[ITmedia News] ゴジラ到達までに25万人をどう逃がす──富士通の避難誘導シミュを体験 記者は市民を救えたか
著者
林裕也
[ITmedia]
東京湾からゴジラが上陸、約60分後に川崎駅周辺へ到達――その前に25万人を避難させられるか。富士通が、幕張メッセで開催中の「CEATEC 2026」(10月16日まで)で、「災害対策デジタルリハーサル」としてこんな体験を展示している。ゴジラ襲来を題材に、災害時の避難誘導を検証するシミュレーションで、自治体などでの実証が進む同社のデジタルツイン技術を活用している。
ゴジラ到達まで60分、25万人を避難させる
体験では、来場者が「災害対策サポートチーム」の一員として避難計画を実践する。舞台は、都市型フェス「KAWASAKI FESTIVAL」の開催でにぎわう川崎駅周辺。フェス来場者5万人を含む25万人を、ゴジラの被害想定エリアの外へ逃がすのがミッションだ。3面スクリーンに川崎の街並みとゴジラが迫る様子が映り、破壊音に合わせて足元が振動する演出もある。
避難を妨げている要因は、事前のシミュレーションで4つに絞り込んである。外国人来場者への情報伝達不足、土地勘のない来場者の迷い、避難ルートの混雑、運休を知らず駅へ向かって引き返す動きだ。これらに対し、来場者は「DJポリス」「デジタルサイネージ」「多言語対応の誘導スタッフ」「駅へ向かう人の抑制」「道路の歩行者専用開放」の5つの施策から、合計10ポイントの上限内で実施するものを選ぶ。ポイントが大きい施策ほど効果も大きい一方、準備に時間がかかり効果が出るまでが遅い、という設計になっている。
東京湾から上陸したゴジラは約60分後に川崎駅周辺へ到達する想定
ゴジラの被害想定エリアは直径約4km。この外側へ逃がし切れば避難完了となる
施策選びは、参加者同士の相談で進み、モニターに映る川崎の地図を見ながら、フェス会場の近くに置くか、駅への道筋を押さえるかなど、どの施策にポイントを割くかを話し合う。
組み合わせが固まり、決定ボタンを押すと、シミュレーションが始まる。準備が整った施策から順に効果が人の流れに表れる。記者が実際に体験した際は、道路の歩行者専用開放とデジタルサイネージ、DJポリスの3施策を選択。結果、25万人全員がゴジラ到達前に避難を完了できた。
施策を選ぶテーブル型モニター。DJポリスなどは画面をタップして設置場所を決める
シミュレーション中の画面。避難完了者数とゴジラ到達までの残り時間が刻々と変わる
結果画面。住民とフェス来場者それぞれの避難完了時間が表示される
国勢調査などから「人の動き」をモデル化
シミュレーションを支えているのが、富士通の「ソーシャルデジタルツイン」技術だ。建物や交通機関といった都市環境に加え、人や社会の振る舞いもデジタル空間上に再現する。
中核となる「行動選択モデル」は、国勢調査などの公開データや行動統計、アンケート結果を学習し、属性ごとに「この状況ではどう動きやすいか」を確率モデルとして再現するものという。施策を実世界で試す前にデジタル空間上で繰り返し検証し、効果があったものだけを実世界に適用する手法で、富士通は「デジタルリハーサル」と呼んでいる。
精度についてブースの担当者に聞くと、たとえば公共交通分野への適用では、シミュレーション結果を実際のバス乗車実績と突き合わせ、街全体の人流としては実態に近い動きを確認できていると話す。現在は交通空白の解消に向けたシミュレーション支援など、自治体との実証実験も進めている段階だとしている。
自分がゴジラになって街を壊す
隣接するコーナーでは、来場者の動きをゴジラのCGに反映する体験「Godzilla in Motion」も実施している。来場者が15秒間自由に動くと、その動きを反映したCGのゴジラがビルを破壊する映像をその場で生成する。
来場者の動きを反映してCGのゴジラが街を破壊する「Godzilla in Motion」の体験スペース
使っているのは、マーカーを付けずにカメラだけで人の骨格と動きを認識する富士通のAI技術「Human Motion Analytics」で、体操競技の採点支援などでも実用が進んでいるという。
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