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Wednesday, October 14, 2026

【お金の教室】日銀利上げと個人向け国債の関係性 9月の利上げでどんな変化が?

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2026年9月18日、日本銀行(日銀)は政策金利を1.25%へ引き上げました。金利が上がる局面では、個人向け国債を「その月に買うか、次月まで待つか」で迷う人も多いでしょう。本稿では、まず利上げ当日の国債利回りを使って10月募集の個人向け国債・新窓販国債の金利を試算します。そのうえで、実際に決まった10月募集の金利と照らし合わせ、試算がどこまで当たったのか、そこから何を学べるのかを解説します。

まず、9月18日時点の試算の結論です。9月18日の国債利回りが金利の決まる日まで続いたと仮定すると、10月募集の金利は固定3年・変動10年・新窓販国債10年の3つが上がり、固定5年の1つだけが下がる計算になりました。同じ利上げを受けているのに、商品によって金利の方向が違ったのです。

ところが、実際に決まった10月募集の金利は、4種類すべてが大きく上がりました。その経緯は「答え合わせ:10月募集金利はいくらになったか」で詳しく見ていきます。

いま国債市場で何が起きているか

最初に、9月募集の金利が決まった9月1日から、日銀が利上げした9月18日までに、国債の利回りがどれだけ動いたかを確認します。

9月1日と比べると、3年国債は0.027%上昇して2.017%、5年国債は0.019%上昇して2.280%になりました。一方、10年国債だけは0.015%低下し、2.977%でした。動いたのは満期の短いほうで、10年はむしろ少し下がったのです。

日銀の政策金利は、満期1日のお金の貸し借りの金利です。そのため、利上げに素直に反応するのは満期の短い国債の利回りです。これに対して10年国債のような長い金利は、政策金利だけでなく、物価や財政の見通しにも左右されます。

日本の金利だけを見ていると、なぜ上がっているのかが分かりにくいため、アメリカの10年国債と並べてみます。

日本の10年国債の利回りは、1年前の約1.6%から2.977%に上昇しました。アメリカの10年国債は4.996%と水準こそ大きく違いますが、グラフの形はよく似ています。この1年の上昇幅は日本が1.32%、アメリカが0.81%でした。どちらの国でも物価が上がり、国債の増発への懸念から買い手が慎重になっていることが表れていると考えられます。方向は同じで、上げ幅は日本のほうが大きい、ということは知っておくとよいでしょう。

金利が上がり続けている背景には、3つの要因があります。1つ目は物価です。2026年8月の消費者物価指数は、総合で前年比1.9%、変動の大きい生鮮食品を除く総合で1.7%の上昇でした。2%を超えてはいないものの、2%前後の上昇が続いています。

2つ目は日銀の利上げです。日銀は金融政策の正常化を進めており、中長期の物価目標である2%に向けてインフレが続いていることも、利上げを後押ししています。3つ目は財政です。国債残高が高い水準にあるうえ、高市政権の積極財政によって国債の増発懸念が生まれており、国債の買い手がより高い利回りを求めるようになっています。

まとめると、短い金利は日銀に、長い金利は物価と財政に連動するというのが、現在の国債利回り上昇の構図です。

日銀の利上げをどう考えるか

次に、9月18日の日銀の決定内容と、市場がこれからの利上げをどう見ているかを確認します。

日銀は政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げました。前回の利上げは2026年6月で、3カ月ぶりの利上げです。これまでは半年に1度のペースだったため、利上げのサイクルが少し短くなったと受け止められています。

ただし、利上げには2人の委員が反対し、7対2の決定でした。浅田委員は、生鮮食品を除く消費者物価の上昇率が2%を下回るなか、経済の状況も必ずしも強いとはいえないことを、佐藤委員は、このタイミングでの利上げは適切ではないことを理由に挙げています。

全員一致でなかったことから、市場では「次の利上げは急がない」というサインと受け止められ、利上げペースが鈍るとの見方が出ました。一方で植田総裁は、情勢次第で引き続き利上げを進める方針を説明しています。

注目したいのは、利上げ当日に10年国債の利回りが2.992%から2.977%へと、むしろ低下したことです。利上げ自体は事前にほぼ織り込まれており、決定の瞬間には利上げペースが遅くなるとの見方から利回りが下がりました。利上げのニュースが出ても、国債の金利が上がるとは限らないのです。

では、市場はこれからどこまで利上げがあると見ているのでしょうか。その手がかりになるのが2年国債の利回りです。2年国債の利回りは、今後2年間の政策金利の平均的な水準に対する市場の見方を映します。

9月18日時点の2年国債の利回りは1.849%で、政策金利1.25%との差は約0.6%でした。1回の利上げ幅を0.25%とすると、市場は今後2年で2〜3回の利上げを織り込んでいる計算になります。ただし、これは市場の見方を表すものであり、今後の利上げを予想する数字ではありません。

