生の鶏肉による食中毒を「青色光」で減らせる可能性、抗生物質に耐性を持つ菌にも効果あり
カンピロバクターは細菌性の食中毒の主な原因の1つで、感染すると腹痛や発熱、下痢などが生じ、症状は通常1週間ほど続きます。
レディング大学の微生物学講師であるエイダン・テイラー氏らの研究チームが検証したのは、波長405nmの青紫色の光を使う「光線力学的不活化(VB-PDI)」という手法です。この手法では、菌の細胞内にもともと存在する分子が光に反応して活性酸素を発生させ、活性酸素が細胞を傷つけて菌を死滅させます。薬品を加えたり装置を食品に触れさせたりする必要がないため、研究チームは鶏肉が消費者の手に届く前に加工工場で表面を殺菌する方法として利用できると期待しているとのこと。
研究チームは過去の研究で、実験で基準として使われる「標準株」への殺菌効果を確かめていましたが、今回は鶏や七面鳥、養鶏場から採取された菌にも同じ効果があるかを調べました。使用したのはAPHAが2008年から2024年にかけて監視調査で集めた3種64株のカンピロバクターです。菌を含む液体に強さの異なる光を20分間当てた後、培養で増殖できる菌の数を測定し、光を当てなかった場合の菌数と比較しました。
その結果、光の照射量が多いほど生き残る菌の数は減少しました。最大の照射量である1平方cm当たり36ジュールを照射したところ、64株すべてで光を当てなかった場合と比べて菌数が少なくとも99%減りました。菌の種類による殺菌効果の差も認められなかったとのこと。
以下のグラフは横軸が1平方cm当たりの光の照射量で、縦軸は光を当てなかった場合と比べて菌数がどれだけ減ったかを表しています。縦軸の「2」は菌数が100分の1(99%減)に、「3」は1000分の1(99.9%減)になったことを意味します。緑の点は菌株ごとの結果、黒い横線は64株の結果の中央値、赤丸は比較に用いた標準株の結果です。また、赤い点線は生き残った菌が少なすぎてこの方法では菌数を測定できなくなる限界の目安を表しています。
続いて、研究チームは抗生物質に耐性のある菌とない菌で青色光の殺菌効果を比べました。シプロフロキサシン・テトラサイクリン・エルタペネムのいずれの抗生物質についても、耐性の有無による殺菌効果の差は確認されませんでした。また、3系統以上の抗生物質に耐性を持つ多剤耐性菌でも、青色光の殺菌効果が確認されています。
以下のグラフはシプロフロキサシンに耐性のある菌とない菌で青色光の殺菌効果を比べたものです。灰色の箱は耐性のない菌の結果、薄い黄色の箱は耐性のある菌の結果を表しています。横軸は1平方cm当たりの光の照射量、縦軸は光を当てなかった場合と比べて菌数がどれだけ減ったかを表しています。
研究チームは、光を繰り返し当てるうちに菌が青色光への耐性を獲得し、光を当てても死ににくくなるかどうかも調べました。カンピロバクター・ジェジュニ1株を使用し、光を当てた後に生き残った菌を培養して増やし、再び光を当てる操作を15回繰り返したところ、青色光への耐性が高まった兆候は確認されなかったとのこと。ただし、研究チームは耐性が生じる可能性を完全に否定するには、さらに検証する必要があると述べています。
研究チームは、鶏肉に付着したカンピロバクターの数を100分の1に減らせれば、皮1グラム当たりの菌数が1000個を超える鶏肉の割合を10%から2%に下げられると試算しています。2%という割合は、過去の市販鶏肉の調査データを基に、菌数が100分の1になると仮定して計算したものです。青色光の照射に使う低出力のLEDは寿命が長く維持費も安く済むため、研究チームは費用を抑えて青色光による殺菌を導入できると期待しています。
今回の実験は液体中の菌を対象にしたものであり、研究チームによると、鶏肉の皮に付いた菌は液体中の菌と比べて光を当てても生き残りやすい可能性があるとのこと。また、菌が表面に付着して作る膜状の集まり「バイオフィルム」が光を遮ることも考えられるそうです。研究チームは実用化に向け、もともと菌が付着している鶏肉に実際の加工現場で光を当て、殺菌効果を確かめる試験が必要だと述べています。
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