高市首相、保守層離反を警戒 異例の遥拝、式辞も安倍カラー―終戦の日
千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花に向かう高市早苗首相=15日午前、東京都千代田区
高市早苗首相が就任後初の終戦の日に靖国神社を遥拝したのは、参拝見送りによる保守層の離反を警戒したためだ。内閣支持率が下落基調に転じる中、全国戦没者追悼式の式辞でも先の大戦に対する「反省」の文言を使わず、故安倍晋三元首相が敷いた保守路線の踏襲をアピールした。
首相は15日、千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花した後、全国戦没者追悼式が開かれる日本武道館の駐車場に午前11時9分に公用車で到着。しばらく車内で待機した後、同18分に車から降り、約600メートル離れた靖国神社の方角に向かって神道形式の「二拝二拍手一拝」で拝礼した。同19分に車に再び乗り込み、数分後に武道館に入った。
首相周辺は「靖国神社に向かって遥拝した」と明言した。時の首相による靖国遥拝が明らかになるのは極めて異例だ。
首相はこれまで、閣僚在任中も含め、終戦の日と春季・秋季例大祭に合わせて靖国神社をほぼ欠かさずに参拝。昨年の自民党総裁選の時こそ、党内穏健派を意識してか首相就任後の参拝について明言を避けたものの、2024年総裁選時は「参拝を続けていきたい」と言明していた。
ただ、昨年10月の首相就任後は中韓両国への配慮を余儀なくされ、今年の春季例大祭でも参拝を見送っていた。首相は15日、少し離れた場所からの遥拝に加え、参拝した自民の鈴木俊一幹事長を通じて私費で玉串料を奉納した。
報道各社の世論調査で高市内閣の支持率は下落傾向が見られ、岩盤支持層の底割れを懸念する声も漏れる。首相側近は「遥拝は安倍氏も検討した方式だ。できる限りのことはやった。実際の参拝に向けて『4分の1』歩前進だ」と解説した。
首相周辺からは「遠隔地から拝む行為まで批判されることはないだろう」と楽観論も漏れる。ただ、周辺国が実際にどう反応するかは読み切れない。首相の「台湾有事」発言で日中関係が冷え込む中、首相と距離を置く自民閣僚経験者は「中国は参拝と同じだと見るだろう」と突き放した。
野党からも厳しい声が相次いだ。中道改革連合幹部は「支持者向けのパフォーマンス」とばっさり。公明党幹部は「姑息(こそく)だ」と指摘し、共産党幹部は「遥拝は参拝に準ずる。支持層へのアピール狙いの愚かな行動だ」と切り捨てた。
保守層を意識したとみられるのは靖国神社を巡る対応だけではなかった。靖国遥拝後に臨んだ全国戦没者追悼式の式辞では、石破茂前首相が昨年の式辞で13年ぶりに復活させた「反省」の文言を封印し、安倍氏が政権奪還後の13年から退陣するまで続けた対応に戻した。
独自色がにじんだ部分もある。安倍氏が使った「戦争の惨禍を二度と繰り返さない」との表現を変え、「戦争の惨禍を二度と繰り返させない」と戦争の主体を曖昧にした。共産党の小池晃書記局長は「まるで被害者(の言葉)だ。反省できない国が信頼されるわけがない」と批判した。
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