ネット通信量1GB当たりに約10円課税する法案がフランス議会で可決、GoogleやMetaなどの大手IT企業が対象だがフランス政府は反対

by Jackintosh
新税は、コンテンツ事業者がフランス国内のインターネット利用者に送信したデータの総量を基準に課税する仕組みです。例えば、ある企業がフランス国内に100万GBのデータを送信した場合、税額は5万5000ユーロ(約970万円)となります。課税対象は動画配信やSNS、クラウドサービスなど幅広いインターネットサービスで、データ通信量が多い企業ほど税負担が大きくなります。
修正案の説明文では、主な課税対象としてGoogle、Meta、Amazon、Netflix、Akamaiの5社を挙げています。フランスの電子通信規制当局であるARCEPの推計によると、同国のインターネット利用者に送信されるデータは年間約2000億GBに上り、これら5社だけでトラフィック全体の約半分を占めるとされています。
税金を負担するのはインターネット利用者や通信事業者ではなく、データを送信するコンテンツ事業者です。通信事業者はネットワークを流れるデータの量と送信元の企業を把握し、その情報を四半期ごとに税務当局へ報告します。具体的な通信内容や送信先の情報は収集せず、データ量を集計する仕組みとすることで、利用者のプライバシーに配慮すると説明されています。
また、コンテンツ事業者が利用者の近くに設置したサーバーからデータを配信する「CDN(コンテンツ配信ネットワーク)」にも対応する規定が設けられています。CDNを利用した場合は、配信ネットワークから送り出されたデータ量を課税の基準とするため、事業者が配信経路を変更するだけでは課税を回避できない仕組みです。

新税には企業のフランス国内売上高の15%、または世界全体の売上高の2%を上限とする規定も設けられています。これは動画配信やゲームなど、売上高に対してデータ通信量が大きくなりやすい事業への影響を考慮した措置です。
提案者は「大手IT企業が国境を越えてサービスを提供し、従来の法人税などでは十分に課税できていない」と述べ、実際に利用者へ送信されたデータ量を課税基準にすることで、企業が利益をどの国で計上しているかに左右されにくい税制を構築できると主張しています。また、通信量に応じた課税は、データの圧縮や通信効率の改善を企業に促し、環境負荷の軽減にもつながると説明しています。
しかし、フランス政府はこの修正案に反対しています。デビッド・アミエル公共会計担当相は、データ通信量を正確に把握するためにはネットワーク上に測定装置を設置するなどの対応が必要になると指摘。さらに、税収見込みの約半分に相当する50億ユーロ(約8800億円)が大手IT企業ではなくフランス国内の中小コンテンツ事業者などの負担になる可能性があると警告しています。
また、税金が利用者に転嫁される可能性も指摘されています。コンテンツ事業者が新たな税負担を補うためにサービス料金を引き上げた場合、Netflixなどの動画配信サービスの月額料金やクラウドサービスの利用料金が上昇することも考えられます。
実際に動画再生ソフト「VLC」を開発するフランスの非営利団体VideoLANは、新税によって年間100万ユーロ(約1億7600万円)以上の負担が発生する可能性があるとXで主張しています。これに対し、修正案を提出したラルディ議員は「税額には上限が設けられており、VideoLANの場合は課税されない」と反論しています。一方でVideoLAN側も「非営利団体であっても収入が存在する」と語り、ラルディ議員の説明に異議を唱えています。
こうした大手コンテンツ事業者に通信量に応じた負担を求める構想は、イギリスでも議論されたことがあります。イギリスの通信規制当局Ofcomは2022年から2023年にかけて、GoogleやNetflixなどのコンテンツ事業者に通信インフラの維持・整備費用を負担させる「Fair Share」と呼ばれる仕組みを検討しました。フランスのように政府が税金を徴収するのではなく、通信事業者がコンテンツ事業者からネットワーク利用料を徴収するという構想です。
Statement: Net Neutrality Review
https://www.ofcom.org.uk/internet-based-services/network-neutrality/net-neutrality-review
しかし、Ofcomは2023年10月、こうした制度の導入を正当化する十分な証拠が確認できないとの結論を示しました。さらに、イギリス政府は2026年に公表した通信市場の見直しに関する文書で、コンテンツ事業者に通信インフラの建設費用を負担させる措置について、導入を検討していないと明言しています。フランスの新税についても、今後の議会審議でどのように扱われるかが注目されるところです。
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