[ITmedia ビジネスオンライン] 「ボスの言うことは絶対」「まず実装・スピード重視」 モンゴル人の仕事観から、日本の働き方を眺めると……?
普段私たちが当たり前だと思っている仕事の進め方や職場の空気。でも、海を越えてやってきた同僚の目には、それがちょっと「不思議な光景」に映っている可能性も。日本で働く海外出身者の視点を通して、日本企業の「意外な横顔」をのぞき見ながら、これからの働き方について考えてみたい。
日本で働く海外出身者の視点から、日本の企業風土や社会のありようを見つめる連載「ニッポンを『職場』に選んだら」。今回はモンゴルを取り上げる。
モンゴルといえば、広大な草原で暮らす遊牧民やゲルを思い浮かべる人が多いだろう。元横綱の朝青龍や白鵬、国語の教科書で読んだ「スーホの白い馬」を思い出す読者もいるかもしれない。
人口は約359万人(2025年、モンゴル国家統計局)。鉱業や牧畜業、流通業などを主要な産業とし、1990年代初頭の民主化以降、順調に経済成長を遂げ、直近2025年の成長率は6.8%と堅調に推移する。
ICT産業も伸びており、首都ウランバートル市では、AIやフィンテックなどの分野でスタートアップが台頭。政府も「デジタルファースト」を掲げ、行政サービスの電子化などに力を入れている。
日本語の学習熱が高く、人口あたりの日本への留学生の割合が世界トップレベルといわれるモンゴル。人手不足が課題となる日本では、日本語にも精通したモンゴル人材への関心が高まっている。
日本とモンゴル、仕事の進め方や人々の就労観はどう異なるのだろうか。元JICAビジネス交流支援専門家で、モンゴルの就労事情に詳しい中村功氏に話を聞いた。
観光向けの宿泊テント「ゲル」が並ぶモンゴルの風景(編集部撮影、以下同)
「その時を懸命に生きる」 遊牧民文化が仕事観にも影響
──日本とモンゴルでは、仕事の進め方や価値観にどのような違いがありますか?
日本人とモンゴル人はかなり対極にいる存在だと思っています。源流にあるのは、モンゴル人の遊牧民文化と、日本人の農耕文化の違いです。
モンゴル人は、簡単に言えば「その時その時を一生懸命生きる」という感覚があります。あした吹雪で死ぬかもしれない、あした馬から落ちて死ぬかもしれない。そういう環境では、日本人のように長期的な視点を持って生活することが必ずしも合理的ではありません。
日本では稲作をして「2年後、3年後はどうなるか」と長期的に考えるじゃないですか。そこが根本的に違うのかなと感じています。
もちろん今のモンゴルでは都市化が進み、首都ウランバートルで育った若い人の中には馬に乗ったことがない人も増えています。それでもGDPに占める農牧業の割合は鉱業に次ぐ11%(2025年、JICA)、労働者の約3割が従事しています。遊牧生活は今もモンゴル人の根底に残っていると思います。
GDPに占める農牧業の割合は鉱業に次ぐ11%(2025年)で労働者の約3割が従事する
ボスの言うことは絶対
モンゴルは上下関係が徹底していて、日本よりもかなり厳しいところがあります。「ボスの言うことは絶対」という文化ですね。
ボスがイエスと言えばイエス、ノーと言えばノー。だから決断はすごく早い。一方で、ボスがいないと判断できないということもあります。
例えば、モンゴルの人々は夏に長期休暇を取ります。夏に社長が1カ月くらいバカンスに行ってしまって「社長がいないので1カ月決裁できません」ということもあります。日本の会社ではなかなか考えにくいですよね。
理想の上司像にも違いがあります。モンゴルでは「お父さん」のような上司が理想です。「これをやりなさい」と細かく指示を出して、間違ったら「俺が責任を取る」というタイプです。
日本では、部下の意見を聞いてまとめる「兄貴」のような上司が好まれるじゃないですか。でも、モンゴルで同じことをすると「この人は自分に能力がないから、部下に聞いているのか」と思われる可能性があります。特に役所などでは、そういう傾向が残っていると思います。
──ワーク・ライフ・バランスや余暇についての考え方は?
モンゴルはやはり、家族が一番なんですよね。
遊牧生活では、草原にゲルがポツンとあって、そこで家族と暮らしている。10キロ、20キロ先どころか、100キロ圏内に誰もいないということもあります。そういう生活では、家族が中心になるのは自然なことです。
だから「余暇を重視しますか」と聞かれたら、余暇そのものよりも「家族と一緒にいることを重視する」というイメージが強いと思います。
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