[ITmedia News] 涙に叱責に持論……GMO熊谷代表の謝罪会見、どこがまずかった? 危機管理広報のプロが分析
著者
長沼史宏
[ITmedia]
11月2日、GMOインターネットグループの熊谷正寿代表が、グループ企業で発生した不正アクセス・情報漏えい問題について記者会見を開きました。
企業へのサイバー攻撃や情報漏えいが相次ぐ中、深刻な問題が発生しても記者会見を開かず、Webサイトでの情報開示などにとどめる企業も少なくありません。そうした中で、熊谷代表をはじめ複数の経営幹部が登壇し、約3時間半にわたって記者の質問を受けたことは、率直に評価したいと思います。
また、同社は問題発覚後も継続的に情報開示を行ってきました。熊谷代表が会見冒頭で、不正アクセスによる被害だけでなく、自身のSNSでの不適切な発信についても、言い訳を挟まず潔く謝罪したことも適切な対応だったと思います。
一方で、今回の会見には、危機管理広報の観点から惜しまれる点も少なくありません。
最も残念だったのは、熊谷代表が自身の持論を多く展開し、独特な言動や振る舞いを見せたことで、途中から「何のために開いた会見なのか」という目的が見えにくくなってしまったことです。経営理念やインターネット産業への思いを熱く語り、時には涙を見せる。独特な表現で自らの覚悟を示し、会見中に社員を注意する。さらに、自ら記者を指名し、質疑応答の進行まで担う場面もありました。
結果として、本来説明すべき情報漏えい問題とは別に、経営トップ自身の独特な言動やユニークな振る舞いが新たな報道材料になってしまいました。今回の会見から、企業は何を学ぶべきなのか。危機管理広報の観点から検証してみたいと思います。
謝罪会見で、新たな報道材料を作ってはいけない
謝罪会見では、ネガティブな報道を助長しないためにも、不用意な発言や振る舞いによって新たな報道材料を生み出さないことが重要です。謝罪会見の目的は、被害者への謝罪、事実関係の説明、被害回復に向けた対応、再発防止策、そして経営責任について、粛々と説明責任を果たすことです。その際、経営トップ自身が必要以上に目立つ必要はありません。
ところが今回の会見では、熊谷代表の独特な言葉や感情的な場面が、こうした説明とは別の意味で注目を集めました。
例えば、「命の砂時計」という表現です。
熊谷代表は、自身の人生をインターネット産業にささげてきたことを説明する際、この言葉を繰り返し使っていました。また、悪意に汚染されたインターネットを放置したまま死ぬわけにはいかないという趣旨の、印象に残る発言もありました。経営者自身の人生観や使命感を表す言葉としては興味深いものです。しかし、謝罪会見という場で、本当にこうした表現は必要だったのでしょうか。
過去の謝罪会見を振り返ると、失敗した経営トップには、ある共通点があるように感じています。それは、本来の謝罪や説明とは別に、記者が思わず見出しに使いたくなるような、印象的な言葉を自ら提供してしまうことです。
例えば、雪印乳業の石川哲郎社長による「私は寝てないんだ」、ビッグモーターの兼重宏行社長による「ゴルフを愛する人への冒涜(ぼうとく)」、旧ジャニーズ事務所の東山紀之新社長による「人類史上最も愚かな事件」などです。発言の意図や背景、発言そのものへの評価はそれぞれ異なりますが、いずれも会見を象徴する言葉として強い印象を残しました。
謝罪会見で発せられた独特な言葉は、発言者の意図を離れて独り歩きし、見出しに使われたり、SNSで繰り返し共有されたりすることがあります。その結果、本来の問題とは別の批判や報道が増え、事態を落ち着かせるどころか、かえって炎上の燃料を追加してしまうことにもなりかねません。
テレビやネットニュースにとって、こうした印象的な発言や振る舞いは、格好の「撮れ高」になってしまいます。しかし、謝罪会見を開く企業にとっては、決して歓迎すべきものではありません。皮肉なことですが、過去の事例を振り返ると、謝罪会見で失敗した経営者ほど、後世に残る「名言」を生み出してしまう傾向があります。
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