[ITmedia Mobile] ソフトバンク、上空3000mからのエリア化に“成功” 「途切れない通信」の社会実装へ
ソフトバンクは大規模災害時の通信途絶に対応するため、大型無操縦者航空機に災害対応用の通信装置を収容したポッドを搭載し、上空からの通信提供実験に成功した。上空3000mから電波を発射して地上に直径5km以上の通信エリアを構築し、災害時における応急エリアカバレッジソリューションの社会実装へ向けた大きな一歩を印した。
近年、日本各地を襲う巨大地震や超大型台風などの自然災害は、地上の通信インフラに深刻な被害を与えている。基地局の倒壊や伝送路の断線によって広範囲な通信障害が発生し、避難情報の伝達に支障が出る事例が相次ぐ。ソフトバンクは有事に際して迅速に臨時の通信エリアを構築し、被災地や救援機関へ通信手段を届ける取り組みを推進している。
地上通信網が途絶した局面において、上空から電波を照射して臨時エリアを再現する空飛ぶ基地局の構想は有効な打開策となる。ソフトバンクは2026年3月に高知県黒潮町の協力を得て、ヘリコプターに「DRUポッド」(Disaster Relief Unit Pod)と呼ばれる通信装置収容ポッドを搭載する検証を実施した。
この成果を踏まえ、同社は長時間かつ広範囲な飛行が可能な大型無操縦者航空機(Remotely Piloted Aircraft System、以下「大型RPAS」)を活用した社会実装を開始した。
ソフトバンクが国内で設計・製造したDRUポッドを大型RPASに搭載し上空3000mから地上へ通信エリアを構築する実証実験(画像:ニュースリリース冒頭抜粋)
日本初となる大型RPAS向けDRUポッドの製造と認証プロセス
大型RPASを災害対応の通信プラットフォームとして運用するためには、機体に搭載する通信ポッドの安全性と信頼性を高めなければならない。ソフトバンクは米ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(以下GA-ASI)の設計データおよび品質要件に基づき、通信機器やアンテナを収容するDRUポッドを国内で設計・製造した。
製造過程では使用材料や製造工程に関する適合性確認を実施し、所定要件を満たす製品だと確認した。続く機体統合の段階では、熱環境や電磁適合性の試験をクリアした上でDRUポッドを装着し、地上および上空で安全性確認試験を重ねた。この試験により、ポッド装着時における機体の操縦性や安定性が安全基準内にあると証明した。
さらにGA-ASIの審査を経て、DRUポッド搭載機に対する耐空性承認を取得した。国内で設計および製造を手掛けた大型RPAS向けのDRUポッドを用いて実証実験を完遂し、上空からの通信提供に成功したのは日本で初めてだ。本プロセスを通じて、独自開発の通信装置を大型無操縦者航空機へ安全に搭載するための技術や認証に関する貴重な知見を獲得した。
GA-ASI製の大型RPASのシーガーディアンにDRUポッドを統合し耐空性承認を取得した構成
上空3000mからの電波照射 実証実験が証明した通信性能
今回の実証実験は総務省と海上保安庁による省庁間協力のもと、海上保安庁が所有するGA-ASI製の大型RPAS「シーガーディアン(MQ-9B)」を使用して実施した。本取り組みは総務省が情報通信研究開発機構(NICT)に造成した「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」の委託研究課題「災害時の応急エリアカバレッジのための無線通信技術の研究開発」の一環として推進している。
高知県黒潮町沿岸の上空において、シーガーディアン(MQ-9B)は高度3000mを保持しながら旋回飛行を行った。地上にはLTE基地局と周波数変換レピーターで構成するゲートウェイを配置した。地上の基地局から出力された2.1GHz帯の電波を周波数変換レピーターで3.3GHz帯のフィーダリンク電波へ変換して機体へ送信し、DRUポッド内部で再び2.1GHz帯のサービスリンクへ再変換して地上の携帯端末へ照射した。
飛行中の機体動揺から通信品質を守るカギとなったのが、DRUポッド内部のアンテナへ組み込んだジンバル技術だ。姿勢変化が発生しても、リアルタイムでアンテナの指向性を補正するジンバル機構が機能し、地上のゲートウェイや通信エリアを正確に捉え続けた。
上空3000mからの電波照射により、地上に直径5km以上の臨時通信エリアを構築した。機体の旋回飛行中も安定した電波環境を継続的に提供した。
通信品質評価では、屋外で下り最大20Mbps、上り最大5Mbps(帯域幅5MHz)を記録した。この速度は安否確認だけでなく、自治体や救助機関が現場から動画や画像を伝送し、被害状況をリアルタイムで共有する用途に耐えうる性能だ。
大型無操縦者航空機は従来のヘリコプターやドローンと比較して長時間の滞空能力と広範な航続距離を誇る。長時間滞空可能な通信エリア構築は、孤立集落の発生や大規模停電時にも、途切れない通信インフラを迅速に供給する役割を果たす。
空からの最先端通信ソリューションを速やかに届けていく
ソフトバンクは今回のデータやノウハウを活用し、DRUポッドの軽量化や通信効率の高度化、ならびに運用方法の構築を加速させる。関係省庁や自治体、機体メーカーとの連携を軸としながら、早期の社会実装を目指して研究開発を継続する。
大型無操縦者航空機を活用した上空からの応急通信プラットフォームは、日本の災害対策における通信レジリエンスを引き上げる技術的成果だ。ソフトバンクは自然災害の脅威から人々の暮らしを守るため、空からの最先端通信ソリューションを速やかに届けていく。
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