「地球上のどこにも存在しない花」を遺伝子工学で作り出す植物生物学者とは?

ノリッジのセインズベリー研究所の博士研究員であるデノワイエ氏は、遺伝子工学や突然変異、品種改良などを通じて「この世に存在しない花」を作り出しています。デノワイエ氏が記事作成時点で取り組んでいるのは、園芸植物として一般的なペチュニアを遺伝子操作した「ペインチュニア(Paintunia)」です。
ペインチュニアのコンセプトは「生きたキャンバス」であり、育てた人が花の色を操作できるというのが特徴です。以下の画像で左上に表示されているのがペインチュニアの最初のバージョンで、右にいるのがデノワイエ氏です。
ペインチュニアのつぼみにデキサメタゾンという透明な誘導分子を触れさせると、分子が細胞内に浸透して遺伝子操作で組み込んだ遺伝子が活性化され、特定の色素が形成されるとのこと。この方法により、分子を使って特定の色が現れる範囲を好きなようにデザインできるというわけです。
実際にデノワイエ氏は、さまざまな模様のペインチュニアを作り出すことに成功しています。
既存のペインチュニアは約20年前の論文をベースにしたものであり、使用できるのは明るい紫色のみです。デノワイエ氏は最終的に色の三原色であるシアン(水色)・マゼンタ・イエロー(黄色)の3色を生成できるペインチュニアを作り出し、自由な色を描けるようにしたいと考えています。
シアンについては、少し青みがかった観賞用品種を交配させて理想的なシアンを生成するペチュニアを生み出し、ペチュニアの色素であるアントシアニンの生合成遺伝子の一部を抽出する予定です。
マゼンタには赤色から紫色の誘導色素として知られるベタシアニン(ベタレインの一種)を利用し、イエローには同じくベタレインの一種であり黄色からオレンジ色の色素であるベタキサンチンか、ニンジンの色素として知られるカロテノイドが候補となっています。
以下はわずか5年ほど前に登場した黄色いペチュニアの系統で、「ビーズ・ニーズ(Bees Knees)」と呼ばれています。ビーズ・ニーズの黄色はカロテノイドであり、これらをアントシアニンを持っている系統のペチュニアと交配させれば、カロテノイドとアントシアニンがどのように調和するのかがわかると期待されています。
デノワイエ氏の夢のひとつは、突然変異の花々でいっぱいの温室を作ることだとのこと。もちろん通常の植物園でも植物そのものの美しさを称賛することはできますが、花と触れ合ったりそのゲノムについて知ったりすることで、まるで魔法のようなレベルで花を理解でいるようになるとデノワイエ氏は考えています。
デノワイエ氏は、「本当のモチベーションは生物学会のスタジオジブリを作ることなんです。人々がそれを見た時に、魔法やファンタジーの感覚を呼び起こすようなものを作りたいのです。自然をもっと科学的な視点から見ることで、それが実現できると思っています」と述べました。
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