個人向け国債と新窓販国債は、商品によって連動する金利が違います。固定3年と固定5年は、それぞれ3年国債・5年国債の利回りに連動します。変動10年と新窓販国債10年は、10年国債の入札結果に連動します。見ている金利が違うので、同じ利上げのニュースでも効き方が変わります。9月前半は、利上げに連動しやすい短い金利が上がり、10年の金利は下がりました。

10月募集金利を試算する

ここからは、9月18日時点の国債利回りが続いた場合に、10月募集の金利がいくらになるかを試算します。つまり10月募集の金利が決まる前の試算です。まず、金利の決まり方を確認しておきましょう。

金利の計算式は財務省が定めており、毎月この式で決まります。変動10年は、10年国債の入札の利回りに0.66を掛けたものです。およそ3分の2の水準で、半年ごとに金利が見直される分、受け取る金利は低めに設計されています。新窓販国債10年は、直近の入札の利回りがほぼそのまま適用されます。購入時に金利が確定する固定金利の国債です。

固定5年は5年国債の利回りから0.05%、固定3年は3年国債の利回りから0.03%を差し引いて決まります。個人向け国債は発行から1年たてば、直近2回分の利子相当額を差し引かれるだけで額面で中途換金できます。この元本保証の分が、手数料のように差し引かれているイメージです。なお、正確には固定5年・固定3年の基準金利は、市場実勢利回りをもとに財務省が計算した「想定利回り」です。

金利が決まるのは募集開始の2営業日前です。2026年10月募集の場合、個人向け国債(募集期間10月8日〜30日)は10月6日です。新窓販国債10年(同10月9日〜28日)は入札が10月6日に行なわれるので、その結果をもとに決まります。

上の式に9月18日の国債利回りを当てはめると、固定3年は9月募集の1.96%から1.99%へ、変動10年は1.95%から1.96%へ、新窓販国債10年は2.943%から2.977%へ、それぞれ少し上がる計算になりました。固定5年だけは2.24%から2.23%へ、わずかに下がります。

5年国債の利回り自体は9月1日から上がっているのに、固定5年の試算が下がるのは、9月募集の実際の金利が、同じ式で計算した値より0.03%高かったためと考えられます。ここで使っているのは市場で取引されている国債の利回りで、実際の基準金利は入札や財務省の想定利回りから計算されるため、0.01〜0.03%ほどずれることがあります。あくまで目安です。

さらに9月18日の時点では、金利が決まる日まで2週間以上ありました。固定3年・固定5年は今後の利上げ観測の変化で、10年は物価や財政の見通し、海外金利の変化で動きます。金利は上がることも、下がることもあります。この試算は、9月18日の水準を物差しにした目安にすぎない点に注意が必要です。

答え合わせ:10月募集金利はいくらになったか

では、実際の10月募集の金利はどうなったのでしょうか。結論からいえば、試算後に国債の利回りがもう一段上昇し、全年限で金利が大幅に上がりました。

財務省が公表する基準金利(金融機関が毎日売り買いしている国債の利回り)で見ると、10月5日時点の10年国債の利回りは3.09%でした。9月初めの2.99%から上昇し、この1カ月で節目の3%を超えて、そのまま3%台に定着した形です。3年は2.06%、5年は2.39%で、9月1日と比べると3年が0.10%、5年が0.11%、10年が0.10%上昇しました。9月前半とは違い、短い年限も長い年限もほぼ同じ幅で上がったのが特徴です。

9月に金利を押し上げた背景は3つあります。1つ目は原油です。9月11日にアメリカとイランが再び戦闘状態となり、原油価格が1バレル100ドルを超えました。前日に2.92%だった10年国債の利回りは、この日2.99%まで上がっています。原油が上がると、ガソリンや電気代だけでなく、機械の稼働や輸送のコストを通じて幅広い物の値段が上がります。国債の利回りはインフレ率と実質金利で構成されるため、インフレ懸念が高まると利回りは上昇します。

2つ目は日銀です。9月18日の利上げで政策金利は1.25%となり、1995年以来31年ぶりの水準になりました。利上げ自体は金利の上昇要因ですが、2人の委員が反対したことで、今後の利上げペースはゆっくりになるかもしれません。その場合、国債利回りの上昇ペースも緩やかになる可能性があります。

3つ目は財政です。2027年度予算は、当面「つなぎ国債」で資金を手当てする方針です。つなぎ国債とは、財源がはっきり決まるまでの間、とりあえず国債で資金を手当てする方法です。その間に安定した財源が見つからなければ、赤字国債に頼ることになります。国債の発行が増えるのではないかという懸念が、特に満期の長い国債の金利を押し上げています。物価・日銀・財政の3つが、そろって金利を押し上げたといえます。

