宇宙からスペースシャトルを着陸させる方法
スペースシャトルはかつてアメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙開発事業に使用していた有人宇宙船であり、軌道船(オービター)と呼ばれる本体部分が再使用可能であるという特徴がありました。軌道に到達したスペースシャトルは主推進エンジンの燃料を既に使い果たしている状態であり、宇宙からの帰還時には地球の重力と滑空時に主翼から発生する揚力を巧みにコントロールする必要がありました。記事作成時点から10年前に公開されたBret氏のYouTube動画で「どうやってスペースシャトルを着陸させるのか」を解説しています。
宇宙から、スペースシャトルを着陸させましょう - YouTube

シャトルの最終目標はケネディ宇宙センターの滑走路への着陸です。しかしシャトルは宇宙空間では時速約1万7000マイル(約2万7359km/h)という超高速で飛行しており、単純な方向転換は不可能です。
したがって地球の自転を利用して着陸地点が近づくのを待つ方針が取られます。
また、着陸する滑走路の長さは1万5000フィート(4572m)であり、安全に着陸可能な速度である時速約225マイル(約362km/h)まで減速する必要があります。
しかし、帰還時にシャトルには燃料が残っておらず強力な主推進エンジンは使用できません。
唯一利用できるのは、主推進エンジンの1%以下の出力しかない軌道制御エンジンのみです。
そこで、大気圏突入時の空気抵抗を利用して減速します。
「エントリー(再突入)」フェーズの開始時、軌道制御エンジンによる軌道離脱噴射を約3分間行い、大気圏への降下を開始します。
降下を開始すると機体は1650℃の高温にさらされます。
高温への対策として、機首と翼の前縁は 強化カーボン・カーボン・パネルによって耐熱保護されています。
また、胴体は2万枚のシリカタイルで耐熱保護されています。
さらに、進行方向に対して機体を40度の迎え角にして大気圏に突入することにより、機体を溶融から守ります。
大気圏突入後、シャトルの翼が揚力を発生させるため、意図せず高度を上げてしまう「スキップ現象」を引き起こす可能性があります。
スキップ現象を防ぎ降下を制御するために、シャトルは左右どちらかに機体を傾ける「バンク」という操作を行います。バンク角を深くすると揚力が下向きに働き、降下が速くなるため濃密な空気で減速します。
逆にバンク角を浅くすると、降下速度が遅くなるため薄い空気にとどまりやすくなります。
シャトルが目標地点に到達できるように速度と距離を調整するという観点から、バンク角の操作は一種のエネルギー管理となります。
もし着陸地点を通り過ぎそうな場合はバンク角を深くして減速します。
逆に到達が困難な場合はバンク角を浅くして減速を抑えます。
バンクにより軌道から逸れる場合もあります。
軌道が逸れた場合は逆向きにロールすれば修正可能です。
時速8000マイル(約1万2875km/h)を下回るとシャトルは機首を下げ始め、迎え角を減らしていきます。
時速1700マイル(約2736km/h)になるとフェーズが「ターミナル領域エネルギー管理(TAEM)」に切り替わり、シャトルは「エンジンを持たない飛行機」として操縦されます。この段階ではピッチ制御で降下率を、バンク制御で旋回を、そして尾翼のスポイラー(スピードブレーキ)で対気速度を制御します。
自動制御システムは搭載されていますが、最終進入段階では船長が手動制御(Control Stick Steering:CSS)に切り替えます。
TAEMは滑走路のセンターラインを通過し、ヘディング・アライメント・コーンと呼ばれる仮想の領域に沿って周回して滑走路の直線上の「グライドスロープ」に乗ります。
通常の航空機は約3度のグライドスロープで降下します。
しかしながら、シャトルは「空飛ぶコンクリートブロック」と比喩される独特な形状のため、より急な20度のグライドスロープと時速345マイル(約555km/h)、分速1万フィート(約3000m/分)という高速な降下率が設定されています。
最終進入段階のシャトルの降下速度は自由落下するスカイダイバーの終端速度に匹敵します。
高度2000フィート(約610m)で「プリフレア」と呼ばれる機首上げ操作を行い、高速降下によるエネルギーを減衰させます。
ランディングギアは空気抵抗を考慮して高度300フィート(約91m)で下ろされます。
そして高度約26フィート(約8m)・時速225マイル(約362km/h)でタッチダウンし、ドラッグシュートを射出して減速します。
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