[ITmedia エグゼクティブ] イオン、フィジカルAIで物流改革 配送拠点の自動化率5割達成 深刻な人手不足に対応
商品のケースの積みつ付けを自律的に行うフィジカルAIロボット=10月29日、埼玉県川口市のイオン川口東XD(柳原一哉撮影)
イオンとロボット制御ソフトのMujin(ムジン)は29日、人工知能(AI)で機械を自律的に動かす「フィジカルAI」を搭載したロボットを活用する配送拠点「イオン川口東XD(クロスドック)」(埼玉県川口市)を報道陣に公開した。作業の自動化率は全体の5割に達しており、2030年にはさらに8割に引き上げる。全国にあるグループの物流拠点にフィジカルAIを導入し、物流改革に乗り出す。
荷崩れしないよう自律的に判断
首都圏の小型スーパーまいばすけっと約200店舗向けの配送拠点で、同日に本稼働した。ロボットが入荷されたケース品をセンサーで自動認識しコンベヤーに載せたり、82台のAGV(無人搬送車)がピース品(バラ物)を一時保管場所に移したりする様子が公開された。
商品をカートラックに載せる「積み付け」エリアでは、アームロボットで商品が次々と出荷店舗別に積み込まれていった。通常のロボットは人の指示通りにしか動かないが、フィジカルAIは商品の重量を考慮し荷崩れしないよう積み付けするなど自律的に判断し作業する。
90台以上のロボットを稼働させ、1日当たり39人の省人化を実現した。イオン物流子会社のイオングローバルSCMの山本浩喜社長は「ロボットの生産性は人の3、4倍だ」と語った。
施設では仕分けから積み付けまでの一連の流れを初めて自動化。今後は入荷から出荷に至るまで自動化する態勢整備を検討する。この拠点を皮切りにグループのスーパーやドラッグストアなどの店舗物流を自動化し、人手不足の解消と作業の効率化を狙う。
10年で16.5倍の試算
日本は生産年齢人口の減少が進み、物流現場など労働集約型の分野の人手不足はより深刻化しそうだ。このため、省人化に役立つフィジカルAI需要は増大する見通し。インド調査会社アキュメン・リサーチ・アンド・コンサルティングの試算では、世界のフィジカルAIの市場規模は25年の50億2120万ドルから35年には16.5倍増の827億9090万ドルに拡大するという。
日本のフィジカルAIが人手不足などの課題解決で貢献できれば、国際競争力の向上にもつながる。高市早苗政権は、日本が産業用ロボットや製造現場などでの豊富なデータを持つことを踏まえ、フィジカルAIを「勝ち筋」として戦略17分野の一つに掲げた。40年度までに約10兆5000億円の官民投資を想定する。
日本総研の岩崎薫里上席主任研究員はAIが暴走して人に危害を加えないよう安全面の担保などが必要だと指摘。その上で「できるところから始め、知見を蓄えつつ課題克服を進めていくべきだろう。完成形に至るまでには、10年単位の時間を要する」との見方を示した。(柳原一哉)
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