Meta、SNSの年齢一律禁止に懸念 日本でもアプリDLに保護者承認を
Meta 安全対策グローバル責任者のアンティゴネ・デイビス氏
Metaの安全対策グローバル責任者であるアンティゴネ・デイビス氏は21日、10代の子どものSNS利用に関する安全対策や規制への考えを説明した。デイビス氏は、アプリのダウンロード時に保護者の承認を必要とする仕組みについて、日本でも導入を望む考えを示した。
また、年齢によるSNSの一律禁止については、規制対象外のサービスへの移動を招き、かえって子どもの安全を損なう可能性があると懸念を表明した。
Metaが重視するのは、子どものSNS利用を一律に禁止するのではなく、年齢に適した保護機能を提供し、保護者が子どもの利用を管理できる環境を整えることにある。
デイビス氏は、オーストラリアで成立した「Online Safety Amendment (Social Media Minimum Age) Act 2024」についても言及。同法に基づき、2025年12月10日から、対象となるSNS事業者に対し、16歳未満の利用者がアカウントを作成・保有することを防ぐための合理的な措置が義務付けられている。
デイビス氏は、こうした一律の禁止措置について、実効性の面から懸念を示した。規制によって子どもがSNSの利用そのものをやめるとは限らず、年齢を偽ったアカウントの作成やVPNの利用などによって、制限を回避する可能性があると説明した。
さらに、規制対象のSNSを利用できなくなった子どもが、保護機能やモデレーションが十分でない別のサービスへ移動することも懸念している。デイビス氏によると、SNSの代わりにニュースサイトのコメント欄を使い、友人同士で交流するような事例もあるという。
特に問題視しているのが、規制を回避することで、かえって子どもが保護を受けられなくなる可能性だ。年齢を偽ってアカウントを作成した場合、本来適用されるはずの年齢に応じたコンテンツ制限や、望ましくない相手からの接触を防ぐ機能、保護者による見守り機能などが適用されなくなるおそれがある。
また、一部のSNSだけを禁止しても、子どもが別のサービスに移動するだけでは根本的な解決にならないと指摘。規制対象外のサービスに十分な安全対策が備わっていなければ、結果的に子どもをより危険なオンライン環境へ追いやることになりかねないとの考えを示した。
こうした問題への対応として、デイビス氏はアプリストアでの保護者承認を制度として義務付ける仕組みを提案した。子どもがアプリをダウンロードする前に保護者の承認を必要とするもので、米国の一部の州では法制化されている。
日本でも保護者がアプリのダウンロードを承認する機能自体は提供されているが、デイビス氏は制度としての導入を支持している。日本での導入についても、国会議員ともこうした仕組みについて意見交換していると説明し、日本でも実現を望む考えを示した。
一方、8月に米国の州司法長官らとの合意で発表した1日2時間の利用制限などの安全対策を日本でも導入するかについては、具体的な導入方針を明言しなかった。米国での合意には、InstagramとFacebookの利用時間を合算して1日2時間とする初期設定などが含まれる。
利用時間の管理は重要としながら、個別のアプリで対策を講じるだけではなく、複数のアプリを横断して利用時間を管理する仕組みの必要性に言及した。
AIで年齢を推定 13歳から17歳は保護機能を自動適用
Metaが青少年保護の中核に位置付ける「ティーンアカウント」は、日本では2025年初めから導入を進め、現在は13歳から17歳の利用者に適用されている。
ティーンアカウントでは、アカウントの非公開設定やメッセージの受信制限、不適切なコンテンツの制限などが初期状態で有効で、利用時間が1時間を超えると休憩を促すリマインダーを表示するほか、22時から翌7時までは通知をミュートするスリープモードも用意する。
13歳から15歳の利用者が保護設定を緩和する場合は、保護者の許可が必要となる。保護者は子どもの利用時間やフォロー関係、ブロックしたアカウントなどを確認できるほか、過去7日間に誰とメッセージをやり取りしたかも把握できる。ただし、プライバシー保護の観点から、メッセージの内容自体は閲覧できないようになっている。
5月には、13歳以上を対象とする映画と同様の基準を参考に、閲覧できるコンテンツを制限する仕組みを日本にも導入した。保護者が希望する場合には、さらに厳格なコンテンツ制限を選択できる。
