韓国、超高齢社会見据え「治癒農業」推進 ビジネス化で地方振興―トラウマ抱える元軍人もケア
超高齢社会を迎えつつある韓国で、政府が旗を振り、植物との触れ合いを通じて心身の健康を図る「治癒農業」の取り組みが本格化している。韓国は高齢化に加え、地方の衰退や農家の後継者不足といった日本と同様の悩みを抱える。福祉の側面だけでなく、ビジネス化で課題解決にも役立てる試みだ。
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◇年間50万人が体験
「さあ、『私だけの庭』を作ってみましょう」。19日、ソウル近郊の京畿道楊平にある治癒農園。おしゃれなカフェのような趣の建物で、朝鮮戦争やベトナム戦争に参戦した高齢者10人が、ガラスケースの中に植物を寄せ植えする「テラリウム」作りに取り組んでいた。初めて体験したという崔栄燮さん(82)は「足が不自由で普段はあまり外に出ない。きょうは気分爽快だ」と笑顔を見せた。
日本でも「農福連携」など同様の取り組みがあるが、民間主導だ。韓国は2021年に推進法を制定し、国家資格「治癒農業士」を創設してこれまで約950人が取得した。全国670カ所の民間農園に、政府が開発した58種類のプログラムを提供。25年は約50万人が治癒農業を体験した。
◇50年の高齢人口4割
25年の韓国の65歳以上人口は約1050万人で、人口の2割。しかし、36年には30%、50年には40%を超える見込みで、独居の高齢者も増加している。
長生きだけでなく、いかに孤立を防ぎ、健康な暮らしを持続させられるかが重要になる。農村振興庁の李承暾庁長は治癒農業について「生命に触れ、収穫を得る過程で達成感を感じると同時に、他の参加者との関係を築くこともできる」と語る。
治癒農業は退役軍人支援の一環でもある。国家報勲省の関係者は「対象者の高齢化に伴い、補償金の支給から日常のケアに支援内容が変わってきた」と説明する。朝鮮戦争の最前線で戦ったという鄭仲鎬さん(95)は独り暮らし。同省職員の生活支援に頼る毎日で、取材に対し「友人は皆死んで、いない」とこぼす。「今も北朝鮮軍に追われる夢を見る」。戦争のトラウマを抱える元軍人は、治癒農業の最優先の対象者と位置付けられている。
◇企業参入で雇用創出
課題は持続可能性だ。保守的な意識が強い農村で新たなビジネスモデルを構築できるかが問われている。
27年からの第2次5カ年計画では、治癒農業の産業化が目標。「癒やし」が必要な全ての人に対象を拡大し、企業や社会福祉法人の参入も想定している。農村人口が減少する中、雇用の受け皿をつくり、若者ら都市からの人口流入や、観光資源として地域活性化につながることも期待している。
李庁長は「経済的価値が生じれば人々が集い、農村が維持される」と強調。「各農場がばらばらにサービスを提供しても、都市からの集客は困難。規模を拡大し、地域と連携することが重要だ」と語った。(楊平=韓国=時事)。
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