男性管理職は娘が生まれると女性従業員の雇用を増やす傾向があるとの研究結果
今回、アメリカ・ノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院で助教を務めるマッダレーナ・ロンキ氏らのチームは、娘が生まれることが職業上の行動に影響するかどうかを調査しました。ロンキ氏は心理学系メディアのPsyPostに、「経済学者の間では労働市場における男女格差が続く理由のひとつとして、ジェンダーに対する意識がますます重要視されるようになっています」と述べ、誰を採用したり昇進させたりするのかを決める管理職の態度も、男女格差を考える上で重要だとしています。
一般に管理職は従業員の採用・解雇・昇進において大きな権限を持っており、管理職が持っている個人的な偏見や信念により、企業において女性が不平等な雇用機会や賃金にさらされる可能性があります。しかし、管理職の個人的な見解が従業員にどのような影響を与えているのかを測定するのは困難で、個人的な信念ではなく企業文化によって判断が影響を受けている可能性も否定できません。
そこで研究チームは、小規模な企業を経営している単独経営者を対象に、「生まれた子どもの性別」による反応を調べることにしました。管理職が経営者1人しかいない小規模企業では、経営者が従業員の採用や賃金において大きな権利を持っている可能性が高く、生まれるこどもの性別は基本的にランダムであるため、経営者をランダムにグループ分けする自然実験として機能するとのこと。
研究チームは1992~2017年に収集されたデンマークの行政登録データを利用し、管理職が1人しかいない単独経営者の会社を特定しました。これらの会社は平均12~13人の従業員を抱え、デンマークにおける会社の90%以上を占めており、全雇用の約3分の1を絞めていたとのことです。
これまでの研究では第一子娘効果は主に父親に見られることが示されているため、今回の研究でも男性経営者に焦点が当てられました。最終的なサンプルには、同じ会社を経営中の男性経営者に子どもが誕生した6701件の分析期間が含まれています。
研究チームは男性経営者に子どもが生まれる前後で、同じ企業における「従業員に占める女性の割合」と「女性の平均収入と男性の平均収入の違い」を調査しました。平均収入を表すスコアでは、「0.5」が男女でまったく同じ平均収入であることを意味し、数字が0.5を下回るにつれて女性の方が平均収入が低いことを意味しています。調査対象となった企業全体で見ると、平均して従業員の約34%が女性であり、収入スコアの平均は0.39でした。
平均学歴や企業規模といった特性を考慮に入れてデータを分析した結果、経営者に第一子となる娘が生まれた後は収入スコアが「約0.017」上昇し、女性従業員の割合も約1パーセントポイント増えました。これらの効果は、経営者が男性か女性かによる違いの約20~50%に相当するとのことで、経営者に娘が生まれるだけで大きな違いが生じることがわかります。
女性従業員の雇用と収入に対するプラスの効果は、初めての娘が生まれた経営者において顕著であり、2人目以降の娘が生まれた場合でもプラスの効果はみられたものの、その効果は小さく統計的に有意なレベルではありませんでした。また、すでに娘がいる経営者に息子が生まれても、女性従業員に対するプラスの効果は弱まらないことも判明。これは息子の存在が女性への扱いを低下させるのではなく、娘の有無のみが影響していることを示唆しています。
女性従業員に対するプラスの効果がどのように生じたのかを分析したところ、経営者はパートタイムの職種を増やして柔軟な労働体系を提供するのではなく、「男性と同等の資格を持つ女性従業員の採用を増やす」という方針に変化していることがわかりました。
第一子となる娘が生まれた後、経営者は高学歴でフルタイム勤務、そして高給の女性従業員をより多く採用するようになりました。ロンキ氏は「重要な点は、管理職の女性に対する態度が女性の職場での機会を左右する可能性があり、そうした態度は非常に速やかに変化する可能性があるということです」と述べています。
また、今回の研究では女性従業員の採用や収入を増やしたことにより、企業の売上高・総雇用者数・従業員1人あたりの付加価値などに目立った影響はないことも判明。ロンキ氏は、女性の地位向上によって企業に何らかの損失が生じたという証拠は見つからなかったと指摘しました。
この結果は、これまで採用されていた男性従業員の少なくとも一部は、企業に損失を与えることなく女性に置き換え可能であることを示唆しています。それと同時に、女性ではなく男性を優先して採用してきた慣行は、企業にとって大したプラスの効果はなかったことも意味しています。
採用状況と女性の収入の変化は娘の誕生直後に始まっており、その影響はその後何年も続き、娘が思春期から成人期を迎えるにつれてさらに強まりました。つまり、経営者らがジェンダーに関する考えを改めるのに時間は必要なく、即座に変化が現れるというわけです。
今回の研究はデンマークの単独経営者のみを対象としており、大企業の経営者にも娘が生まれたことで同様の変化が生じるのかは不明です。また、研究では経営者がの思考や信念を直接調べたわけではなく、内面的な心理状態を追跡したわけではない点にも注意が必要です。
ロンキ氏は、「私たちが明らかにした性別による偏見は、同等の資格を持つ男性と女性のどちらが採用されるかという境界線上で作用しているようで、管理職が著しく資格が劣る労働者を選ぶという結果にはつながりません。この結果は、採用や収入に関する決定を変えることで、企業の生産性に目立った変化をもたらさずに女性の機会を改善できる理由を説明するのに役立ちます」と述べました。
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