8月からは、自殺や自傷行為に関するキーワードを短期間に繰り返し検索しようとした場合に、見守り機能を利用する保護者へ通知する仕組みも提供している。該当する検索をブロックし、相談窓口などへ誘導するとともに、保護者が子どもに適切な支援を行なうための情報も提供する。
こうした保護機能を正しく適用するうえで重要となるのが、利用者の年齢を把握する仕組みだという。Metaでは、登録時に生年月日の入力を求めるほか、テキスト分析を使って最低利用年齢に満たない可能性のあるアカウントを特定している。AIを用いた年齢予測モデルによって10代と推定される利用者を識別し、適切な保護環境へ移行させる取り組みも進めている。
年齢に関する情報に矛盾が生じた場合などには、本人確認書類やセルフィーを用いた追加の確認を求めることがあるという。こういった運用は、全利用者に一律で求めるのではなく、必要性に応じて複数の確認方法を組み合わせて柔軟に対応している。
アルゴリズムの一律規制にも懸念
子どものSNS利用をめぐっては、次々に表示されるおすすめコンテンツや、長時間の利用を促すアルゴリズムも問題視されている。デイビス氏は、利用者の興味や関心に合わせてコンテンツを表示するアルゴリズムが、SNSの利用時間を長くする要因として批判されていることを認める一方、青少年の保護にも重要な役割を果たしていると説明。
例えば、アルコールやたばこ、性的な内容、自殺や自傷行為に関連するコンテンツを10代の利用者に表示しにくくする仕組みも、こうしたアルゴリズムによって実現しているという。これらの制限は、利用者がフォローしているアカウントの投稿にも適用され、フォローアカウントであっても年齢にふさわしくない内容が確認された場合は表示されないよう配慮している。
一方で、アルゴリズムには利用者の興味や関心に合ったコンテンツを推薦する役割もある。単に同世代で流行しているコンテンツを表示するのではなく、その子ども自身が関心を持つテーマに触れられることもアルゴリズムの利点だと説明した。
こうした理由から、コンテンツのパーソナライズを一律に禁止する規制には慎重な検討が必要であるとした。アルゴリズムそのものを規制するのではなく、利用時間の管理を強化したり、表示されるコンテンツを利用者や保護者が管理できるようにしたりするなど、問題に応じた対策が重要との考えを示した。
そのうえで、規制の対象として考えるべき課題を、長時間利用と不適切なコンテンツへの接触の2つに整理した。長時間利用については、利用時間の制限や通知の停止、休憩を促すリマインダーなどで対応できると説明。不適切なコンテンツについては、年齢に合わない投稿の表示を抑制したり、別のコンテンツへの切り替えを促したりする仕組みが考えられるとした。
こうした対策は、複雑なアルゴリズムの内部構造を直接規制するよりも、共通の基準を設けて事業者に対応を求める方が実効性を確保しやすいとの見方を持っている。
「家庭だけに負担が偏っている」専門家が指摘
ITジャーナリストでスマホ安全アドバイザーの鈴木朋子氏は、子どもがSNSを始める際には、どのサービスを使い、何をしたいのかを親子で話し合うことが重要と指摘した。保護者自身がそのSNSを使ってみることも、子どもの利用目的やリスクを理解する助けになるとした。
(左)ライブドアブログ公式ブロガー/コミックエッセイ作家 けえこ氏、(右)ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 鈴木 朋子氏
また、子どものSNS利用に関する管理責任が家庭に偏っていることも課題に挙げた。学校から配布される学習端末に加えて、個人のスマートフォンも普及するなか、アプリの数は増え続け、機能も頻繁に更新されている。保護者だけですべての情報を把握することは難しく、事業者間で足並みをそろえた安全対策が必要だと訴えた。
実際に、Instagramでライブ配信を制限された子どもが、年齢を偽って別のサービスで配信しているという話も紹介した。特定のサービスだけで対策を進めても抜け道が生じることから、各プラットフォームにおける年齢確認の重要性を指摘した。
これに対してデイビス氏も、1社だけで子どもの安全を守ることには限界があると指摘。10代の利用者が1週間に利用するアプリは約40に上り、Metaのアプリに保護機能があっても、ほかのアプリに同様の仕組みがなければ十分な対策にはならないという。青少年保護には企業だけでなく、保護者や学校、行政、支援団体との連携が不可欠だと強調した。
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