「退屈」が人々を攻撃的な行動に駆り立てるとの研究結果
リー氏は退屈と攻撃的な行動について調べるために複数の調査を行いました。最初の調査では中国の大学生180人とベトナムの大学生190人を対象に、日常生活における退屈の感じ方や、身体的攻撃性・言語的攻撃性・怒り・敵意について評価するアンケートを実施しました。
アンケート結果を分析したところ、「退屈を感じやすい傾向」と「攻撃的な特性」の間に正の相関関係がみられました。退屈を感じる頻度が高いと回答した被験者は、身体的攻撃性・言語的攻撃性・怒り・敵意のスコアも高かったとのことです。
続いての実験では中国の成人124人を被験者として募集し、ランダムに「男性が洗濯物を繰り返し畳む退屈な25分間の映像」を見る実験群と、「地元の公園に関する魅力的な25分間のドキュメンタリー」を見る対照群に割り当てられました。
被験者は動画視聴後に現在の刺激欲求を評価するアンケートに回答した後、サンドバッグがある別の部屋に連れて行かれ、ボクシンググローブを渡されて「好きなだけサンドバッグを殴るように」と指示されました。被験者がサンドバッグを殴る様子は隠しカメラで撮影され、独立した評価者が映像を見て「どれだけの強さで殴ったのか」「どれだけ気持ちよさそうに殴ったのか」などを評価しました。
その結果、退屈な映像を見せられた被験者は対照群よりも多くのパンチを繰り出し、サンドバッグを殴る力もより強く、より気持ちよさそうに殴っていると見なされました。統計分析では、この効果が刺激欲求によって生じていることも判明。退屈な映像は被験者の刺激欲求を高め、それがサンドバッグに対する攻撃性の増加を予測したとのことです。
最後の実験ではオンラインプラットフォームを通じて、保守派とリベラル派が混在するアメリカの成人277人を募集しました。被験者らはランダムに「退屈なウォーターウォール(壁面を水が流れる設備)の映像」を見る実験群、「魅力的なドキュメンタリー」を見る対照群に割り当てられ、動画視聴後に刺激欲求を測定するアンケートに回答しました。
その後、被験者らは国際紛争を題材とした架空のシナリオを読んだ上で、自分が最高司令官になったと想定して、イランに対する攻撃的な軍事行動への支持度を評価しました。架空のシナリオには、外国の軍事組織がイラン政府への反乱軍を訓練するものや、国際社会を露骨に無視するものなどが含まれており、被験者が武力による解決策をどれほど支持するのかが測定されたとのこと。
結果を分析したところ、保守派は一般的にリベラル派よりも軍事行動への支持度が高かったものの、退屈な映像を見せられた被験者は政治的立場にかかわらず、武力による解決策を支持する傾向が高まることが判明。退屈な映像を見た保守派とリベラル派の被験者は、ドキュメンタリーを見た被験者よりも刺激欲求スコアが高く、攻撃的な軍事行動を支持する可能性が高かったと報告されています。
一連の研究結果から、「退屈を感じることが必ず暴力的な行動につながる」と断言することはできません。人の意思決定はさまざまな要因に左右されており、自己制御能力が高い人はたとえ退屈を感じていても衝動を抑制できる可能性があります。
心理学系メディアのPsyPostは「攻撃性は、人々が実存的な虚無から逃れるために用いる可能性がある手段のひとつに過ぎません。他の研究によると、人々は創造的な趣味に没頭したり、運動をしたり、懐かしい空想にふけったりするなど、肯定的または中立的な行動を通して退屈に対処することが多いとされています。積極的で刺激的な活動を提供することで、極度に退屈な時期に生じる刺激欲求を攻撃性から遠ざけることが可能なのです」と述べました。
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