【石野純也のモバイル通信SE】「体験品質」重視でネットワーク改善 ドコモ回線改善の長い道のり
ネットワークの品質改善を行なっているドコモだが、昨年度から、そのペースをさらに上げており、巻き返しを狙う。周波数の不足に対しては5Gの基地局を増設、5G単独で通信を行なう「5G SA」のエリアも拡大しているほか、3Gの停波で使わなくなった800MHz帯を4Gに回すなどして、屋内の品質改善も図っている。
主な取り組みは、5月27日の本連載でもまとめているが、その際に同社の対応を語った同社の執行役員 ネットワーク本部長を務める引馬章裕氏と執行役員 ネットワーク本部 無線アクセスデザイン部長の増田昌史氏が、第1四半期(4月から6月)の進捗状況や実際の成果、さらには新たな取り組みを語った。
NTTドコモ 執行役員 ネットワーク本部長の引馬章裕氏
NTTドコモ 執行役員 ネットワーク本部 無線アクセスデザイン部長 増田昌史氏
5G基地局数は大幅増 「主要エリア」に集中
引馬氏によると、新たに構築した基地局は、第1四半期だけで2,500にのぼるという。これは、「昨年度上期の半年間に作った基地局と同じぐらいの数がほぼ四半期でできているスピードアップ」だ。時間を半分に短縮できたということは、期間をそろえたときの基地局数は倍増と言える。
基地局全体で32万を超えているため、「設備容量に置き換えると、劇的には増えていない」。数字にすると、わずか2%の増量だ。
一方で、ドコモは「人が多いところに集中的に(基地局を)打つ方針」を取っており、南関東、大阪府、愛知県といった同社が「主要都府県」と見なす地域では、特に基地局を増設している。
前年同期を大きく上回る基地局を新設できたという。特に、主要都府県の5G基地局の伸びが大きい
5Gに絞ると、第1四半期で構築した基地局数は全部で1,500。そのうちの半数以上にあたる900は、上記の主要都府県のものだ。
引馬氏は、「全体の6割ぐらいを人の多い主要都府県に集中的に構築できている」と自信をのぞかせる。また、こうしたエリアでは、5Gを単独で使う5G SAのエリアも拡大しており、特に東京の山手線の内側では、徐々に使える場所が増えている状況だ。
また、基地局同士を効率的に運用できるよう、5Gはエリアごとに通信機器ベンダーを集約させ、パフォーマンスを向上させているという。例えば、山手線内は「おおむね同一のベンダー(エリクソン)で、2割、3割を統一したというレベルではない」(増田氏)。こうしたリプレースを行なうことで、「元々5Gがあった場所の品質をよくすることができる」(引馬氏)という。
上記の5G SAも、「古い装置の中には5G SAに対応していないものもあった」(引馬氏)といい、積極的にリプレースを進めることでエリアを拡大している。
他社にはまだキャッチアップできていないが、5G SAのエリアも順調に拡大している
その5G SAは当初、550円の有料オプションをキャンペーンで無料にするという建てつけで、ユーザー自身でMy docomoなどを通じて申し込む必要があった。この規約を5月に改定。申し込みが必要なのはそのままだが、正式に無料化したうえで「店頭でもSAにした方がいいということで、お客様を増やす活動をしている」(引馬氏)。オプションを無料化したあと、ユーザーも順調に増えているという。
駅周辺を改善 「体験品質」にこだわる
単に基地局を増やすだけでなく、設置後のチューニングにも取り組んでいる。25年には、ノキアの運用自動化システムである「MantaRay SON」を導入。これにより、「お客様が少ない時にはデータ通信により多くのチャネルを割り当て、ものすごいスピードが出るように、多い時には制御の方に周波数を振ったりできる」(増田氏)ようになった。ルールベースではなく、接続状況に応じて、ダイナミックに制御を変えられるのがこのシステムの特徴だ。
ドコモは、この仕組みをさらに進めて、複数の基地局を協調させながら、MantaRay SONで制御していくという。特定の基地局が混みそうな場合には、空いている近隣の基地局からリソースを割り振るなどして、「クラスター全体を最適化する」(引馬氏)。こうしたチューニングは、これまで手動で行なっていたが、MantaRay SONの適用範囲拡大によって局所的なつながりづらさの解決も早くなりそうだ。
ノキアのMantaRay SONは、単一基地局からクラスター単体での適用に変えていき、リソースの最適化を図る
現在、ドコモが特に重視しているのが「体感品質の底上げ」だ。引馬氏は、鉄道沿線や駅を挙げながら、次のように語る。
「ご申告や体感品質のデータ、あとは通信機器から取るトラフィックのデータなど、色々なインプットがあるが、しっかり分析したところ、やはりトラフィックが集中する都市部、特に通勤通学の導線のご申告が多く、体感も悪い。トラフィックが高いこともわかっている」
主要なスポットへの対策は進んでおり、遅延も低下しているという
すでに、駅周辺の待ち合わせ場所は、「25年9月より前の段階から設備を作っているので、現段階だとほぼ問題ない体感品質を提供できている」。一方、改善の途上にあるのが駅構内や主要路線の沿線だ。山手線や大阪環状線については、「右肩上がりで順調に品質が改善できている」が、より広いスコープで主要59路線を見ると、対応が終わっているのは29路線にとどまる。
この路線数は、全区間でHD動画をストリーミングで視聴できる品質の3Mbpsを80%以上維持できた際にカウントされるものだ。ドコモが品質改善に取り組み始めた24年3月時点では、わずか18路線だった。この2年半で11路線を改善した格好だが、期間を半年間に絞ると、1路線の改善にとどまる。
一方で、主要鉄道路線の改善は29路線にとどまる。30路線はまだ未達成だ
ドコモの品質改善の長い道のり
傾向を見れば改善していると捉えられる一方で、主要59路線のうち、まだ半分は品質目標を達成できていないことになる。半年後の27年3月には、これを39路線に拡大する見通しだが、それでもまだ20路線が残されている状況だ。100%達成は「一刻も早くを目指している」というが、目途は立っていない。
この路線には地下鉄も含まれており、インフラシェアリングのような形で、3社なり4社なりの設備をまとめて構築するトンネル協会(正式名称:移動通信基盤整備協会)などの作業もあり、「我々だけではコントロールできない対策も入ってしまっている」(引馬氏)からだ。
また、25年3月から26年8月まで1年5カ月で6路線しか拡大できていない中、あと半年足らずで10路線を本当に上乗せできるのかも未知数と言えるだろう。
一方で、鉄道動線では、基地局を最新型のMMU(Massive MIMO Unit)に交換しただけで、0.2Mbpsから一気に317Mbpsまで速度が改善した事例もある。実に1,500倍の速度になったというわけだ。目標達成できていない路線では、こうしたスポットが点在しているとみられる。“つながらない”の声を減らしていくには、こうした地道な対策を続けていく必要がありそうだ。
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