[ITmedia エンタープライズ] 「AI活用でIT部門の人員が増える」は本当か? 人材構成の「二重の変化」をGartnerが解説
AIを使えばIT部門の人員は減る――。多くのリーダーがそう想定する中、Gartnerの調査では回答者の40%が2027年にIT部門の人員を増やすと見込んだ。AIで成果を上げるCIOが見据える、人材構成の二重の変化とは。
» 2026年10月21日 09時00分 公開
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調査会社のGartnerは2026年10月19日(現地時間)、CIO(最高情報責任者)とテクノロジー幹部を対象とした調査「2027年CIOおよびテクノロジー幹部アジェンダ」(2026年5月~7月に世界のCIOとテクノロジー幹部2002人を対象に実施)の結果を発表した。
同調査によると、AIから大きな価値または変革的な価値を実現したと回答したCIOは13%にとどまった。また、AIのユースケースが過去2年で増加する一方で、AIプロジェクトが成功する確率は5件に1件のまま変化していないという。
4割が増員を予想 その背景にある「二重の変化」とは?
Gartnerは今回の調査で、ビジネス成果で優れた実績を上げ、かつCEOが認識するAIの価値も高いと報告するCIOを「先駆者」(vanguard)と定義する。その上でAI案件の停止ルール、AIの経済性、IT人材の3点からCIOの課題を示した。
同調査によると、回答者の40%が2027年にIT部門の人員を増やすと見込んでいる。これは、AIは主にIT部門の人員削減に役立つという多くのリーダーの想定とは食い違う数字だ。Gartnerは、その背景にAIがもたらす「二重の人材構成の変化」があると説明する。
Gartnerによると、AIによってテクノロジーを生み出すためのコストと労力が下がる一方で、テクノロジー関連の仕事に対する需要は全体として増える。その結果、IT部門の人員が増える可能性があると同時に、個々の役割には縮小と拡大が同時に起きる、という二重の人材構成の変化が生じるという。特にサイバーセキュリティとデータ分析の分野で、人員の増加が見込まれている(図1)。
図1 IT部門内のチーム別に見た、今後12カ月間の人員数の増減見込み(回答者の割合)(出典:Gartnerのプレスリリース)
Gartnerは、人間とAIエージェントが共に働く体制に向けた役割を再設計できるかどうかを、「先駆者」とそれ以外のCIOを分ける要因として挙げる。役割を再設計する明確な計画を持つ組織のCIOは、そうでない組織のCIOに比べて「先駆者」に該当する割合が2.4倍高かった。しかし、そうした計画を持つと回答したCIOは4%にとどまった。Gartnerのアリシア・マレリー(Alicia Mullery)氏(バイス プレジデント アナリスト)は「先駆者を分ける真の要因は人材の再設計にある」と述べた。
マレリー氏は職務の変化についてこう説明する。「先駆者は固定的な職務定義を維持するのではなく、AIが専門的なタスクを担うにつれて、既存の技術職の境界が曖昧(あいまい)になり始めていると認識している。例えばデザイナーがテスト業務を担い、テスターが設計に携わるようになる。その結果、各職務の責任範囲は広がる一方で、組織が必要とする職種の種類は減る」
本番運用すべきでないAIプロジェクト、どう判断すべき?
「先駆者」とそれ以外のCIOとの違いは、AI案件の停止ルールにも表れた。「先駆者」は、パイロット(試行)と本番運用の2つの段階で停止ルールを設ける傾向にある。AIのパイロットを本番環境に移行すべきでないケースを判断するガイドラインを持つ組織のCIOは、そうでない組織のCIOに比べて「先駆者」に該当する割合が2.3倍高かった。本番環境で稼働している価値の低いAI案件を中止するガイドラインを持つ組織では、この差は2.6倍だった。しかし、こうした慣行を導入していると回答したCIOは、それぞれ31%と17%にとどまった。
マレリー氏は「量は価値ではない。AIは、ユースケースの価値を事前に定義する、撤退の基準を設けるといった基本的な規律を欠く組織の弱点を浮き彫りにしている」と述べた上で、「こうした基準を定めて順守することはチームスポーツだ。CIOには、価値の低い投資から手を引く意思と準備のあるビジネスパートナーが必要だ」と続けた。
CIOの課題として挙げられたもう一つの領域が、AIの経済性だ。AIのための支出は増えている(図2)。こうした中、CIOの58%はAIによるコスト改善を求める圧力が強まったと回答した。同時に、CIOの51%はAIによってテクノロジーソリューションの総所有コスト(TCO)が増えると予想している。Gartnerは、CIOには最初のテクノロジー購入を承認するだけでなく、組織がライフサイクル全体にわたってAIの経済性を管理できるよう支援する役割が求められるとしている。
図2 2026年から2027年にかけての分野別テクノロジー予算の増減見込み(回答者の割合)(出典:Gartnerのプレスリリース)
マレリー氏は「多くの組織は、クラウドやSaaSといった従来のテクノロジー投資向けに設計された資金調達とガバナンスのモデルを適用し続けている。従来のテクノロジーコストはおおむね予測できるが、AIのコストは確率的で、実行時に決まる。企業のテクノロジー投資が生成AIやエージェンティックAIに移り、レガシーインフラへの投資が縮小する中で、CIOには資金調達、ガバナンス、コストの説明責任に関する新たなアプローチが必要になる」と述べた。
AIのリスクが価値を上回るペースで増える理由
AIへの投資が膨らむ中、そこから得られる価値はなぜ追い付かないのか。Gartnerは、その一因をリスクとガバナンスの面から指摘している。
同日に米フロリダ州オーランドで開幕したカンファレンス「Gartner IT Symposium/Xpo 2026」の基調講演でGartnerは、CIOやITリーダーから、自組織ではAIのリスクがAIの価値よりも速く増えているという報告を受けていると述べた。その不均衡を裏付けるデータも示された。
Gartnerのクリスティン・モイヤー(Kristin Moyer)氏(バイス プレジデント兼ディスティングイッシュト アナリスト兼Gartnerフェロー)は「2026年第2四半期に2000人超のCIOとテクノロジー幹部を対象に実施した調査では、71%の組織が今後12カ月以内にエージェンティックAIを導入する見込みなのに対し、エージェンティックAIのガバナンス機能を備えている組織は21%にとどまった。この不均衡のために、AIがリスクを生み出すよりも速く価値を生み出すことが難しくなっている」と述べた。
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