科学技術政策の司令塔が実践するAI徹底活用術〈前編〉…「頭の中」を組織の財産にするためにはAIとの対話が有効だ | ライフ | 東洋経済オンライン

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AIを活用することで生産効率が飛躍的に上がるーー。日本の科学技術政策を牽引する司令塔役である科学技術振興機構(JST)の橋本和仁理事長。同氏は、「音声入力」と「生成AI」による知的生産革命のど真ん中にいる。突然AIに目覚めた経験を綴った前回の手記に続き、組織を率いるリーダーであれば、その継承のためにぜひとも実践してほしい「より深いAI活用術」についてまとめてもらった。
「規則に従った判断」で犯した過ち
外部から落下傘のように研究機関の長に就いた際、筆者は大きな過ちを犯した。
大学の研究者から組織の運営や科学技術政策に関わる立場へと役割が大きく変わり、組織マネジメントの現実と直面していた頃のことだ。筆者はその組織の内情、とりわけ人間関係をほとんど知らなかった。
ある研究グループで、定年を過ぎた研究者A氏が実質的にグループを率いていた。形式上のリーダーは、その人のかつての部下であるB氏である。
管理部門のある幹部からは、「この状態は規則に照らして適切ではない」との指摘が繰り返された。定年後の研究者が実質的な権限を握ることは規則上認められていないことや、技術を次の世代に引き継いでいく必要がある、といった説明だった。その説明は明快で、筋が通っているように聞こえた。
一方、渦中のA氏は口下手で多くを語らなかった。B氏にも話を聞いたが、筆者は十分に事情をつかめないままその管理部門幹部の説明を鵜呑みにし、規則に従う形でA氏を実質的な権限から外した。
その後、グループの研究力は大きく落ちた。A氏は組織の重要な成果を支えてきた実力者であり、長年培った知識や経験がグループの力を支えていたからだ。弁の立つ管理部門の説明だけが筆者の耳に届き、口下手な実力者の価値を見誤ってしまったのである。十分に確かめないまま判断を下してしまったのは、組織の長である筆者自身の失敗である。
なぜ前任者たちが規則の例外を認めてきたのか。その理由を、筆者は引き継いでいなかった。もし判断の背景を知っていれば、別の問いを立て、違う判断ができたかもしれない。最終責任は筆者にあるのだが、同じような過ちはどの組織でも起こりうるのではないだろうか。
東京商工リサーチの2025年の調査では、代表者が70代の企業の約3社に1社で、後継者がまだ決まっていないという。経営の承継は、多くの企業にとって大きな課題である。
経営者が組織を去るとき、事業計画も決裁書も会議録も残る。だが、「なぜあの人物を信じたのか」「なぜ規則の例外を認めたのか」「なぜ採算の見えない技術に投資し、別の有望な提案を退けたのか」といった判断の真の理由は、ほとんど文書として残らない。
本当に大事な理由ほど、書き残しにくいためだ。ある人物が組織を支えるうえで欠かせない理由や、規則の例外を認めるほどの事情は、人事記録や稟議書には書きづらい。周囲の人も本人も言葉にしていないことすらある。正式な文書の外にあるからこそ、後任には引き継がれることがないのだ。
この古くからの難題を解決することにつながるのが、生成AIの活用である。
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はしもと かずひとKazuhito Hashimoto
1955年生まれ。専門は物理化学。理学博士(1984年)。東京大学大学院工学系研究科教授、同大学先端科学技術研究センター所長、物質・材料機構理事長を経て、2022年4月より科学技術振興機構(JST)理事長。この間、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)議員、内閣官房科学技術顧問などを歴任。
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