[ITmedia エンタープライズ] 「やっと前に進める」 VMwareから独立して2年、Omnissa竹下社長が語る守りから攻めへの転換
Omnissaは2026年9月29~30日(現地時間)、米国で年次イベント「Omnissa ONE 2026」を開催した。イベントでは、新CEOのアミット・シン(Amit Singh)氏が「エージェント型エンドポイント」構想を掲げ、AIガバナンス製品「Omnissa Elara」などを発表した。
現地でインタビューに応じたOmnissa Japanの竹下雄輔氏(代表執行役 社長)は、今回のイベントを「Omnissaになって一番エキサイティングなイベント」と評価する。独立後の期間の大半は既存顧客とのビジネスを守る時期だったが、ここにきて新しいフェーズに入ったという。日本市場の課題として挙げたのが、ワークスペースの縦割りだ。
Omnissaは2024年7月、VMwareのEnd-User Computing(EUC)事業が、VMwareを買収したBroadcomの下から独立する形で発足した。竹下氏によると、独立直後のフォーカスは「会社を安定させ、既存のお客さまとパートナーとのビジネスを守る」ことにあったという。
当時、顧客やパートナーの間には懐疑的な見方があった。「当社はBroadcomとは一切取引しない方針のため、Omnissaとも取引は難しいかもしれない」といった声だ。VDI(仮想デスクトップ基盤)製品の「Horizon」をはじめ、Omnissa製品はVMwareの仮想化基盤であるvSphereの上で動くことが前提だったため、資本が別になっても「まだBroadcomの影響があるのでは」と懐疑的に見られたという。
同社は、こうした見方を示す顧客やパートナーと1社ずつ対話を重ね、取引の継続を説得することに注力してきた。それが2025年まで続いたという。
そのような流れが変わるきっかけとなったのは、Omnissaが進めた、Broadcomの基盤に依存しない戦略だ。2025年末にHorizonでNutanixのハイパーバイザー「AHV」を正式にサポートし、今回のイベントではHorizonでRed Hat OpenShift Virtualizationへの正式対応を発表した。2026年後半には「Hyper-V」のβサポートにも取り組むと竹下氏は話す。
「積極的にBroadcomからプラットフォームをマルチ化していくことに取り組みました」(竹下氏)。その結果、独立性が真実味を持って受け止められ始めたと振り返る。ビジネスの話を前向きにできるようになったのは、この1年ほどだという。
竹下氏は、日本でのマルチプラットフォーム化の動きとして、SB C&S経由で鹿児島県の自治体がNutanixでHorizonを稼働させる形で導入した事例を紹介した。また、エンタープライズでは静岡銀行が導入しており、Omnissa Japanにとって国内の民間企業では「初のNutanix案件」だという。日本は導入決定までの検討期間が長い傾向にあるため、まだ数は少ないが「事例が徐々に増えてきている段階だ」と説明する。
成長を支えるUEM
日本は、Omnissaにとって単独の国としては米国に次ぐ世界2位の売り上げ規模だという。2026年も2025年に比べて「確実に成長する路線」と竹下氏は言う。
その成長はどこから来ているのか。竹下氏によると、売り上げの比重が最も大きいのは、VMware時代から続くVDIなどのプラットフォーム系ソリューションだ。一方、この2年ほど順調に伸びているのが、「Workspace ONE」を中心とするUEM(統合エンドポイント管理)だという。JR東日本では駅員や車掌が使うタブレットを管理しており、セブン-イレブンでは全国のPOSレジのデータ配信やアプリケーションの更新を管理しているという。
VDIには、ゼロトラストなどのネットワーク対策と組み合わせた物理PCの配布に置き換える流れが広がるという逆風もあるが、メモリ価格の高騰などで物理PCの調達が不安定になる中、既存のVDIを更新して使い続ける顧客も出てきているという。竹下氏は「VDIを見直す必要性は十分ある」と見ており、NVIDIAのGPUなどを使い、VDIでAIを動かせる基盤が整ってきたこともその根拠に挙げる。
日本の課題はワークスペースの「縦割り」――AIでさらに深刻に
Omnissaが目指すのは、AIを活用して、人が働く環境にある全てのデバイスを自律的に管理する「Autonomous Workspace」だ。「仮想デスクトップに加え、スマートフォン、タブレット、配達員が使うQRコードの読み取り端末のような専門端末、さらにはフィジカルAIのように人を支援するデバイスまで、全てを会社の資産として安全に使える状態に置く」と竹下氏は考え方を説明する。
一方で、日本にはその前提を阻む壁がある、と竹下氏は指摘する。日本では、仮想デスクトップ、デバイス管理(MDM/UEM)、運用管理、AIエージェントがそれぞれ別の領域として扱われる「縦割り」型の組織が多く、働く環境の全体を統括する視点が乏しい。この点が海外とは異なるという。
縦割りは商談の場にも表れる。日本で窓口に立つのはVDIの担当者であることが多く、デバイス管理の領域にまでは関与できない。Omnissaの構想は担当領域をまたぐため、デバイス管理を担う部署とも別途話をする必要があった。
そこで同社はCIO(最高情報責任者)やCISO(最高情報セキュリティ責任者)など上位の層にできるだけ直接働きかけ、ワークスペースを一体で捉える必要性を伝えているという。海外で成果を出した顧客の事例を紹介し、海外の顧客と日本の顧客をつないで「お客さま同士でお話ししていただく」ことも自らの役割と位置付ける。
竹下氏は、このような縦割りの問題は、AIエージェントが業務に入り込むほど大きくなると見る。「ワークスペースの中の統制が取れなくなる」と竹下氏は警告する。
今回発表された「Omnissa Elara」は、この課題に応える製品と位置付けられる。ElaraはシャドーAIの検出などを担うAIガバナンス製品で、現在はβ提供の段階にある。日本ではまず、「統制が難しいエンドポイントの数が多い、上位のエンタープライズ」がターゲットとなる。「部門ごとにAIの活用が進む大企業ほど、実態把握がどんどん難しくなっている」と竹下氏。中でもシャドーAI対策は日本企業でも課題になっており、Elaraへの潜在ニーズは高いと見る。
Elaraの日本向けの具体的なロードマップは、2026年11月に東京で開催するイベントに向けて詰めていく考えだ。
体制強化、パートナー連携に取り組む
Omnissaとして再スタートを切って2年、エージェント型エンドポイントの時代に向けたElaraの投入とともに、Omnissa Japanも新たなフェーズに入ったと竹下氏は位置付ける。
今後の取り組みの1つが、認知度の向上と体制の強化だ。体制面では、日本法人の人員はサポートを含めて現在約100人規模だ。営業とSE部隊はまだ小規模で、本社と調整しながら人員を増やし、パートナー側の担当部署も広げていく考えだ。パートナーは大小合わせて約200社で、VMware時代からのディストリビューター3社とも関係を維持している。「日本では、パートナーとの連携や、パートナーのソリューションへの当社製品の組み込みが、まだ十分にできていない。そこに大きな機会がある」と語る。
製品面では、独立後、各製品ラインに大きな更新が入るのは今回が初めてで、日本の顧客が求める「高品質で安定したソリューション」として提供していくことを課題と位置付ける。
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