[ITmedia ビジネスオンライン] 「6億台のコネクテッドカー」動かす光技術 IOWNは欧州のデータセンター危機を救うか?
そんな映画のようなテクノロジー革命がいよいよ現実のビジネスとして動き出そうとしている。2030年にはネットワークにつながるコネクテッドカーが世界で6億台を突破する見通しだ。そうしたモビリティの世界を電子空間上に再現するデジタルツイン構想が「Edge Twin」(エッジツイン)である。
南米チリの過酷な銅鉱山では最大1500キロ離れた拠点間を超低遅延ネットワークで結び、重機を遠隔操作する実証が始まった。これらの巨大な産業変革の裏側で、ひそかに世界の情報通信インフラ基盤を塗り替えようとしているのが、NTTが提唱する次世代光通信技術「IOWN」(アイオン)だ。
これまでサーバのラックの中に閉じこもっていたAIを物理世界で直接動かす「フィジカルAI」。その中核インフラとして、IOWNが今、世界を揺るがし始めている。
10月初め、IOWNの国際推進組織「IOWN Global Forum」がオランダのアムステルダムで年次中間会議を開催した。この会議は非公開のセッションと、メディアにも公開される「FUTURES」(フューチャーズ)で構成される。会議の場に参加し、IOWNの新たなユースケースとしてモビリティ分野への活用を採り上げた現場を取材した。
生成AIの需要爆発によるデータセンターの電力危機にあえぐ欧州で、超低消費電力技術のIOWNはその救世主となるのか? オランダで開かれた国際会議を取材して見えた、光通信革命の最前線を追う。
5GAAのマキシム・フラメントCTOと固い握手を交わすIOWN Global Forumの川添雄彦会長(以下、筆者撮影)
2030年「6億台」の頭脳へ モビリティを自律制御する「Edge Twin」
モビリティ分野のデジタルツイン「Edge Twin」とは、5G(第5世代通信システム)を自動車分野に活用しようとしている国際組織「5GAA」(5Gオートモーティブ・アソシエーション)と、コネクテッドカーの国際推進組織「AECC」(オートモーティブ・エッジ・コンピューティング・コンソーシアム)が2024年に共同で打ち出したデジタルツイン構想だ。
電子空間上に街並みや走行車などを精緻に再現し、自動運転や交通事故の予防を促すもので、IOWNを活用することでそれが実現できるよう5GAA、AECC、IOWN Global Forumの3者が合意した。
5GAAは2016年に独自動車大手のAudi(アウディ)、BMW(ビーエムダブリュー)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)や、通信機器大手のスウェーデンのEricsson(エリクソン)、フィンランドのNokia(ノキア)、中国のHuawei(ファーウェイ)、さらに米半導体大手のIntel(インテル)やQualcomm(クアルコム)の8社で設立した。現在はトヨタ自動車など世界から110社以上が参加している。
IOWN Global Forumの公開イベント「FUTURES」で開会の挨拶をする川添会長
一方のAECCは2018年に設立され、代表はトヨタ自動車の大西亮吉氏が務める。大西氏はFUTURESにオンラインで登壇し「2030年には世界で6億台の自動車がネットワークでつながる。その膨大なデータをリアルタイム処理するには、IOWNを用いた分散型コンピューティングが不可欠になる」と話した。
2027年3月にスペインのバルセロナで開かれる世界最大のモバイル見本市「MWC」(モバイル・ワールド・コングレス)でEdge TwinのPoC(概念検証)を発表する計画で、5GAAのCTOを務めるマキシム・フラメント氏は「Edge Twinの構築により、従来の運転支援を超え、AIが自動車の運行を自律制御する新しい時代へ入る」と強調した。
街中の信号や車両、歩行者の動態を一瞬で把握して判断するには、車載センサー情報と道路側のインフラ情報をIOWNによって瞬時に同期させる必要がある。
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