科学技術政策の司令塔が実践するAI徹底活用術〈後編〉…暗黙知を次の世代に引き継ぐために「AI番頭」を育てるべきだ | ライフ | 東洋経済オンライン

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前編では、経営者が育てるべきは「AI秘書」や「AI分身」ではなく「AI番頭」だと述べた。では、具体的にどのように育てるべきか。後編では、筆者の試論を紹介したい。
調整をするためには「翻訳」が必要
一つの具体例から始めたい。
今から1年半から2年ほど前、筆者は研究セキュリティをめぐる政策形成に関わった。政府は重要技術の流出を防ぎたい。一方、研究者にとっては「成果の公開」と「国際交流」こそが科学の根本的な価値である。双方が自分たちの言葉と前提で語るため、議論は平行線になりがちだった。
しかし現場の声を聞くと、違う構図が見えてきた。機微な分野の研究者には管理の必要性をよく理解している人も多い。強い不安を抱いていたのは、むしろ制限の必要性が高くない研究に携わる人々だった。「自分たちまで一律に縛られるのではないか」と恐れていたのである。
筆者は政策側にこの実情を伝え、研究者側には「研究内容とリスクに応じて分けて考える余地がある」と説明した。成果の公開と研究参加者の管理という、混同されがちな2つの論点も切り分けた。
必要だったのは、双方の中間を取ることではない。「どの研究に、どの制限が必要か」という認識のズレを見抜き、問題を捉え直すことだった。筆者はこれを「翻訳」と呼んでいる。
企業でも、知的財産やコア技術の流出を防ぎたい管理部門と、外部連携やオープンイノベーションを進めたい現場とで議論がすれ違うことがある。そのため、同様の「翻訳」が必要となる。
この翻訳を支えたのは、文書にならない判断の積み重ねだった。「誰に、いつ、どんな順序で話すか」「相手が言いにくそうにしているとき、何を尋ね、何を急がないか」——。当時、筆者はまだAIを使っていなかったため、制度や提言は残っても、こうした判断の過程を十分に記録することはできなかった。
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はしもと かずひとKazuhito Hashimoto
1955年生まれ。専門は物理化学。理学博士(1984年)。東京大学大学院工学系研究科教授、同大学先端科学技術研究センター所長、物質・材料機構理事長を経て、2022年4月より科学技術振興機構(JST)理事長。この間、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)議員、内閣官房科学技術顧問などを歴任。
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