[ITmedia News] ローソン・郵便局が「ドローン基地」に 回線はStarlinkで ドローンインフラを急ピッチで作るKDDI
著者
梅林日奈子
[ITmedia]
郵便局の屋上やローソンの敷地が、ドローンの基地になる――KDDIスマートドローン(東京都千代田区)は10月28日、KDDIのオフィスビルで行われたビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2026」で、ドローンの全国展開に向けた取り組みを紹介した。物流や地域の見守り、インフラ点検、災害対応などを人に代わって担う「空のAI労働力」の実現を目指す。
「AI労働力」はKDDIが中期経営戦略で掲げる考え方で、人手不足が深刻化する中、AIが人に代わって働くことを指す。同社の博野雅文社長は「ドローン事業はそれを最も分かりやすい形で体現している」と語る。
例えば、老朽化したインフラの点検や災害時の被害状況の確認だ。特に山間部では、長い山道を移動せずに荷物を届けられるため、物流分野での活躍も見込まれる。実際、25年にはKDDIなどが埼玉県秩父市で、ローソン店舗から山間部の集落へ弁当などを配送する実証を行った。KDDIはこうした用途に使えるドローンを全国に配備し、複数の企業や自治体が共同利用できる社会インフラとして広げる考えだ。
その構想を後押しするのが通信技術の進化だ。同社は26年5月、米SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」とドローンの直接通信による飛行実証に成功。電波が届かない圏外でも遠隔運航できることを確認した。27年中のサービス開始を目指している。
一方、ドローンを社会インフラとして普及させるには、通信技術だけでは足りない。各地にドローンを常駐させ、離着陸や充電を行う「ドローンポート」の設置場所を確保する必要がある。KDDIが目を付けたのが、全国にある郵便局やコンビニエンスストア「ローソン」のネットワークだった。
なぜ郵便局とローソン? 拠点確保だけではないメリット
KDDIスマートドローンは現在、全国33拠点にドローンポートを設置している。26年6月には、大阪府池田市のローソン店舗の敷地内にローソン店舗として初めて常設した。同月には日本郵便とも基本合意書を締結し、全国約2万4000局の郵便局ネットワークを活用する方針を打ち出した。
日本郵便との連携により、KDDIは郵便局の屋上などをドローンポートの設置場所として活用できるようになる。さらに、日本郵便側も、KDDIの通信技術や遠隔運航のノウハウを生かし、ドローン物流の拡大を見込める。特に山間部では、空から最短距離の配送ができるようになるほか、Starlinkの活用により圏外の地域でも遠隔運航が可能になると見ている。
両社は9月、石川県の珠洲郵便局の屋上にドローンポートを設置。近隣の消防署にも設けた拠点と合わせ、複数のドローンを遠隔から同時に運航する実証を行った。
博野社長は当初、郵便局への設置がどのように地域貢献につながるのか、疑問もあったという。しかし、現地の関係者と話す中で、郵便物流だけでなく、災害時の道路状況の確認などにも役立つ使い道が見えてきたと振り返った。
「ヘリで1時間」を「ドローンで10分」に
ドローンを各地に常設するメリットは物流だけではない。災害報道への活用に期待を寄せるのが、テレビ朝日だ。同社の柳井隆史ニュースセンター長によると、従来のヘリコプターによる取材では、災害現場への到着まで約1時間を要していたが、ドローンが現地に常設されていれば、約10分で状況を捉えられるという。
テレビ朝日とKDDI、KDDIスマートドローンの3社は10月7日、能登半島で大規模な地震を想定した実証を実施。地震の発生から約15分でドローンを離陸させ、東京のオペレーター2人で4機を同時運航した。取得した映像はIP回線でテレビ朝日本社にリアルタイムで送り、放送設備に取り込めることを確認した。
柳井氏は、SNSなどで橋の流失情報が寄せられた場合にも、ドローンで現地を確認できると説明。自治体や消防と情報を共有することで、救助活動の優先順位を判断する材料にもなると期待する。
残る課題はコスト ドローン物流の採算性は?
一方、ドローンの普及に向けて依然として残るのがコストの課題だ。日本郵便の五味儀裕執行役員によると、機体の開発費や運用費に加え、飛行ルートを事前に設定する作業にも時間と費用がかかるという。
ただ、1回当たりの飛行コストは下がってきている。五味氏は、航路の定期便化や飛行回数の増加に加え、1人で複数の機体を遠隔運航する仕組みが実現すれば、さらなる省人化につながると説明した。
郵便局やローソンで設置場所を確保し、Starlinkで通信エリアを広げる。ドローンの全国展開に向けた基盤の整備が進む一方、採算性をどう確保するかが、今後の普及を左右しそうだ。
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