[ITmedia ビジネスオンライン] なぜ上場を捨ててまでAIに賭けたのか? カオナビが非公開化して進める「脱・勘と経験の人事」
高額なタレントマネジメントシステムを導入し、社員の人事評価とスキルシートをクラウドに並べた。だが、いざ役員会や配属会議が始まると「あいつはガッツがある」「あの部署の空気に合わない」というように“勘と経験と社内政治”で人事案が決まっていく──。
日本の大企業が幾度となく繰り返してきたこのやりとりに、タレントマネジメント市場を切り拓いてきたカオナビ(東京・港区)が、自ら終止符を打とうとしている。同社は「株式の非公開化」(TOB)という極めて重い経営決断を下した。
目指すのは、データを眺めるだけの管理ツールからの完全脱却だ。社内に眠る人材データとAIを融合させ、経営陣から現場に至るまでが自ら考え、自信を持って次の行動を決定できる世界の実現を掲げる。
なぜ上場企業という看板を捨ててまで、5年間の集中投資に打って出たのか。AI時代に、経営者に残された「真の仕事」とは何か。代表取締役社長CEOの佐藤寛之氏に、背水の陣で挑む組織変革を聞いた。
佐藤 寛之(さとう・ひろゆき) カオナビ代表取締役社長 CEO。リンクアンドモチベーションにて、大手企業向け組織変革コンサルティングに従事。その後、シンプレクスにて人材開発の責任者として、急成長ベンチャーでの人事業務に従事する。2012年にカオナビを共同創業。2022年の代表取締役社長 Co-CEO就任を経て、2025年より代表取締役社長 CEOを務める(撮影・篠原成己)
「勘と経験の人事」を終わらせる AIが提示する“選択肢”と人間の仕事
カオナビは2025年10月に「タレントインテリジェンス」という構想を打ち出した。これはツールにAIを組み合わせることで、人事部門だけでなく、経営者やマネジャー、現場の社員までが人材データを公正な判断に生かせるようにする構想だ。4500社以上が使うサービスを、人事システムから意思決定を支えるツールへと変えようとしている。
そのための投資期間として、カオナビは株式の非公開化を選んだ。この先5年間をAIと人材データを軸に事業を広げる期間と考えている。
タレントマネジメントという言葉が日本で広がってから、すでに10年以上が経つ。企業には社員の評価や異動、スキルなどのデータがたまってきた。一方で、そのデータを人材育成やキャリア形成にどう生かすかは、企業ごとの課題として残る。可視化したデータから何を読み取るかは、結局のところ利用者次第だ。カオナビは、そこにAIを組み込もうとしている。
例えば、ある人材をどの部署に配置すればいいのか。また、欠員や新設ポストに対してどのような要件で採用を行うべきか。過去のデータをAIに分析させ、複数の可能性を示す。ただし、AIに最後の判断まで任せるわけではない。
「最後は人間が決めないといけません。ただ、これまで人間の直感に頼ってきた意思決定を、膨大なデータとAI活用によって再現性高く支えられるようになります」(佐藤氏)
AIに求めるのは、正解を出すことではない。人間だけでは見つけにくかった選択肢を増やし、判断材料を提示することだと佐藤氏は強調する。
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