[ITmedia News] Anthropic、独自の“創薬活動”に着手 社員1人のバイオ企業を買収、小児難病の治療薬研究を進める
著者
林裕也
[ITmedia]
米Anthropicは10月27日(現地時間)、新薬開発に取り組む6組織との提携の進捗とあわせて、自社でも創薬活動を進めていると発表した。小児の希少な筋ジストロフィーの治療法を開発してきたバイオ企業を買収し、その研究を社内で続けている。
Anthropicが公開した創薬の進捗報告(出典:Anthropicの創薬進捗報告、以下同)
買収した米Mithril Medicineは、創業者のコーディ・トランバーガー氏が1人で運営してきた会社。トランバーガー氏はAI「Claude」を使って外部の11の研究機関との契約や物流、実験の段取りを取りまとめてきた。また、ほかの業務の多くもClaudeに任せているとしている。この体制で、2種類の筋ジストロフィーのうち1種類について、治療法のアイデアからマウスで有望な結果を得るまでを18カ月足らずで進めたという。
6組織との提携と自社での創薬活動に触れた冒頭部分、英語からの翻訳
Anthropicによれば、対象の1つ「LAMA2関連先天性筋ジストロフィー」は、筋線維とその周りを覆う膜をつなぎ止めるタンパク質が欠けて起こる小児の病気で、根本的な治療法はまだないという。Mithrilは2つの標的に同時に結合する「二重特異性抗体」を使い、筋肉に残っている別のタンパク質と筋線維を橋渡しして、膜を固定し直す薬の開発を進めてきた。同じ仕組みは、もう1つの対象である「α-ジストログリカノパチー」にも応用できる可能性もあるとしている。
Anthropicが公開した技術報告書によると、この病気のモデルマウスで小規模な予備試験を実施し、試作した2種類の抗体のうち1種類を6週間投与したマウスでは、前脚の筋力と握力が、薬を含まない液を投与したマウスの約2倍だったという。
試作抗体に続く候補の絞り込みでも、作業の多くをClaudeが担っている。113種類の候補抗体を外部の受託研究機関(CRO)5社で評価する計画策定では、341ページに及ぶ製造データを読み込み、8分足らずで全候補を「そのまま試験に回す」「精製し直してから回す」「見送る」に振り分けた。受託研究機関などに送るメールもClaudeが下書きし、担当者が手直しした上で送ったという。
Claudeと担当者が1週間で113種の候補抗体の試験計画をまとめた流れ(出典:技術報告書)
ただ、Claudeが誤るケースもあった。抗体の量を相手の希望より少なく書いた依頼など、少なくとも3件は担当者の確認をすり抜けて受託研究機関に届いた。報告書は、人の確認ではどの候補をどう試験するかといった判断の誤りには気付けても、数量などの細部や前提の誤りは見落としやすいとみている。
トランバーガー氏はAnthropicに移った後もこの研究を続けており、複数の新たな創薬プログラムを立ち上げる計画だ。候補薬が今後の試験でも有望さを保てば、早ければ2028年後半に人での臨床試験を始められる見込みだとしている。
Anthropicは6月30日(現地時間)に研究者向けのAI作業環境「Claude Science」を発表した際、自社でも創薬に乗り出す方針を示していた。対象は、従来の製薬・バイオ企業が開発対象として魅力を感じてこなかった疾患で、人での試験に入る前の「前臨床段階」の研究に取り組むとしていた。
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