その結果、10月募集の金利は、固定3年が2.07%、固定5年が2.39%、変動10年が2.05%、新窓販国債10年が3.048%に決まりました。前月比では固定3年が0.11%、固定5年が0.15%、変動10年が0.10%、新窓販国債10年が0.105%の上昇です。全年限で令和に入って最高の金利を更新しました。

9月18日時点の試算と比べると、実際の金利は固定3年で0.08%、固定5年で0.16%、変動10年で0.09%、新窓販国債10年で0.071%高くなりました。特に、試算では唯一「下がる」としていた固定5年が、個人向け国債の中で最も大きく上がっています。9月時点の試算は外れたことになります。

外れた理由は、試算の後に基準金利がもう一段上がったためです。金利の決まり方そのものは、「10月募集金利を試算する」の章で確認した式のとおりです。「決まるまでにまだ動く」と書いたとおり、2週間あまりの間に原油高と財政懸念が重なり、金利は上方向に大きく動きました。

過去3年の推移を見ると、4つの商品はいずれも金利の上昇が続いています。3年前は固定3年が0.2%ほど、固定5年が0.4%ほど、変動10年が0.6%ほど、新窓販国債10年が0.9%ほどでした。新窓販国債10年はこの間ずっと4つの中で最も高く、10月はついに3%台に乗りました。

注目したいのは、変動10年が固定3年にも抜かれたことです。変動10年は2024年の終わり頃まで個人向け国債の中で最も高い金利でしたが、日銀の利上げで短い年限の利回りが上がったため、固定5年に続いて固定3年も変動10年を上回りました。9月はわずか0.01%差での逆転でしたが、10月はその差が0.02%に広がっています。ただし、変動10年は半年ごとに金利が見直されるため、今後10年国債の利回りが上がれば、受け取る金利も上がっていきます。

いま、どう国債を選べばいいか

今後の金利を左右する焦点は、イラン情勢、日銀の利上げ、財政政策の3つです。イラン情勢がいつまで続くかによってインフレの見通しが変わります。日銀がどのペースで利上げを進め、最終的にどこで打ち止めになるのかも注目点です。財政面では、安定した財源を見つけられなければ、国債利回りの上昇が加速する可能性があります。

今回の答え合わせから分かるのは、わずか2週間あまりでも金利は大きく動き、試算どおりにはいかないということです。「今月か来月か」を当てにいくよりも、次のポイントを押さえて選ぶのが現実的でしょう。

第一に、使う時期に満期を合わせること。3年後に使う予定のお金なら固定3年、5年後なら固定5年が基本です。

第二に、10年置いておけるお金は、金利の動きへの考え方で選ぶこと。金利の動きが気になる人は半年ごとに金利が見直される変動10年、あまり気にならない人は購入時に金利が確定する新窓販国債10年が選択肢になります。

第三に、迷ったら分けて買うこと。どちらの月が高いか読み切れないなら、今月と来月に分けて購入すれば、上がっても下がっても平均的な水準に落ち着きます。また、10年置いておけるお金を1つの国債に全額入れる必要はありません。満期の違う国債を組み合わせ、満期が来たらその時点の金利で買い直せば、金利上昇の恩恵を受けられます。

第四に、募集期間中に金利情報を確認すること。財務省のWebサイトでは国債金利情報が公表されています。募集の最終日近くまで様子を見てから決めても、購入には間に合います。

10月募集の個人向け国債は2026年10月8日から30日まで、新窓販国債は10月9日から28日までが募集期間です。購入を検討している人は、期間を確認したうえで、使う時期に合った商品を選びましょう。

塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル

近著「私が投資したNISA・iDeCoのお金、このままで大丈夫?」

塚本 俊太郎

外資系運用会社で20年以上勤務したのち、金融庁の金融教育担当として高校家庭科での金融経済教育指導教材や小学生向け『うんこお金ドリル』の作成を担当。現在は金融教育家として、金融リテラシーや資産形成について講演等を行う。著書に、『50代でも間に合う!オトナの“金育”』、『子どもに伝えたいお金の話 金融教育のいまを聞く』、『サクッとわかるビジネス教養 金融学』など。また、NHK Eテレ「趣味どきっ!今日から楽しむ“金育”」(2023年3月と2024年1月計8回)、「明日から使える金育ガイド」(2026年4〜5月)の講師をつとめた。X(塚本俊太郎X金融リテラシー)にて、毎週土曜朝7時より「塚本俊太郎のゼロからのお金の学校」を音声ライブ配信している(Voicy、Podcastにもリプレイを配信)。YouTube「塚本俊太郎の金融リテラシーチャンネル」でも資産形成について発信している。近著に『私が投資したNISA・iDeCoのお金、このままで大丈夫?』など。X : @shuntarotsu/YouTube : @FinancialLiteracyChannel

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