アンソロピック、日本は「最も成長が早い市場」 データセンター構築にも意欲
Anthropic(アンソロピック)は14日、日本事業1周年の報告とともに、これまでの取り組みを報道陣に説明した。企業・公共向け展開の本格化や、フィジカルAIなど日本向け展開を強化していく。また、データセンター投資についても「意欲的に考えている」と語った。
米Anthropic共同創業者で、公共利益部門責任者を務めるJack Clark(ジャック・クラーク)氏は、同社が進めるAIの安全性に関する最新の取り組みや研究について紹介した。
「特に重要だと考えているのは、AIやコーディングが今後『AI for Science』や『AI for Robotics』といった分野でどのように広がり活用されていくのか」と語り、今後1年で大きな変化が期待される領域について説明。日本は、「AIのサプライチェーン、研究や科学機器、ロボティクスといった分野において幅広い知識を持つ。これらの技術が日本をスーパーチャージしていく」と述べ、Anthropicでも強く支援していくとする。
Anthropic共同創業者のジャック・クラーク氏
また東京大学と協力して進めている「Japan AI Index」についても言及。日本でのAIの社会的インパクトを継続的に観測・分析するための基盤として、「Anthropic Economic Index」の取り組みを日本に適用することで、政府や企業の意思決定時に、AIが経済や社会に与える影響を把握した上で判断できるようにする。加えて、サイバー防衛分野でも政策支援ができるようセキュリティ関連のチームメンバー強化も図っていくという。
Anthropic Japan代表執行役社長の東條英俊氏は、この1年の国内ビジネス状況について説明した。1年前は3名だった従業員は50名以上となり、導入企業数は10倍に増加している。加えて、日本でのClaude利用は、他国の平均に比べて1.9倍と2倍に迫っているなど、日本市場で高い支持を得ており、「最も成長が早い市場のひとつ」とした。
Anthropic Japan 東條英俊社長
この1年では、東京オフィスの強化のほか、NEC、日立、富士通などとのパートナーエコシステムの構築に注力。さらに世界的な課題となっている、AIにおける安全性とルール作りにも力を入れ、東京大学やJ-AISI(AIセーフティ・インスティテュート)と連携を進めた。
Claudeは、多くの日本企業に導入。さらにデジタルハリウッドにおいて、全ての学生と教職員にClaude Teamが導入されるなど学校における事例も増えている。デジタル庁では、ガバメントAIの「源内」においてClaudeのモデルが使えるようになるなど、官公庁での利用も進んでいる。
今後の強化については、現在大きな問題となっているサイバーセキュリティについて、Mythosの提供を日立など日本企業にも開始。またフィジカルAIの共通仕様となる「MHS(Model Hardware Standard)」の推進などで日本企業と協力していく。
そのうえで東條氏は、2年目の重点施策として「企業・公共展開の本格化」など5つの取り組みを語った。
- 企業・公共の本格化:金融・製造・公共など基幹産業に
- パートナービジネス:SI、リセラー、クラウドとの協業。FDE協業
- 先端ユースケースの発掘:レガシーモダナイゼーション、サイバーセキュリティ
- 研究・政策・文化との協働:Japan AI Index、J-AISI、森美術館
- 採用拡大:東京オフィス
クラーク氏は、今後の研究や安全性の取り組みとして、AIが社会に与える影響やサイバー攻撃、生物兵器リスクに対する研究やガバナンス強化を推進するほか、サイバー防衛向けモデル提供や安全なAI社会実装のためのガードレール設定などを強調。日本については、AIサプライチェーン、科学機器、ロボティクス/フィジカルAI領域での技術や、レガシーシステムのモダナイゼーションなどに期待を示した。重要インフラの保護についても、日立がCIDP(Critical Infrastructure Defense Program:重要インフラ防衛プログラム)に参加するなど取り組みを進めている。
クラーク氏は、AIが自身の能力や開発プロセスを反復的に改善し、その成果を次の開発に活用する「再帰的自己改善(RSI)」の実現を2027年と予測している。RSIの実現に伴う日本の機会とリスクについては、「素材科学など『AI for Science』により創造的な発明が進んでいくはず。リスクに対しては、企業における透明性を確保するほか、適切な評価・テスト方法を定めた政策枠組みを通じて自己改善のスピードをコントロールすることが重要」とコメントした。
さらにAnthropicが強調する、開発速度の「調整」についても、「車の運転と同様に、前(リスク)を照らす『ライト(研究)』と、現状を正確に把握する『計器(テスト)』が揃っていれば、ブレーキを踏まずに自信を持ってアクセルを踏める」と言及。テスト環境の構築が重要だと述べた。
なお、「Anthropicが大阪にデータセンター建設」との新聞報道も出ているが、14日の会見では特にコメントはしていない。ただし、主権AI(ソブリンAI)の考え方やデータ管理については、「データ所有権は顧客に帰属すると明確にしている。世界各地でデータセンターを構築しており、日本におけるデータセンター構築についても意欲的に考えている」(クラーク氏)と言及。また、「主権の要件は企業やデータの種類により異なる。SIerやクラウド事業者と連携し、選択肢を提供するとともに、パートナー企業独自のモデルとClaudeを用途に応じて使い分けることも安全保障上は有効と考えている」(東條氏)と語った。
Anthropic Japan 東條英俊社長(左)と、Anthropic 共同創業者 兼 公共利益部門責任者のジャック・クラーク氏
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