[ITmedia News] AIが突き崩す「不動産価格の壁」 なぜマンションに定価がないのか
著者
加藤勤之
[ITmedia]
「なぜインターネットで本は買えるのに不動産は買えないの?」「マンションを借りる時に不動産屋のお兄さんが急いでFAXを送るのはなぜ?」。多くの人にとって「住まい」に当たる不動産は身近なはずなのに、なぜかよく分からないことだらけ。他の業界では常識なのに、不動産業界では非常識。そんな不動産の「ミステリー」を専門家がわかりやすく読み解き、AIをはじめITを活用した不動産の近未来を探る。
バブル経済の崩壊後、低迷してきた日本の不動産価格が反転上昇し、内外からの投資が盛り上がる中、海外の先進事例なども交えて将来の不動産業界や価格を分かりやすく展望する。第7回は「なぜ不動産には一律の価格がないのか」「AIは不動産価格をどう変えるのか」を深掘りする。
著者プロフィール:加藤勤之
GA technologies
Public Relations 本部長 宅地建物取引士
2002年、東京工業大学理学部数学科卒、博報堂入社、外食、製菓、化粧品メーカーの営業に約10年従事、その後、労働組合委員長を経て、経営企画や新規事業開発、働き方改革部長などを務める。 2018年12月、総合不動産会社オープンハウス入社、マーケティング本部長、広報宣伝部長、社長室長、事業開発部長に従事、兼務で、スキー場を運営する子会社みなかみ宝台樹リゾート代表も務めた。
2023年11月、GA technologiesに入社、Communication Design Center本部長を経て、現在は、Public Relations本部長として、広報と渉外の責任者を務める。
「一物一価の法則」が通用しないワケ
2026年1~6月の首都圏(1都3県)の新築マンションの1戸当たり平均価格が、上半期として初めて1億円を突破した──。不動産経済研究所が7月に発表した統計は、住宅の購入を考えている多くの人を驚かせた。平均価格は1億135万円。東京23区の新築マンションはさらに高く、平均価格は1億4249万円と過去最高を更新し、上半期としては4年連続で1億円台を付けた。「もはや1億円未満では都心に住めないのか……」。そんな庶民の嘆きをよそに、都心の不動産価格や賃料はどんどん上昇している。
とはいえ、このマンションの平均価格は、一般の商品にあるような「希望小売価格」や「定価」とは違うし、実際の取引価格である「実勢価格」とも異なる。なぜ不動産には一律の価格が存在せず、同じマンションでさえ部屋ごとに価格が違ってくるのだろうか。
経済学には「一物一価の法則」という考え方がある。「自由な市場経済において、同一の市場、同一時点における『同一の商品』は同一の価格になる」という意味だ。この「同一の商品」というのがくせ者だ。不動産業界は「同じ不動産は1つとして存在しない」という考え方に立っている。同じマンションでも、部屋が違えば階数や眺望、設備が変わり、日当たりや近隣の騒音の程度も異なるからだ。だから、近い条件の物件の売買価格である「相場」は存在しても、一律の価格は付けにくい。
もう一つの理由は、売り手と買い手の個別の事情や、物件ごとの需要と供給の強さによって価格の高低が決まりやすいことだ。例えば、買い手に「会社が近い」「子供を通わせたい学校の学区に住みたい」といった要望がある場合、近隣の相場より高い値段で売買されることも少なくない。半面、売り手が「相続税を払わなければならないので、少しでも早く売りたい」というケースでは、相場より安い価格で売買されやすい。株式市場の「株価」に少し似ているかもしれない。
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不動産とITのナゾ
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