではないかという点だ。
施行前と施行後の、指導警告と青切符・赤切符の交付割合を警視庁発表資料からまとめてみたところ、むしろ施行後のほうが指導警告の割合が増えており、赤切符の割合は大きく減少している。警察の取り締まりに関しては、おおむね法の趣旨通りに動いていると言えそうだ。
導入前と導入後の取り締まり構成比
青切符制度導入により、簡単に捕まって反則金を取られると疑心暗鬼になりながら自転車に乗っている人もいるかもしれない。しかし実際には指導警告の範囲が狭くなったわけではなく、ほぼこれまでどおりの運用と考えていいだろう。
とはいえ反則金の有無にかかわらず、日常の足である自転車で人身事故を起こしては大変だ。保険加入ももちろんだが、その前に事故を起こさないように乗るというのが、もっとも重要である。
小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。
KioskNews shows a cleaned-up reading view extracted from the publisher’s page — the original always lives on their site, not ours.









